川崎市中原区 武蔵小杉の法律事務所 弁護士 川瀬典宏 趣味のブログ -2ページ目

従業員がうつ状態と診断されてから約2年3か月後に自殺し,使用者の安全配慮義務が問題となった裁判例


たまには仕事に関連したものを。


大阪地判平成22年2月15日判決


【事案】


従業員Aは,X社入社前の高校生の頃にC型肝炎に罹患。Aは会社都合で職場の転勤を命じられたが,その際,疾病や治療状況等について引継が行われなかった。Aは転勤直後に,肝炎治療のため1か月入院したところ,当時の上司らから,転勤直後の入院に対する非難や,退職勧奨のような発言を繰り返し受け,この頃に「不安・抑うつ混合状態」と診断された(発症)。

その後Aは復職し,さらに転勤などを経たが,会社にはうつ症状とは申告せず,うつ症状が悪化して神経科に再度入院した際も,会社には自律神経失調症と説明した。

神経科からの退院後は,徐々に精神疾患のほうは改善していった。ところが,上記発症時から2年3か月程度が経過した頃,Aは仕事上のミスを犯し,これに対して,当時の上司から「イエローカード」とタイトルの付けられたメールにより注意を受けた。Aは,このミスの一件で精神的に落ち込み,メールから3日後に自宅で自殺した。

以上の経過に対し,Aの遺族が,Aがうつ症状を発し自殺したことは,会社の安全配慮義務違反によるものであるとして,損害賠償を求めた事案。


【判決(概要)】

▼会社のAの病状に関する引継の不備と,転勤直後の入院に対する,上司らによる非難や退職勧奨等の発言は,不適切であり,かかる発言は,Aの精神状態を悪化させるものであって,健康管理上の安全配慮義務に反する。さらに,うつ状態等の精神症状を発症させる危険性があることについての予見も可能であった。

▼しかしながら,この時点において,Aが自殺することまでの予見可能性は認められない。

▼上記発言等の安全配慮義務違反行為は,うつ状態の発症に相当程度の寄与をしたものというべきだが,発症の専らの原因とまでは認められず,発症の重要な要因は,肝炎治療の副作用によるものと見るのが相当である。

▼「イエローカード」メールの送付は,注意ないし叱責として,通常の業務の範囲内から逸脱したものとは言えない(安全配慮義務違反行為には当たらない)。

▼Aの仕事上のミスが起きた時期は,発症から時間が経過しており,Aの精神疾患が徐々に快方に向かっていたこと等からすると,ミス発覚当時,Aに対して自殺の危険性等も予見した対応をとるべき義務があったということはできない。

▼発症から自殺までは約2年3か月もの期間が経過しており,その間の事実経過に照らすと,安全配慮義務違反行為(上記の上司らによる発言)と自殺との間に相当因果関係を認めるには至らない。

→(自殺ではなく)うつ状態の発症に対する少額の慰謝料のみ認容



以上のとおり,①上司らによる避難や退職勧奨等の発言行為については,安全配慮義務違反を認めたものの,②自殺直前の「イエローカード」メールの送付については,安全配慮義務違反行為に当たるとは認めませんでした。

その理由は,Aがうつ症状のことを会社に伏せていたことと,当時の症状の経過として改善が見られたことから,「イエローカード」メールの送付時点において,Aのうつ症状に対する認識可能性がなく,自殺の危険性等も予見した上での対応をとるべき義務はなかった,ということです。

自殺直前の行為(②)について,義務違反が認められなかったため,原告としては,自殺という結果からの距離が遠い,上記発言行為(①)と結果(自殺)との間の因果関係の立証が必要となり,結果,これが否定されて,A死亡に対する損害賠償責任は認められませんでした。

本件のように,当初の原因(発症)から結果発生までに,だいぶ時間があり,その間に様々な事実経過が見られるようなケースは,法律相談などを受けていても,時々遭遇します。

そのようなケースでは,発生した結果だけに引っ張られず,事実経過を詳細に分析することが重要です。どの事実を義務違反行為と捉えるかによって,そこから生じ得る結果の範囲が異なってくるからです。

現在私が取り扱っている医療過誤事件も,事故発生から症状固定までに,多くの時間と様々な経過を辿っている事案であるので,事実経過の分析の重要性を改めて感じました。



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今週

突然ですが,今週を振り返ってみようと思います。


月曜日

・成年後見人の転院の付き添い

・離婚調停期日への出頭


火曜日

・事務所会議

・裁判所との破産手続に関する意見交換会参加


水曜日

・個人的な問題で,病院通院のため,休業状態


木曜日

・ほぼ丸一日起案


金曜日

・相隣問題,債務整理等の複数の法律相談対応

・その他雑務処理


今週は割と時間的な余裕があった1週間でした。


夏の外回りは体力を使うので,できる限り外出はまとめて,その他の日は事務所で過ごしたいものです。


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夏のベランダ菜園

かなり時期に後れますが、ようやくかぼちゃが受粉し始めています。

現在までに3個受粉成功です。

収穫は9月頭~中旬でしょうか。


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夏の暑さにがぜん張り切って成長するスイスチャード。

色彩がよく、観賞用としても十分な、僕の好きな野菜の一つです。



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スイスチャードは元気ですが、

やはり夏の暑さを乗り切れなかったものもいます(もちろん僕の管理のまずさもありますが)。


モロヘイヤ、ローズマリーは残念ながら枯れてしまいました。

反省です。



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