表題以外のことでも、発見と学びがありすぎて困る一冊。

 個人的な備忘録。

 覚えておくべきこと、現場で考える際のヒントをいくつか。

 ( )内は私の考えなので、スルーで。

 

 

 

 トラウマに焦点をあてた認知療法はスーパーヴァイズを受けるべき。

 テキストを読んだだけでの治療は失敗する。(p26)

 (見よう見まねや、机の上での勉強だけなら、やらない方がまし)

 

 

 傷を受けた「にも関わらず」、今、ここにいるとすれば、何が支えてくれたのか探す(p39)

 

 

 パニック障害の発作は「くるぞくるぞ」。

 トラウマが根底にあると「突然わーっ」となって昔のことを思い出す(p53)

 

 

 統合失調症の一番良い治り方は、しっかりした二重見当識をもつこと(p66)

 (病的体験の「根絶」ではない。現実的に生きていくことができればよい)

 

 

 性同一性障害の方は勇気を支えにしていることが多い(p67)

 (勇気を与えることに努め、勇気で躓くことに注意する)

 

 

 PTSDの最大のリスク因子はソーシャルサポートの欠如(p78)

 (個人同士のカウンセリング以前に、地域社会や信頼する人々が当事者をどう支えるかが大事) 

 

 

 本家のオープン・ダイアローグは、必ず2人、5年ほど経験がある家族療法家が入る(p114-115)

 (日本の実践をどうこう言うつもりはないが、だろうなあと納得。他に思うところがあるが略)

 

 

 ポリヴェーガル理論は、どこまで神経科学的裏付けがあり、どこから仮説なのか判然としないので判断保留(飛鳥井先生のコメントをブログ主の表現に変更。個人的には<新しい理論>は遠巻きにしておきたい p136-137)

 

 

 D4受容体で恐怖反応が出現するという実験がある。

 D4拮抗作用のあるセレネース少量(0.25-2T)が解離やPTSDに効果的かもしれない(p167-168)

 (薬も大事)

 

 

 

 ほかに共感について考える上で、いくつかヒントが。

 

 個人的にはトラウマやPTSDという言葉は居心地が悪いので、「過去の出来事になりきらない体験」(神田橋先生は、「経験」にならない「体験」p139 名言!!)、「そのような体験で、二次的に生きづらさが出ている状態」と言い換えたい。

 

 あくまで私個人の語感の問題。

 

 

 

 

飛鳥井望、神田橋條治、高木俊介、原田誠一

「複雑性PTSDとは何か」

金剛出版

2600円+税

ISBN 978-4-7724-1890-4