思い出のプロ野球選手、今回は「桑野議」選手です。

1970年代を中心に、前記事の川藤幸三選手同様に阪神で代打の切り札として活躍した選手です。

【桑野議(くわの・はかる)】

生年月日：1949(昭和24)年5月5日

入団：阪神('67・ドラフト5位)　
経歴：九州工高－阪神('68～'81)

通算成績：530試合　打率.221　154安打　11本塁打　76打点　0盗塁

阪神の代打の切り札、です。

そういう意味で、同期の川藤幸三選手よりも代打男として、個人的には先に認知していました。

「代打　桑野」という表示をテレビでよく見た覚えがあります。

また野手で背番号17というのも妙に印象的でした。

阪神は結構、背番号10番台を野手につけることが多く、ほとんどは投手につける番号ですが阪神は他にも、これまた同期の中村勝広選手が14番、後に入団する岡田彰布選手も16番をつけています。

この昭和24年度生まれは１つ上、2つ上に比べるとスター選手が少ない印象がありますが、阪神には他に榊原良行選手がいたり、「当たり」の年代だと思います。

それと、名前の「議」が「はかる」と読めませんでした。名前をよく知らないまま、「桑野議」という字面だけ覚えてましたが、この字が読めるようになったのは現役引退後、コーチになってからの選手名鑑でルビを振っていたのを見た時でした。

高校は福岡県の九州工高で、ここでは後にヤクルトに入る奥宮種男捕手とバッテリーを組む「投手」として活躍し、県予選の決勝まで進みながら、甲子園にはもう一歩のところで手が届きませんでした。

1967(昭和42)年にドラフト5位で阪神タイガースから指名され、この時の9位が川藤選手でした。

プロ入りにあたり、高校時代の打撃センスを買われ、野手として入る事になり、最初の背番号は「40」でした。

そして高卒1年目から一軍に上がる事ができ、わずか3試合のみですが、4打数1安打で打率.250の成績を残しています。この時は10月になってからの出場でしたが、同期の川藤選手も数日遅れで一軍デビューを果たしています。

翌1969(昭和44)年、2年目は一軍出場ゼロで、3年目の1970(昭和45)年に20試合に出場し、21打数4安打、打率.190で2打点と、この年初打点をあげていますが、ホームランは記録できませんでした。

一軍の戦力として台頭してきたのは4年目1971(昭和46)年の事でした。

個人的に代打としてしかほぼ記憶にないため、スタメン出場した事があると聞くと全然イメージが湧きませんが、この年は一気に70試合に出場し、107打数24安打、打率.233、1本塁打7打点をあげました。また、待望の初本塁打はこの年に記録しました。

こうして実績を少しは残したものの、その後低迷し1972(昭和47)年はわずか6試合のみで6打数無安打、優勝争いをした1973(昭和48)年は28試合で30打数7安打、打率.233でしたが、2年連続の0打点でした。

翌1974(昭和49)年は、背番号が「17」に変わりましたが少し出番が増えた程度、41試合で59打数10安打、打率.169で0本塁打1打点と3年ぶりに打点をあげた、といった状態でした。

現役生活14年間を通して一度も規定打席の到達した事がなく、最多の打席数も133という決して多くないものでしたが、出番的に最盛期にあたるのは1975(昭和50)～1977(昭和52)の3年間になると思います。

この3年間はいずれも100打数を越え、1975年は110打数27安打、打率.245で3本塁打13打点と活躍、ホームランは実に4年ぶりでした。5月には同じ日に二軍戦で決勝ホームランを放って、その夜の一軍戦でも決勝打を放ったという離れ業をやってのけています。

1976(昭和51)年に125打数でキャリアハイの33安打、打率.264、1本塁打21打点をマーク、20打点を越えたのはこの年のみでした。この年には結婚しましたが、27歳当時に18歳の奥さんと、しかも知り合ったのが奥さんの中学時代で桑野選手のファンであったというから驚きです。

1977年は114打数24安打、打率.211とあまり高くありませんでしたが、4本塁打11打点とホームランはキャリアハイでした。

この3年間の試合出場はいずれも70試合台で、代打および準レギュラー的な感じでした。

1978(昭和53)年から出番が減少し始め、試合数は68でしたが、64打数11安打、打率.172で1本塁打12打点、出番は減りましたが打点はそれまでと同程度の数字を残し、よりひと振りに賭けるようになっていきます。

30歳を迎えた1979(昭和54)年に唯一放ったホームランが現役最後となり、1980(昭和55)年は15試合で14打数4安打、打率.286で2打点でしたが、一軍の出場も安打も打点もこの年が最後となりました。

1981(昭和56)年は現役続行となりましたが、一軍出場なしとなり32歳で引退しました。

代打男として名を馳せ、通算代打安打数は阪神球団史上5位の84本で、川藤選手の85本にわずか1差でした。

現役生活を通じて盗塁「0」の記録は返って潔いと感じましたが、盗塁死が3ありました。

また、チームが優勝に無縁の時期で、惜しいところまで行った事こそありましたが、結局は優勝は未経験のままでした。

↓1985(昭和60)年の選手名鑑より

コーチとして4年目のシーズンで36歳でした。

阪神では引退後15年ほどの長きにわたってコーチを務め、21世紀に入って社会人チームでは監督も務めました。

代打本塁打8本の記録が代打男であった事が分かり、現役通算全11本塁打のうち8本は代打でのものでした。

思い出のプロ野球選手(112) 桑野議(阪神)