心が前向きに全開で、おしゃべりの

 大好きなアキエさんは 器用に絵筆を動かしながら

 いつも会話と笑いのまんなかにいるし、

 どちらかというともの静かなケイコさんも、

 話はしっかりと聴いていて、

 ぽつり、ほつり、と気の利いたあいの手を

 入れてくれる。センセイのアトリエで過ごすその時間が

 みんな大好きだ。


 レイコセンセイというアトリエの

 不動の芯。四方の窓から見える、晴れた日の

 空の色。ひとときとてとどまらない雲の流れ。

 瞬間瞬間にうつろう光。

 壁をぎっしりと彩る様々な作品。


 一歩外に出れば、センセイもケイコさんも

 アキエさんも、そしてわたしも、ひっかぶって

 こなしていかなくてはならない人生のあれこれが

 たんとある。そんな荷物を、この時間、この空間では、

 みんな、ひとまず降ろすのだ。

 

「しあわせですよね。この時間。」

いつもだれかしらがぽろりとこぼし、そうですよねぇ、と、

みながしみじみとなる。

 

 おなじ時代に生きて、なぜだかこのアトリエに集まる

 ケイコさんとアキエさんと芯のセンセイとわたし。

窓の外の景色も、制作のときに込められた思いをとどけようと

話しかけてきそうな壁の作品たちも、そこに集う私たちも、

すべてをひっくるめて、センセイのアトリエの

しあわせの魔法は成り立っている。