どこかの教会での演奏映像をYoutubeで見たのが最初。

 (視聴可能ですが、なぜかブログに貼り付けられません)

 残響があるので比較的ゆったりしているのですが、それでも速い。

 なのに速さを感じない(意味不明)。

 

 たぶんコラールがゆったりしているためと・・思います・・・たぶん。

 CDもしっかり3枚組。

 

 

 第一曲の低音のリズムはよくイエスの引きずった足とされますが、このCDでは「ああ、イエスさまの心臓だな」とすっと納得。

 決して「なんだか速いけど、ああ、そうか、脈なのか」という理屈っぽい理解でなく、本当に素直に「心臓かあ」と腑に落ちる説得力。

 

 

 特にソプラノ・リピエーノ。

 すっげえ上手なボーイ・ソプラノ?と思ったのですがライナーノートの名前は全員女性(確かに映像では小柄な女性が後ろに並んでいました)。

 当然なのでしょうが声質を考え、かつ揃えている。

 この部分も、きちんとした技術をもっていらっしゃるソプラノなので美しい。

 

 

 マタイは、リヒターはもちろん、クレンペラー、シェルヘン、メンゲルベルク、ブリュッヘン、シャイー、ビラー、BCJ、アーノンクール、あと思い出せない何かを持っているのですが、しばらくピションさん一枚でいいです。 

 

 

 一時期、ほぼ毎年、4月にBCJのマタイを聴きに行っていましたが、職場異動+流行り病で行かなくなりました。

 いつぞやの鈴木雅明大先生のプログラムに「ドイツ語の発音を大事にしている」とありました。確かにBCJだとSchとかchとかtzの発音(しゃ、しゅ、しょ、は、ひ、へ、つ)が強調されてドラマティック。

 

 でもピションさんは「あー」「おー」と母音が本当に美しい。

 普段はアリアを愉しみにしていますが(特にこれ↓)ピション版ではコラールが美しい。

 初めてです、こういうマタイの聴き方(私の聴き方が偏っている・・・)。

 

 

 それとイエス役のバスの方がやや高めの声。

 なので、重々しさはない(歌手はStephane Degoutという方らしい)。

 だからなのか、第一部のどこかでイエス役が「mein Vater」と歌いだした時に、どきっとしました。

 

 重々しいドイツ風なバスの歌い方だといかにも「我が父」ですが、ピション盤では普通に「お父さん」という感じ。

 改めて「そうか、mein Vaterと言っているだけだから普通に”お父さん”でもいいのか」と印象が変わりました。

 

 

 今日も仕事がしんどかった。

 こういう透明できれいな音楽で気持ちをリフレッシュします。

 

 こんなのバッハじゃないと言われてしまうかも。 

 でも、今の私には一番大事で必要な演奏なんです。

 

 

 

 

Raphael Pichon, Pygmalion 

JS. Bach Matthaeus- Passion

harmonia mundi  2022