思い出のプロ野球選手、今回は「山本功児」選手です

1970年代中盤からから80年代後半にわたって、巨人やロッテに在籍し、巨人時代は王貞治選手の控えや引退後のレギュラーと目されており、ロッテではレギュラーに定着し晩年に華々しい活躍をした長身の選手です。

【山本功児(やまもと・こうじ)】

生年月日：1951(昭和26)年12月25日
没年月日：2016(平成28)年4月23日　(64歳没)
入団：巨人('75・ドラフト5位)　
経歴：三田学園高－法大－本田技研鈴鹿－巨人('76～'83)－ロッテ('84～'88)

通算成績：1,217試合　打率.277　699安打　64本塁打　369打点　13盗塁

位置：内野手、外野手　投打：左左　現役生活：13年
規定打席到達：2回('84、'85)

表彰：ベストナイン　1回('85)

オールスター出場　2回('82、'85)
節目の記録：出場－1,000試合出場('86.4.17)

個人的印象

巨人の控え内野手、です。

とにかく長身が印象的で、身長は186㎝ありました。

また、広島の「山本浩二」選手と同姓同名で、何かと比べられ嫌な思いもあったといいます。ちなみに山本浩二選手は法政大学の先輩でもあります。

巨人で王選手の現役晩年に守備固めで出てきたり、控えの印象も強く、王選手が突然引退した時には、この選手が一塁のレギュラーを引き継ぐのかな？などと思った事もありました。

その後、原辰徳選手の入団で各内野のレギュラーがポジションを変わっていく中、はじき出されてしまったのは不運でした。

しかし、ロッテへ移籍してから初めて規定打席に到達するなど、巨人時代以上の活躍を見せ、庄司智久選手などと共に「巨人を出て主力になった選手」として挙げられることが多かった印象もありました。

ロッテで長くレギュラーを張っていた印象がありましたが、意外に短く、またあっさりといつの間にか引退していた感がありました。

プロ入りまで

大阪府堺の出身ですが、高校は兵庫県の三田学園高校で、同じ巨人に入った淡口憲治選手は1学年後輩で、近鉄で活躍した羽田耕一選手は2学年後輩と、在学が被っている後輩もプロで実績を残しています。

高校時代は3年春の選抜大会で甲子園に出場し、準々決勝まで進んでいます。

高校卒業時に地元の南海ホークスからドラフト3位指名を受けていますが、これを拒否し大学は法政大学へ進学しています。法大では長崎啓二選手が1学年先輩にいました。

優勝への貢献やベストナイン選出、日米野球の出場など実績を残しましたが、社会人の本田技研鈴鹿へ進みました。

社会人では補強選手として他チームで活躍したり、日本選手権や海外遠征にも出場するなど活躍し、社会人2年目の1975(昭和50)年のドラフト会議で巨人から5位指名され入団しました。

この年は巨人が長嶋茂雄監督が就任した年で、シーズンは球団史上初の最下位に沈んだ年でもあり、大型トレードも断行し、戦力もガラリと変わりゆく頃でした。

ドラフトでは山本選手の他に、1位に篠塚利夫選手、3位に中畑清選手を獲得、いずれもが後の巨人の内野レギュラー争いに参加していく事となります。

初期キャリア

新人の年は1976(昭和51)年、25歳になる年でした。張本勲選手が日本ハムから、加藤初投手が太平洋から移籍してきたりなど、大幅な戦力入替が始まり、チームが屈辱の最下位脱出をなんとしても成し遂げようという意気込みが見えました。

入団時与えられた背番号は「44」で、巨人でもロッテでも現役時代一貫してこの番号をつけ続けていました。

背番号4４というとバース選手の印象も強いですが、個人的に背番号44で最初に見た選手でした。ハンク・アーロン(王選手に記録を抜かれる前の通算755本塁打の選手)と同じで気に入っている、との事で背番号変更打診も断ってこの番号をつけ続けていたといいます。

そんな中で山本選手は67試合に出場、66打数18安打(打率.273)で1本塁打7打点の成績でした。

チームはセ・リーグ優勝を成し遂げ、1年目から日本シリーズの出場機会を得られたものの、代打ばかりで5試合出たもののヒットは打てませんでした。

2年目1977(昭和52)年は89試合に出て、94打数26安打(打率.277)で2本塁打18打点と躍進しました。

この年も巨人はリーグ優勝を果たし、山本選手も阪急との日本シリーズに出場します。この年も代打ばかりの出場でしたが、1本だけヒットを放ち、当時の阪急エースであった山田久志投手からの日本シリーズ初ヒットとなりました。

3年目1978(昭和53)年は、87試合と前年並みでしたが102打数30安打(打率.294)で3本塁打24打点を記録、まだレギュラーには遠く、なにせ一塁には王貞治という大きすぎる壁がある為ですが、それでも少しずつ数字は伸ばし続けていました。

ポスト・王

4年目1979(昭和54)年は更に出番を増やして、巨人ではキャリアハイの117試合に出て、220打数64安打(打率.291)で5本塁打29打点と躍進し、一塁の定位置には依然として王選手が君臨していましたが既に39歳、そのポジションを狙うかのような躍進ぶりを感じました。

このオフには巨人軍の伝説として語り継がれる「地獄の伊東キャンプ」のメンバーに選ばれ過酷な特訓に参加しています。

しかし翌1980(昭和55)年は初めて機会減となり、106試合で124打数29安打(打率.234)で1本塁打20打点で、新人の年から4年間2割7分以上の打率を残してきましたが、初めて2割5分を割りました。

