私はしつこい性格なので、その2。
赤字病院「だと」医療事故は多いのだろうか。
仕事が終わってから調べたが、そういうデータが出てこない。
見つけられたのは以下。
日本医療安全調査機構のHPから。
要するに病床数が増えると(入院患者が増えると)、医療事故も増えるというデータ。
分母が増えれば分子も増える。
また、仮に赤字と医療事故に関連があるとして、赤字だから医療事故が多いのと、医療事故が多いから赤字なのは意味が異なる。
相関関係と因果関係は別という、理系ならおなじみの考え。
医療経営と安全確保という点では以下の論文があった。
https://www.hws-kyokai.or.jp/images/ronbun/all/200505-1.pdf
結語にあるのは以下。
基本的に安全には最大限の努力を払うべきだと考えるが,今の診療報酬体系による保険収入ではすべての安全費用をまかなうことは困難である。
考察部分で、医療安全対策について論じた後で、こう指摘されている。
これらのこと(医療安全対策のこと)を徹底的にやると病院経営は直ぐに破綻する。
この論文によれば、日本は、医療安全に熱心だと、病院は赤字(どころか破綻)になる制度設定だということになる。
以下の論文によれば、医療安全への取り組みについて一定の基準に達していると、1~5%利益があがるという(そのように保険点数が設定されている)。
https://www.u-hyogo.ac.jp/mba/pdf/SBR/4-2/035.pdf
一方、医師一人あたりの医業収益は事故数と関連がなく、医師数と関連する(=人件費、支出が上がる)。
なお、看護師は逆だった。
結論が出せないという結果になっているが、そうだろう。
医療安全の取り組みをしっかり行えば、特別な加算が入って1~5%の収益増になるが、人件費の高い医師が多い方が医療事故が少ない(しかも医師一人当たりの収入と事故数が関係しない)。
全体として、医療事故の多寡と収益の関係は「分からない」としか言えない。
件の週刊誌は定性的な意見ではなく、私が調べきれなかった、経営状態と医療事故数あるいは医療の質の相関について、定量的データをきっとお持ちなのだろうと信じることにする。