思い出のプロ野球選手、今回は「間柴茂有」投手です

1970年代から90年代初頭の3年代にわたって活躍を続けた左腕投手で、特に日本ハムでの活躍が印象的で、1981年には15勝0敗で勝率1.000での最高勝率のタイトルを手にして、日本ハムのリーグ優勝に大きく貢献しました。

【間柴茂有(ましば・しげくに)】

生年月日：1951(昭和26)年11月15日
入団：大洋('69・ドラフト2位)　
経歴：比叡山高－大洋('70～'77)－日本ハム('78～'88)－ダイエー('89～'90)

通算成績：500試合　81勝83敗2S　1,657投球回　51完投　11完封　790奪三振　防御率4.14

位置：投手　投打：左左　現役生活：21年

タイトル：最高勝率　1回('81)　※15勝0敗　勝率10割での達成

表彰：月間MVP　1回('81年9月)
規定投球回到達：5回　('75、'78、'80、'81、'84)　
オールスター出場：2回('80、'83)　

節目の記録：登板－500試合登板('90.5.9)

個人的印象

日本ハムの先発左腕投手、です。

特に日本ハムが優勝した1981(昭和56)年の15勝0敗の大活躍は大変印象的でした。

この年は、それまでのエースだった高橋直樹投手が広島へ移籍し、前年に木田勇投手が新人として投手タイトルを総なめにして鮮烈なデビューを果たすなど、混沌とした時代で、そんな中で1980年代の前半はエースの座にあった、と思っていたぐらい安定して活躍していた印象がありました。

しかし通算81勝しかしておらず、偶々自分が見た時代は先発としてピーク期だったのかもしれません。意外にも2ケタ勝利は3度しか達成しておらず、うち2回はギリギリの10勝であり、やはり15勝0敗の印象が強すぎて、当時のエースだと思っていたのかもしれません。

また当初、大洋にいたのを知らず、かなり後から知りました。

日本ハムでの後期は、先発の比重が落ちて、最後はダイエーに2年間だけいましたが、ほぼ中継ぎ投手の印象しかなく、それでも一応先発の実績も何度かあるのですね。

また、名前はルビを振ってあるのを見るまでは「しげあり」だと思っていました。「しげくに」だったとは…という感じでした。

当初の名前は間柴富裕(とみひろ)といい、大洋時代末期に負けが込んで連敗を止めたくて茂有へ改名したといわれます。

プロ入りまで

高校は滋賀県の比叡山高校で、1969(昭和44)年の3年春選抜大会にて、初戦敗退したものの同校初の甲子園出場を果たしています。

高校時代はいいところまでいきながら、甲子園に出たのは1度だけという実績でしたが、1969年のドラフト会議で大洋ホエールズから2位指名を受け入団しました。

初期キャリア

高卒でドラフト2位入団した間柴投手、入団時の背番号は「48」という大きな番号でした。

高卒1年目から一軍登板機会を得て、22試合に登板し0勝1敗防御率4.66でした。先発は3度ありましたが、初勝利は挙げられませんでした。

以後は2試合、23試合、2試合…という形で、2試合か20試合台の登板をして、2試合の年は2㌄ほどの登板とほとんど出番がありませんでした。

この最初の4年間は勝ち星がなく、通算で0勝7敗で防御率も4点を下回った年が一度もありませんでした。

この4年目には背番号が「38」とわずかながら昇格したような形でしたが、整理対象選手にまでなりながらなんとか首がつながり、ここから奮起し5年目1974(昭和49)年は念願の初勝利を含む5勝をあげて、5勝4敗防御率3.13で46試合に登板し存在感を見せ始めました。投球回は95⅓㌄と、規定投球回数が見えてきた域にまできました。

翌1975(昭和50)年は背番号が一軍クラスの「15」となり、大洋では最高の成績をあげた年で、44試合に登板し6勝7敗防御率4.20で137⅓㌄を投げ、初めて(大洋では唯一)規定投球回数に到達しました。わずか6勝でしたが、プロ入り初完封を含む3度の完封はリーグ最多となりました。

しかし以降は1976(昭和51)年は15試合に激減し、0勝4敗防御率6.75と不振を極め、1977(昭和52)年は35試合で2勝5敗防御率4.98に終わりました。この年の1勝目を挙げるまで、1975年から3年越しで実に13連敗をしていて、闇の中にありました。

