続き
第一節
音楽を学ぶべきと言われる主人公の子供(p14)。
この後も同じ台詞が繰り返されます(p80、86-87、91、95、98)
その後、ある男が女を殺した事件がおきる。
第二節
物語全体を「麻酔分析」(精神分析?)としてとらえれば、質問している男は治療者で、答えている女主人公は患者。
そして、患者にあたる女性主人公は「震えて」登場する(p27)。
あたかも「震え」が症状でもあるかのように。
対話の途中で主人公は「親は子のことを大事に思うのが当然」と突然語りだす一方で(p37)、帰り道に「坊やがわたしの想像の世界に生きていて、こうして生きているのが本当じゃない気がするの」(p41)と感動を味わいながら話します。
彼女は「子供が幻」で「私は生きていない」ようだと考えることに”興奮”する。
私が生きていなければ、子供もいないことになる。
しかし、この「本音」に先回りして、彼女は「子の幸福を願うのは親の努め」という月並みな道徳で言い訳しています。
これもある意味、「症状」。
第三節
マグノリアの強い匂い(p49-50)。
冒頭に起こった事件に関する、分析家にあたる男の説明(解釈)。
「(殺された)彼女は男に対する自分の欲求を悟ったんですよ」(p51)
その後、男は「あなたは(略)工場の男たちを眺めていらっしゃるんですね、それで夜になって、よく寝られない時なんか、そんな人たちのことを思い出すことがあるのでしょう」(p59)と主人公の言動を指摘する。
帰り道に子どもに「赤い大型のモーター・ボートを買ってあげる」と上機嫌な主人公(p60-61)。
船は精神分析では女性の象徴とされていますが、それは置いておいても、女性名詞です。
ここでは性について語られている。
第四節
なぜか笑いたい主人公。(p64)
酔っ払いが夜遅くふらついている。それを部屋で一人で聞いている主人公(p69-70)。
男の指摘。「(酔っ払いの声がするとき)あなたが眠っていようと起きていようと、上品な格好であろうとなかろうと、そもそもあなたの存在に気づかなかったんだ(酔っ払いたちはそこに主人公がいることに気づいていない)」(p70)。
なぜか動揺する主人公。「いけないわ」「思い出すじゃないの、どんなことになるかしれなくてよ・・・」(p70-71)
半分露出した胸に白いマグノリアを差して、夫と部下を家に迎え入れたと指摘する男(p71)。そしてその家で「幾人もの女たちが死んでいったのですね」という(p72)。
急に文章では語り口が乱れ(邦訳では句読点がなくなる。原語では不明)、主人公は「こんなところから出ていく」と口走り(p73-74)、自分の子供がいつ生まれたかを思い出せなくなる(p77)。さらに、自宅近くで、夜、肩を寄せ合う男女を見たと語りだす。
「あなたは一度だって叫び声をあげたことがない」と述べる男(p77)。
主人公は帰り道、早く帰宅したがる息子に速く歩けないと返事をする(p79)。
「なぜか笑いたい」、つまり本人が自覚していない性からの解放感で笑いたくなった主人公は、この対話の後半で疲弊している。
女主人公にとって、分析が速すぎるようです。
この対話では、彼女が性にまつわる何かを受け入れる準備ができていないことが突き付けられている。
つづく