この年オフに王選手が遂に引退し、一塁のポジションには山本選手が入るのか？と個人的にはなっていました。外野も結構守っていましたが、よく「王に代わって山本功児が入りました」というアナウンスを聞きながらテレビを見ていたので。

そして1981(昭和56)年、入団時の長嶋監督から藤田元司監督に代わり、王選手の引退後入れ違いにゴールデンルーキー原辰徳選手が入ってきました。三塁も前年まで高田繁選手がいて、中畑清選手が定位置確保したばかりという状況でした。

当初原選手は二塁に置かれ、二塁手だった篠塚利夫選手はせっかく掴んだ定位置を手放す事となり、三塁は中畑選手、遊撃は河埜和正選手、一塁は？となりましたが当初は大洋から移籍してきた大ベテラン・松原誠選手が入っていました。

その後序盤に中畑選手が試合中に負傷し、原選手が三塁へ回って固定され、二塁は篠塚選手が戻り、一塁は山本選手が75試合守りましたが、中畑選手の復帰後に定位置争いとなり、結果的に奪われた格好となりました。

という事でシーズンは95試合で179打数43安打(打率.240)で4本17打点と大幅に下げた前年よりやや上げた程度でした。

そんな中で8月の中日戦で、ショート宇野勝選手が落球した「宇野ヘディング事件」が起きましたが、この飛球を打ち上げたのが山本選手でした。

この年は巨人が4年ぶりにリーグ優勝し、日本ハムとの日本シリーズを戦いました。前年までの長嶋茂雄監督時代はリーグ優勝は2回あったものの、遂に日本一を手にする事ができなかったので、この戦いはV9ラストの1973(昭和48)年以来の日本一をかけた戦いでもありました。

この日本シリーズでは山本選手はほとんど出番がなく代打か守備固めで、中畑選手に定位置を取られた後だった事もあり、せっかく8年ぶりにして入団以来初の日本一の経験となったのに活躍できなかったのは残念でした。

外野手として

元々、なかなか入れない一塁以外に、外野手としての守備機会も少なからずあった山本選手でしたが、中畑選手が一塁に定着し、今度は外野での出場機会を増やしていきます。この年は107試合に出て254打数56安打(打率.220)で13本塁打33打点と一気に初の2ケタ本塁打を記録しました。

ホームランこそ増え、規定打席到達機会ゼロの山本選手が初のオールスター出場を果たしもしましたが、ここ3年は2割3分前後の低打率にあえぎ、入団後4年は2割7分以上だったので、この辺りの安定感のなさが定位置争いに敗れた要因ともいえました。

ただ外野へはじき出されてオールスターに選出されたのは幸運だったかもしれません。巨人でオールスターに出た事があったとは…、この記事を書くにあたり調べるまで知りませんでしたし、当時もリアルで認知していませんでした。

1983(昭和58)年は78試合で117打数33安打(打率.282)で5本塁打15打点、前年の半数程度まで落としてしまいました。

4度目の日本シリーズは西武との対戦でしたが、ここでも代打での出場が主で、殊日本シリーズについては活躍運がなかったと感じました。シーズンで良い成績をあげた時にはチームは優勝せず、チームが優勝した年はあまり活躍できなかったという巡り合わせの悪さもあったと思います。

日本シリーズ出場歴は巨人在籍時のみであり、この時が最後となりました。

新天地で開花

1984(昭和59)年に、三宅宗源投手とのトレードでロッテへ移籍しました。

三宅投手は台湾人から、外国人枠の関係で日本人に帰化した選手で、当時のロッテにはリー、レオンというバリバリの打者がいて、なんで台湾の若手投手を獲ったのだろう?と思いましたが、後に帰化して外国人枠の影響がなくなりました。ロッテでそこそこの成績をあげていましたが、巨人では結局一軍ゼロで終わってしまいました。

逆に山本選手はロッテへ移籍するやレギュラーとして活躍し、33歳になる年で初めて規定打席に到達するなど大躍進を遂げました。

巨人時代も藤田監督が「レギュラーとしてやっていける力を持った選手」と認めながらも、チーム編成上どうしてもはじき出されてしまう、という事で、他球団へ行けば十分活躍できると踏んでの放出だったと思います。トレードで成功したケースとして取り上げられることもよくありました。

シーズンは125試合とキャリアハイを記録し、429打数129安打(打率.301)で10本塁打66打点を残し、初の規定打席到達で唯一の3割をクリアしています。

翌1985(昭和60)年も主軸として活躍し、122試合で413打数121安打(打率)で10本塁打67打点と、打点はキャリアハイでした。ロッテでは唯一でしたが、巨人時代以来3年ぶり2度目のオールスターにも出場しています。

晩年　引退

主軸として規定打席に到達する活躍を見せたのはこの2年間だけでしたが、その後も準レギュラー的に活躍を続けていきます。

1986(昭和61)年は通算1,000試合出場を達成しますが、巨人にいたままでは達成できたかどう(巨人時代746試合)か…と思うとトレードの妙味を感じます。

この時期からは故障がちになり、また落合博満選手の動向に影響されやすいチーム編成で、彼のコンバートによる影響もありました。

1987(昭和62)年は落合選手が1対4の大型トレードで中日へ移籍しましたが、4番打者を務めていた時期もありましたが、やはり故障の影響で規定打席には届かず、95試合で251打数80安打(打率.319)で6本塁打42打点を記録、実質的に戦力として活躍した最後の年で、ホームランはこの年が最後となりました。少ない打席でも.319を残したのは36歳にして立派なものがありました。