鍋。


元旦に
実家で姉家族と兄家族と集まり
母がすき焼きを作ってくれた。


すき焼きなのに
なぜかカニが投入された。


みんなカニが好物ではあるが
すき焼きの中に
カニを投入されるのを目撃したのは
生まれて初めてである。


そうだとしても
久しぶりのカニにテンションも上がる。

パクリと食らいついたものの
なんだか味がおかしい。
すき焼きの鍋に投入されたからではない。


カニをよく見ると
ところどころが黒い。

カニなんてものは
そもそも見た目が悪い。
その見た目の悪さにあいまって
食べたら死んでしまうのではないか?
という不気味さを
ところどころの黒さが醸し出している。


ねえ。
なんでカニ黒いの?

私は母に聞いた。
すると驚きの答えが返ってきた。


わたし、一回焼かないと気がすまないんだよねー。
だから焼いちゃった!


悪びれもなく母が言う。

自分の好みだけで
カニを焼き
それを鍋に投入する母。


最初から
焼きカニとして食べるなら
なんら問題はない。


しかし
焼きカニというものは
生きてきた36年間の中で
口にした記憶がない。


いや!
あった!
今思い出した。


母が作る弁当には
いつも
焼かれたカニかまぼこが入っていたではないか!!


私はカニかまぼこが大好物だが
焼かれたカニかまぼこを
美味しいと思ったことは一度もない。



ゆえに

今回の
焼きカニすき焼き鍋投入は
やはり美味しくはなかったのである。


うっかり焼いてしまったがために
カニ本来の旨味が
抜けて
なんだか味気ないものになっていた。


20歳になった姪っ子と私は
母の珍行動に爆笑したのだった。