雑誌で紹介記事を読んで、見に行きたいなあと思っていたら、いつの間にかレンタル屋に並んでいました。

 ブログのタイトルはラストシーンで主人公が言う台詞です。

 Can you guess what every woman's nightmare is? 

 かっこよかった。

 

 私的には映像が楽しめる映画でした。

 ただ内容はハードです。 

 これを見た晩、私はひどい悪夢を見ました。

 相当、こたえた。

 

 基本、コメディータッチなのですが、ラストが・・・・・。

 身体と精神の差はありますが、ニーナとキャシーが被ったことは「同じ」ということなのでしょう。

 

 しかし、あのラスト、このジャンルで初めてだと思います。

 当初は別のラストだったそうです。

 でも、監督・脚本のフェネル姐さんは、あのラストに書き換えた。

 私は秀逸な終わり方だと思いました。

 そうしないと、古くは「リップスティック」、新しくは「アイ・スピット・オン・ユワ・グレイブ」と同じ。

 それでは男に性的な意味で消費されてきたこれまでの映画と同類になってしまう。

  

 

 主演のキャリー・マリガンさん、初めて拝見しました。

 童顔たれ目さんで日本人好みでしょう。

 でも立ち振る舞いが年齢不詳のカメレオン俳優で楽しみです。

 てか、特典映像を見て驚きました。 

 綺麗なイギリス英語でした。

 調べるとイギリス出身でお育ちがいいみたいです。

 何かクラシックな物語の映画に出てほしいです。

 

 

 

 で、映画です。

 未見の方はご注意を。

 

 

 

 まずタイトルバックがかっこいい。

 さっそうと歩くキャシーの足もとからカメラが上に。

 足についた血(?)は、実はケチャップ。

 腕や口をケチャップで汚しながらホットドッグ(もちろん”ソーセージ”か”ウインナー"が挟まっている)に荒々しく食らいついている。

 分かりやすい。

 

 男たちに下品な声をかけられると立ちはだかってガンをとばすのだけど、後ろで自動車などを潰す重機が動いています。

 彼女は男に立ち向かっているように見える。

 でも、心は「押し潰されている」。

 

 

 主人公キャシーの心が空なのは、極端に様式化されて現実離れした部屋、形式化された人物配置で際立っていたと思います。

 

 

 キャシーの正式な名は、カサンドラ・トーマス。

 予言の女神カサンドラが由来。

 アポロンの呪いで予言を信じてもらえない女神。

 キャシーも誰にも話を聞いてもらえない。

 調べると、トーマスという名前の語源は、双子の聖トマスからきているとのこと。

 彼女には精神的双子のニーナがいました。

 

 

 おっさんには分からないし、てか分かると気持ち悪いですが、服装が最初、花柄のシャツ(?)だったり、丈の短い大柄な花模様のワンピースだったり、欧米の30代女性に見えない服装でした。

 ところが、だんだん模様が細かくてブルーのワンピース(?)かシャツだったけ(?)と服装が変化していたように思いますが、どういう意味でしょう。

 うちの山の神の意見を聞くことにします。

 でも、もう一回、見るのはしんどいなあ。

 

 

 

 ある男との対面シーン。

  

 男の背景には二つの長い首のツボ。

 明らかにファリックなもの。

 でもツボなので容器。

 

 キャシーの背景には大きな鉢(容器)が二つ。

 明らかに女性を意味している(鉢に植えるのが花ならそれも)。

 しかし植えてある何かは枯れて萎びている。

 もし植物が”屹立”していればファリックですが。

 

 男性と女性の象徴が入り混じったものが並んでいる。

 特にキャシー側の鉢と萎びた何かはシーンの内容とぴったりだったと思います。

 

 それから、キャシーが何を望んでいたかが、明らかになるシーンでもある。

 あそこで、女性を含めて誰もキャシーにしなかったことを、彼だけがしている。

 そして、おそらく唯一キャシーが涙を見せる場面。 

 

 

 

 可笑しかったのが「女性のつらさは分かっているよー、女性は素顔が一番だよー」と、ベタに言い寄る”フェミニスト・アプローチ”の男。

 で、ほおっと思ったのが反撃時のキャシーの台詞。

 ぺス山ポピーさんの漫画で、こういうことかなあと思っていたことでした。

 やっぱり、そうだよな(自慢げ)。

 

 

 

 凝った画面ですが”映画青年的これみよがし”を感じさせず心地よかったです。

 適度にポップにしたり、ユーモラスにしたりしているからでしょうか。

 

 残念だったのがバックに流れる歌が私の能力では聞き取れなかったことです。

 歌詞が分かれば彼女の感情をもっと追えるのだろうなあ。

 あるシーンで「トリスタンとイゾルデ」が流れましたが、あれ何だろう?

 

 

 

 個人的に厳しかったのがライアンとの薬屋さんのシーン。

 女性の皆様におかれましては、ああいう感じが理想ですか?そうですか。

 息子たちに教えておきます。

 

 

 あと「ゆっくり」は、30年前に教えて欲しかった。

 

 

 

 ラスト。

 彼を連れていくのは、台詞のない女性でした。

 そうだよな。

 

 

 

 

監督・脚本 エメラルド・フェネル

主演 キャリー・マリガン

「プロミシング・ヤン・ウーマン」2020年12月アメリカ公開、2021年7月日本公開

原題:Promising Young Woman