ある週刊誌によると、”赤字病院が危ない”という。

 

 ところでどのくらいの病院が赤字なのだろうか。

 全日本病院協会の調査。

 医療では70%が赤字。

 経常利益って知らないのだが、調べると利息や配当金などの本分以外の収益らしい。

 病院の経常利益って想像できないのだが、とにかく赤字が普通。

 

 件の週刊誌によれば、「赤字の病院では、医療そのものの質の低下も否めない」のだという。

 「否めない」とぼかしているが、素直に読めば、赤字病院≒医療の質が低い病院。

 だとすると、日本の病院の70%は危ないことになるが・・・。

  

 

 なぜ病院は赤字なのだろう。

 病院の収益は、もちろん治療費だが、これは保険点数として定められており、いわゆる自由診療でない限り、日本中どこにいっても同じ値段になっている。 

 

 ところでどのくらいか。

 たとえば病院に行くと初診料というものがある。

 これは厚労省のHPでは2006年は270点(1点=10円なので2700円)だが、少しずつ改定されて、2024年は291点(2910円)。

 高いだろうか。この18年で1.077倍である。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000u7hn-att/2r9852000000u7n2.pdf

 

 さて、物価の優等生、卵。 

 2006年ごろは85円、2024年は127円で1.49倍、急に上がったのでその手前の2022年の値段でも105円程度で1.23倍。

 卵じゃあれなので、ラーメン(正確には中華麺)だと、総務省統計局HPによれば、昔住んでいたさいたま市では、2006年は219円、2024年は490円で2.23倍。

 ガソリンは都内の価格が出ていて、2006 年ごろは118円くらい、2024年は170円程度で1.44倍。

 

 

 かように世の中、値上がりしているのに、おかみ(正確には中医協。全体の決定は内閣)が決めた病院の収入源の保険点数は、卵なみに(というか、卵よりも)値上がりしていない。

 この間に、医療機器などの材料費、病院機能維持の光熱費などは値上がりしているのに。

 

 さては人件費が足を引っ張ているのか?医師が怪しいぞ。

https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20071026_1.pdf

 さすが桁が違う。絶対数値は別にして、上がり具合。

 勤務医(開業医と違う)の平均年収は2006年で970万円程度(下図)、最近で高かった2023年の1440万円と比較すると1.48倍。

 ガソリン並みではある。

 だがラーメンより値上がりしていない。

 

 余談だが面白いのが、2006年当時(下図)、金融会社勤めのエリートサラリーマンの方が、勤務医より平均年収が高いこと。

 そして、医療について様々なご批判をしてくださる週刊誌や新聞紙、放送局などの記者の皆様と70万円の差なこと。

 記者の皆様、高給取りなのですね。

 

 なお、病院は膨大なスタッフを抱えている。看護師、リハビリ・スタッフ、ソーシャル・ワーカーだけではない。

 医事課、総務課、施設課など事務系で、この人たちの力添えがなければ、医師だけで病院は機能しない。

 この人たちの人件費も必要。

 

 

 収入は国から一律で抑えられ、支出も(ほぼ)世間並みの上昇率なのに、なぜ医療費高騰と言われ、病院は赤字なのだろうか。

 

 皆で考えるべきことだと思う。