上野の博物館がどなかたのおかげで無事に閉鎖になり(皮肉です)、本当は子供たちと行きたいのですが我慢の日々。
仕方なく同博物館のYoutubeを眺めていたら面白そうな本が紹介されていました。
博物館は実は研究機関でもあるのですが、そこに所属なさっている研究者の方のご著書。
さっそく購入。
この本、「似た」仕事をしている私には、自分の若いころを思い出して血湧き肉躍る(?)内容。
しかし、もともとは私のようなオッサン向けではなく、表紙の雰囲気通りお子さん向けです。
感心したのが、内容が子供向けにレベルを下げるなどということを(おそらく)していないことです。
何度も書いていますが、子供は私たちが考えている以上に賢いものです。
とはいえ、リーダービリティーがとても高いのが見事。
なお、うちの子供たちは誰も関心を示さず。
我が家の子供たちは別の道に進むということで・・・・(少し寂しい。まま、心身ともに健康で、人様にご迷惑をかけない人間になってくれればいいです)。
もし、恐竜が大好きで「大人になったら恐竜を研究したい!」というお子さんをお持ちの親御さん(あるいはそういうお子さんのご親戚の方)、お子さんにおすすめしてみてください。
読書好きなお子さんなら、たぶん小学生中学年くらいでも読めると思います。
夏休み(あるのか?今年)の読書感想文に最適。
表紙は漫画(だけ)っぽいですが、中は漫画だけ、あるいは文章と漫画を混ぜるという、繰り返しますが子供の能力を信用していない内容ではありません。
大きなフォントの文章に、親しみある分かりやすいイラストだけです(↓ 写真参照、私の汚い指が入ってすいません)。
よく子供向けで(?)漫画と文章を混ぜる本ってありますが、あれ、読みにくくないですか?
たいてい本文と漫画の関連性が薄い(テーマは重なるけど内容がリンクしない)。
読んでいると、急に別の内容の漫画が割り込むので、結局、漫画を挿入している意味があまり活きてこないことが多い。
まま、子供たちが読みやすければ、それでいいですが。
さて、内容はタイトル通りです。
木村先生がどれだけご苦労なさって、学者さんになったか。
きれいごとは一切なしです。
学力とか努力だけではない(というか、それは言わずもがなの前提)。
運も大事なこと(木村先生が大学入学した時のエピソード。とんでもない運の強さです)。
人のご縁も大事なこと。
残念ながら、木村先生がなりたかった「恐竜博士」にはなれなかった。
でも、そこで不貞腐れたり、諦めたりせず、それに近接する研究を続け、今となってはその研究がとても楽しいこと。
つまり簡単に諦めないこと。
そのためにどのような勉強が必要かの具体的なアドヴァイスが。
博物館でもよく子供たちから質問されるのだそうです。
で、その答え。
これは本書をどうぞ。
純真な子供なら底意ない、しかし、ちょっと悪賢い子供なら「最短で目標にたどり着く方法」を意味している質問の意図を挫くご説明です。
もしこれが作戦なら(たぶん木村先生はそこまで意地悪ではない)、その老獪さにお見事!とニヤニヤしてしまします。
要するに現実をきちんと突き付けている。
なんでも楽な道などない、いくら好きなことでも、ということを。
木村先生のご研究内容の紹介はちょっと難しいのですが、無茶苦茶小さい歯の化石から、ある動物が二系統に分かれたことを証明なさったというものです。
拝読していて、「凄いなあ、このご研究の成果はこの後何年(もしかすると百年単位)も残り、ここにさらに知識が積み上がって、動物の進化が解明されていくんだなあ」と、ご研究とその成果の時間軸の長さを想像して、本当に感動してしまいました。
最後、第11章の後ろに、同世代研究者との対談があり、これはおそらく親御さん向けの箇所。
そこで、日本で最高峰のあの大学に在籍なさっている先生が、小学生の時に作った「プレート」をまだ使っているというエピソードは、ナイーブですが涙腺崩壊しそうでした。
自分が小さかった頃の夢を達成したということですからね(↓本書p300)。
もはや夏目漱石が亡くなった年齢を超えた私にとっては「初心」を、まだまだ将来ある子供たちには「目標」を示してくれる、いい本です
ぜひ、どうぞ。
木村由莉「もがいて、もがいて、古生物学者!!」
1700円+税
ブックマン社
ISBN 978-4-89308-931-1