その眼、本当に眼瞼下垂手術が必要ですか? | 迷える子羊のための美容整形教室

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最近、家やマンションのリフォームがブームですね。

私の自宅にも、毎日のようにリフォーム関連の折り込みチラシが入ってきます。

壁紙や障子の張り替えのようなちょっとしたリフォームもあれば、一見新築に見まごう程の大掛かりなものもあります。

では突然ですが、私が「部屋が昼間から暗いから、リフォームで窓を大きくしよう。」と言ったらどう思われますか?

別に変だとは思いませんよね。

でも、もしその部屋の窓の半分がいつも雨戸でふさがっていたらどうでしょうか?

当然、リフォーム云々を検討する前に、まず雨戸を開けることを勧めますよね。

もちろん、雨戸を全開にしてもまだ暗ければ窓のリフォームを検討するでしょうが、雨戸を開けずにいきなりリフォームを始めることは無いと思います。

「何を当たり前の事、言っているんだ!」としかられてしまいそうですが、この雨戸を開けると言う作業をとばしていきなり窓のリフォームをしてしまうような方が美容外科では最近増えてきています。(また訳のわからないたとえ話と言われてしまいそうですね。)

この窓のリフォームとは眼瞼下垂手術の事です。

という訳で今回は上まぶたのお話です。


眼瞼下垂手術は、その名の通り「眼瞼下垂症」と言われる症状に対する治療です。

上まぶたは上眼瞼挙筋と呼ばれる筋肉で開きますが、この筋肉のまぶたを引き上げる力が弱くなった状態を眼瞼下垂と言います。

挙筋機能自体が悪い場合(先天性眼瞼下垂や筋疾患、神経疾患に伴う下垂)と挙筋機能は保たれている場合(腱膜性眼瞼下垂)で治療法は異なりますが、いずれにせよこの眼瞼挙筋の機能を改善することで、眼を開きやすくするのがこの治療の目的です。

一般的には、視野の妨げになるような重度の眼瞼下垂を眼瞼下垂症と呼び、保険治療の適応になります。

ただし美容外科では、機能的には全く問題が無い方でも、今よりぱっちりとした大きな眼にされたい希望があれば同様の治療を行います。(もちろん保険外診療となります。)


10年ほど前は、「眼瞼下垂」という言葉が今ほど一般的ではなく、その治療の必要性がある方にその事を説明するのに苦労したものですが、最近は雑誌やテレビなどでこの「眼瞼下垂」について話題になる事も多く、そういった苦労も少なくなりました。

それどころか、最初から「眼瞼下垂手術をしたい。」と希望されて来院される方も少なくありません。

そういう訳で、最近は以前に比べ、眼瞼下垂手術がとても増えてきました。

元々好きな手術のひとつなので、個人的には嬉しいかぎりなのですが、その手術の適応が無い方まで「眼瞼下垂手術」を希望するケースが少しずつ増えてきているのはちょっと気になります。

「見た目に瞳の多くが隠れている状態」➔「上眼瞼挙筋機能が悪い」➔「眼瞼下垂手術が必要!」と思われがちですが、そうでないケースもあります。

これは、挙筋機能に問題は無くまぶた自体は開いているけれども、その開いているはずの眼を上まぶたの皮膚が隠している状態です。

ちょっと分かりにくいので、典型的なケースのモニターの写真をお見せします。

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左の方は典型的な眼瞼下垂症です。

右の男性も一見同じように見えますが、実は少し異なります。

この方は、眼を開ける力自体は左の方ほど悪くありません。でも、その開いている眼を瞼の皮膚が隠してしまっています。

皮膚が余ってかぶさる理由は様々ですが、一重や奥二重の方の多くは多少なりともこの状態になっています。

もちろん、加齢によってまぶたがたるんでいる方も同じ状態になります。

こういったまぶたの状態も広義の意味では眼瞼下垂と呼ばれますが、通常の眼瞼下垂と区別するために、「偽眼瞼下垂」と呼ぶ事もあります。

つまり、この「偽眼瞼下垂」の方は、奥の方では眼が開いているのに、せっかく開いているその眼を皮膚が隠してしまっている訳です。

いわば雨戸を半分占めている状態です。

こういったまぶたに対しては、いわゆる挙筋短縮術のような通常の眼瞼下垂症に対する治療を行わなくても、邪魔な皮膚を取り除くだけで今より瞳が見えるようになります。

つまり雨戸を開けるという事です。

「眼瞼下垂」「偽眼瞼下垂」の違いをイラストにしてみました。

まず、通常の「眼瞼下垂」では挙筋がまぶたを引き上げる力が弱くなるので、上まぶたの最下点、つまりまつ毛の生え際が一番下になっています。

ということは、本当の目の開きと見た目の目の開きに違いはありません。

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これが、「偽眼瞼下垂」では、本来の目の開きの最下点であるまつ毛の生え際よりさらに下まで皮膚が被さっています。

ですから、この状態では本当の目の開きと見た目の目の開きが一致しません。

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この状態になっている方は、先ほどもお話しした通り、その隠れている睫毛の生え際が見えるようになるまで被さった皮膚を取り除けば、それだけ瞳が見えるようになり、見た目にもパッチリします。

では、余分な皮膚を取り除くにはどんな方法があるのでしょうか?

単純に一重の方であれば、二重にするだけでその分皮膚が折りたたまれて、被さりが解消します。(一重の方が二重になるとパッチリするのはそのためです。)

加齢でたるんでいる方は、全切開(二重のライン上でたるみを切除)や上眼瞼リフト(眉毛下でたるみを切除)をすることで改善します。


もちろん、こういった治療でまつ毛が見える状態になったにもかかわらずまだ眼の開きが物足りない方は、一般的な眼瞼下垂手術が必要になります。

最初に見ていただいたモニターの男性も、実は埋没法で二重にした後、眼の開きが物足りなくて、後日眼瞼下垂手術を行っています。

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当然、眼瞼下垂手術後の目が一番パッチリしていますが、埋没法をしただけでも、術前の目に比べれば、瞳が見えるようになっているのが分かります。


今回この事をお話したのには訳があります。

それは、皮膚の被さりが解消するだけで十分満足できるであろう方がいきなり眼瞼下垂手術を行ってしまうと、眼がギョロっとしすぎてしまったと感じてしまったり、その変化の大きさについていけなくなってしまう事が少なくないからです。

実際、一重の男性などがいきなり眼瞼下垂手術をすると、パッチリしすぎて可愛い目になり過ぎてしまうことや、年配の方で昔の目に戻りたいだけの方がこの手術を行って、術後に「ギョロっとしすぎて恐い眼になってしまった」とおっしゃられることがよくあります。

ご年配の方で、「眼瞼下垂手術をしたら、孫が怖がって近寄ってくれなくなった。」なんて笑えない話もあります。

どんな手術をしたいかではなく、どんな眼になりたいのかをドクターとしっかり相談して、最善の方法を見つけることが大切ですね。