スクロバチェフスキーもアーノンクールも死んでしまったし、実演で聴きに行きたいブルックナー指揮者さんがいなくなったなあ・・・と寂しい思いをしていたのですが、見つかりました、お気に入りになりそうな指揮者さん。

 

 マルクス・ポシュナーさん。

 リンツ・ブルックナー管弦楽団の首席指揮者、代わっていたのですね。 

 

 

 

 驚いたのが、全体的にテンポが速くて軽めの演奏なのに、ブルックナーを聴く楽しさは失われていないことです。

 軽めに聴こえるのは低音を響かせないから(たぶん)。

 他はどうしてかなと何度か聴いていて、なんとなく以下の理由かなと。

 

 速いといってもアッチェレランドはかけない。ブロック構造ごとでテンポ変化させ、テンポルバートがほぼない(たぶん2)。

 たいてい第二主題にある美しいメロディーラインの箇所では、テンポを落として歌うように演奏する。

 ゲネラルパウゼでしっかり時間をとり、またブロックの最後をディミヌエンドせず構造を明確にする。

 個人的に、もっともブルックナーらしいと思う、主題から主題への移行部やメロディーにならない断片的な音を様々な楽器が演奏する箇所で、テンポを少し落とす。

 音の響かせ方やヴォリュームでアクセントをつけることがあり、聴いていて面白い(たぶん3)。

 

 ということで、重厚なブルックナー演奏がしんどくなった最近、ちょうどいいなあという感じです。

 音の絡み具合も良く聞こえるので、”残響”まで音符にして演奏している箇所や対位法、ラストでこれまでの主題が重なるところも、しっかり聴き分けられる。

 見通しが良すぎて、ちょっと音がガチャガチャしているように聴こえることがあるくらいです。

 

 特に気に入ったのが6番。

 なるほど、ブルックナーにとってベートーヴェンの交響曲7番だったのかと、初めて分かった気がします。

 ポシュナーさんは第一楽章のリズムや、第一、終楽章に登場するポリリズムを強調しているので聴いていて楽しい。

 それに第二楽章第三主題の葬送行進曲の美しさ(同じくきれいな第二主題との対比も良い)。

 終結部なんて、ちょっとマーラーみたいでした。

 

 今まで6番は第一楽章、第二楽章を好んで聴いてましたが、終楽章が正直よくわからなくて最後まで聴き通すことがあまりありませんでした。

 この演奏は全体的にコンパクトで、しかもブルックナーらしくないところを逆手にとったような面白い演奏で、何度も聴き返し、楽しめました。

 

 

 来日してくれないかな。

 あと私の大好きな第2番、ポシュナーさんの個性にあっていそうなので発売が待ち遠しいです。

 

 もう少し長生きしなきゃ。

 

 

 

マルクス・ポシュナー指揮 リンツ・ブルックナー管弦楽団

ブルックナー交響曲4番(第2稿)、6番、8番 Capriccio, 2022