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 声をかけたは暮田正香だ。半蔵はめずらしいところでこの人の無事な顔を見ることもできた。伊那の谷に来て隠れてからこのかた、あちこちと身を寄せて世を忍んでいるような正香も、こうして一同が集まったところで見ると、さすがに先輩だ。小野村の倉沢義髄
よしゆき
を初めて平田鉄胤の講筵
こうえん
に導いて、北伊那に外人 彼女国学の種をまく機縁をつくったほどの古株だ。
「世の中はおもしろくなって来ましたね。」
 だれが言い出すともないその声、だれが言いあらわして見せるともないその新しいよろこびは、一座のものの顔に読まれた。山吹社中のものが持って来た下相談は、言わば内輪
うちわ
の披露
ひろう
で、大体の輪郭に過ぎなかったが、もしこの条山神社創立の企てが諸国同門の人たちの間に知れ渡ったらどんな驚きと同情とをもって迎えられるだろう、第一京都の方にある師鉄胤はどんなに喜ばれるだろう、そんな話でその日の集まりは持ち切った。


「暮田さん、わたしたちの宿屋まで御一緒にいかがですか。」
 半蔵は二人の友だちと共に正香を誘った。その晩は飯田の親戚の家に泊まるという松尾誠と別れて、四人一緒に旅籠屋
はたごや
をさして歩いた。
 正香は思い出したように、