我が家から車で一時間あまり。
兵庫県神河町の砥峰高原に夫と出掛けた。
丹波山系に囲まれ、田畑や自然の姿を残す川の
合間をのどかにぬう一般道を北へ走る。
最後、急な斜面を十分程登れば、
傾きかけた晩秋の陽を受け、こんもりとした丘一面が
こがね色に輝く。
丘は一面、やわらかく揺れる芒で覆われている。
季節になると一度は訪いたいと思っているうち、
高原は昨年十二月公開の映画、村上春樹原作の
『ノルウェイの森』のロケ地として脚光を浴びた。
そして、この夏には、来年のNHK大河ドラマ、
『平清盛』のロケも行われたということで、
あれよあれよの間に、人気の観光スポットとなった。
夫と初めて待ち合わせなるものをしたのは
一九八八年の十月。当時住んでいた岡山の繁華街の
デパートの前に、夫はデパートのはす向かいにある
本屋の紙袋を提げてやってきた。
袋には、発売されたばかりのハードカバーの小説の
上下巻がどっしりと入っていた。
その本は、上巻の三分の一ほどのところに栞を挟んで
私の部屋にある本と同じだった。
(ハルキから大河へ2へつづく)