日本ハムで活躍

1978(昭和53)年からは、野村収投手とのトレードで杉山知隆投手と共に日本ハムへ移籍しました。

いずれも30歳を越えたベテラン投手同士で、その中で間柴投手は27歳になる年で、これからの伸びしろも期待されたのではないかと思います。

背番号は「19」を与えられ、以後日本ハム在籍中は一貫してこの番号を背負っていました。

移籍初年から活躍し、37試合で7勝11敗防御率3.68で、170⅔㌄を投げて3年ぶりに規定投球回に到達しました。トレード相手の野村投手は大洋で17勝をあげる大活躍を見せ、一緒に日ハムへ移った杉山投手は9勝をあげる活躍を見せ、3人全員にとって良いトレードになったと感じます。この年日本ハムは前身の東映時代から11年ぶりのAクラス入りを果たしています。

1979(昭和54)年は35試合で3勝4敗防御率4.27に終わり、投球回は116㌄と規定投球回に僅かに足りませんでしたが、先発20回で116㌄も投げながらわずか3勝4敗って、後で逆転により勝敗がつかなくなったり、勝敗がつく以前に降板してるかですね。

1980(昭和55)年フォークを覚えた事が転機になったといわれますが、この年は初めてオールスターに出場し、38試合で10勝7敗防御率3.83と初めての2ケタ勝利を挙げ、キャリアハイの188⅓㌄を投げました。

意外にも?200㌄越えは一度もなく、この年の投球回が最多でしたが、ここからが間柴投手が日本ハムの主力投手として輝き始めた時期でもありました。

無敗で優勝

1981(昭和56)年、30歳を迎える年となりましたが、この年は先発でKOされても負けが消える試合が続き、開幕から14連勝という当時のプロ野球新記録を達成、さらに1勝を上積みした15勝0敗防御率3.46、勝率10割での最高勝率のタイトルを獲得、これが現役生活唯一のタイトルとなりました。9月にはこれもただ一度の「月間MVP」の表彰を受けています。大洋時代、足掛け3年で13連敗していた投手が、1シーズン15連勝するのだから人生分からないものですね。

前後２期制だったこの当時、前期はロッテが優勝し、後期は日本ハムが優勝し、プレーオフが5戦にわたり行われました。ここでは第3戦に先発し見事に完投勝利を挙げ、日本ハム念願のリーグ制覇に大きく貢献しました。日本ハムの勝利で完投したのは間柴投手だけで、あとは抑えの江夏豊投手のリリーフを仰いでいます。

こうして「日本ハムファイターズ」として初めてのパ・リーグ優勝を果たし、間柴投手にとってもこれが21年間にわたる現役生活でただ一度の優勝経験となりました。

「後楽園シリーズ」となった巨人との日本シリーズでは、2試合に先発しましたが、いずれも敗戦投手となり、シーズンからプレーオフまで無敗だった投手が日本シリーズの大舞台で遂に勝ち運に恵まれ敗れてしまった、という事になりました。

80年代前半

以後も日本ハムの先発ローテーション投手として活躍を続けますが、1982(昭和57)年は5勝10敗1S防御率5.20と悪化し、116㌄と規定投球回をわずかに割り込みました。序盤に2シーズンぶりの「敗戦」投手となり、連勝は16でストップしました。

翌1983(昭和58)年も同程度の投球回で逆に10勝5敗防御率2.70と好転しています。

この年は3年ぶり2度目で最後のオールスター出場を果たし、最後の2ケタ勝利をあげていますが、結果的に規定投球回には届きませんでした。というのも、血行障害により7月からの後半戦を棒に振り、手術もしたといいます。血行障害ってなんとなくですが、左腕投手に多い印象が個人的には強いです。

最後に規定投球回に届いたのが1984(昭和59)年の147㌄で、36試合に登板し5勝11敗防御率4.65でした。前年の血行障害離脱後リハビリを経て復活をかけて臨んだシーズンで一定の成績は残したものの、この辺りで先発ローテーションは厳しいと見られたのか、以後は中継ぎの比率が上がり、たまに先発するような形になっていきました。

80年代後半

1985(昭和60)年は21試合で3勝1敗防御率3.54で、投球回は40⅔㌄まで激減しました。

1986(昭和61)年はやや持ち直して26試合で5勝4敗1S防御率4.67でした。80年代後半ではこの年が最も成績がよく、その後は細々と現役を続けていたような印象がありましたが、1987(昭和62)年は16試合3勝1敗防御率3.02、日本ハム最後の年となった1988(昭和63)年は14試合0勝1敗防御率7.88で16㌄のみとほとんど戦力にならず、戦力外通告を受け、37歳を迎えていましたが、節目の500試合登板まであと「19」に迫っていました。