『図書室の海』読了。
先日『蜜蜂と遠雷』で本屋大賞を受賞したばかりの、恩田陸の初期短篇集。
全体的にホラーやミステリーが多め。同じ作者の他の小説の番外編や前日譚も収録されている。『夜のピクニック』『六番目の小夜子』は、学生時代に読んだことがあったので、それらの世界観を懐かしみながら読めた。この時点で既にノスタルジーである。
以下、各編の感想を簡単に書いておく。
『春よ、こい』:桜、桜、桜…。のっけからすんげえノスタルジック。今の季節にぴったりな一編。内容的にはタイムリープ物?
『茶色の小罎』:ホラー風味のミステリー。主人公ストーカーやないかと思いながら読んでたら、最後はやっぱり…。
『イサオ・オサリヴァンを捜して』:戦争ものの風味漂う一本。やや男臭い。
『睡蓮』:ホラー。余り説明をしないことにより、怖さが生まれている。水中に沈んだ美少女の額から睡蓮が生えているという描写は強烈。
『ある映画の記憶』:純文学の薫りがする一本…と思わせといてミステリー。ほぼ実話だとか。『青幻記』読んでみたい。
『ピクニックの準備』:『夜のピクニック』前日譚。第0章という感じ。本編と合わせて読むべし。これ一本だけだとちょっとあっさりしすぎかと。
『国境の南』:これもホラー。タイトルで村上春樹の小説を思い出したが、元々は曲名だとか。主人公というか、犯人は、サイコパスか何かなのか?怖い…。
『図書室の海』:表題作。『六番目の小夜子』番外編。図書室は帆船、外は海という発想が素敵。
『オデュッセイア』:何となく筒井康隆の『旅のラゴス』を思い出す年代記。移動する都市という、この発想が良い。完全版をぜひ読んでみたい。
『ノスタルジア』:締めの一作。懐かしき夢、悪夢、ホラー…。作者も書いてるけど、正に恩田陸の真骨頂という感じ。ノスタルジーを描く事は大事。
全体的に郷愁を感じさせつつ、ホラーな作品が多く、初めて読む人には、恩田陸はこういう作家です、という説明がなされている良質な短篇集と言えるのではないだろうか。作品の並び順も良い。