兄貴ぃから、またもダブり買いしてしまったのでとCDをありがたくも頂戴。

 自分で買おうと思っていただけに嬉しかったです。

 

 ロト指揮のシューマン。

 ロトのマーラー3番は持っていて聞いたのですが、端正な演奏とはいえ、これといった印象はない・・・。

 

 しかし、このシューマンはとても素晴らしく、また「面白かった」です。

 

 

 ところで、ロトを見るとどうしてもある俳優さんを思い出してしまします。

 Wikiではなぜか空を見あげるロトさんの写真が。

(Wikipedeiaから転載)

 

 で、私がどうしても思い出してしまう俳優さんは、こちら。

 ポール・トーマス・アンダーソンの映画なんかでおなじみ

 

 

 

(Wikipediaから転載)

 Wikiからの写真だけだと分からないのですが、もっと別の写真だと激似です。

 ジョン・ライリーさん。

 映画で「ちょっと頼りないけど、誠実で信用できる友達」といえばこの方です。

 

 

 

 感想。

 1番は正直、ちょっと苦手なので、大好きな4番だけ。

 

 当初、兄貴ぃから「1番が初版だったと思う」ということだったので、何も考えずにCDを聞き始めたら、「なんじゃこりゃ!」と松田優作状態に。

 4番が初版でした。

 

 なので、演奏については、ロトの個性なのか初版の特徴なのか分からないこともあるのですが、単にメロディーや構成レベルでもかなり違いがあります。

 

 稿の違いから。

 第一楽章は出だしから違うし、序奏から第一主題へのブリッジなどまったくの別物です。

 第二楽章や第三楽章ではそれほど違いはなさそう(?)ですが、第四楽章もかなり違います。

 たとえば展開部で改訂版に比べると流れを止めるような曲想があり、ぐいぐいと前へと向かう推進力は落ちるのですが、溜めがあって、これはこれで魅力的。

 ブルックナー・ファンの私としては、なんとなくブルックナーの唐突な雰囲気の変化(交響曲2番で、自分のミサ曲の引用を突然に割り込ませるみたいな)を思い起こさせます。

 へーと思ったのが、弦だけがフーガを演奏した後に管楽器が重なっていく箇所で、おそらくフルートを、次に来るメロディーを予期するように微かにならしているところです。

 何度も改訂版(普通の盤です。私はケーゲルを聞きました)と比べましたが聞こえません。

 カットされたのかなあ、かっこいいのになあ。

 

 

 演奏について。

 まず全体に弦が後ろに引いていて、なんとなくこじんまりした印象。

 時々、室内楽みたいに聞こえることも。

 

 第三楽章のA-B-A-BのBでテンポを明らかに落としている以外に、ほとんどインテンポかと思ったのですが、面白くて何回も聞いていると、意外にテンポがゆれているようです。

 しかし、それが目立たないのが音量のコントロールがとんでもなく幅があるからです。

 ちょっとやりすぎではというくらい。

 

 でも、そのために、かっちりしていて、私の好み。

 ジャケットにはLiveとあるので実演だと気にならないのでしょうが、何度も聞くCDだと少しやりすぎ感があって、ちょっと窮屈。

 でも、聞き飽きない素晴らしい演奏。

 何しろ、その繊細さが半端ない。

 縦がずれてもかまわない、とにかく「歌う!」のミンコフスキーの対極のようで、同じフランス人なのに面白い。

 

 HMVのHPで読んだのですが、ロトは曲によって音色を考え、たとえば同じヴァイオリンでも使う楽器を変えるのだそうです!(なのでオケは同じ楽器を何種類も所有しているのだそうです)

 ということは、ロトの演奏は実演で、しかも客演でなく彼の手兵のオケ(シエクル)でないと、おそらく彼の良さ(または彼の意図)を十分に認識できないのかもしれません。

 

 

 

 演奏時間の短い第四番が、これを聞いてからケーゲルやスクロバチェフスキーの「普通」の演奏を聴くと、大らか、あるいは堂々とした曲に聞こえるから不思議。

 

 これからは、普通の演奏、ロトの演奏、普通の演奏、ロトの演奏・・・・・のヘビーローテションで聞くことになりそうです。

 

 

 ところで、私はシューマンの伝記的なことを知らないので、ライナーノートが面白かったです。

 4番の初稿での演奏は大成功だったようで、クララは結婚交換日記(?gemeinsame Ehetagebuch, couple's joint diary)に「演奏はうまくいって、何回も喝采をあびましたね。でも、ロベルトの作った曲を聴くという幸せを感じることができるのは、私だけ。誰にもできないの!」(訳はブログ主の文責)と書いていたようです。

 面白いのがクララさんのお父さんも演奏会にいたらしい。で、シューマンの日記の文章。

 「お義父さまがいらしていたよ。ちょっと滑稽なほど堂々とした態度で、僕の曲を「反抗の交響曲だな」って(略)。あの方は創造性についてはほとんどご存じないようだ。ご自分のために作曲するかしないかとお考えのようだね。お義父さまの言葉には笑ってしまったよ」(文責ブログ主)

 お義父さんとうまくいっていなかったのでしょうか。

 それより二人の仲睦まじさが微笑ましい。

 

 

 初稿についてのブラームスの意見が面白いです。

 クララさんへの手紙に書かれていたことだそうです。

 「初稿を知った者は皆、私の意見に賛同します。それは楽譜の改訂は成功といえないことです。改訂で、優雅さ、明るさ、明晰さというべき何かが失われています」(文責ブログ主)

 

 聞きなれた改訂版の方がすっきりしている(あるいは、まとまりがある)気がするのですが、ただの慣れでしょうか。

 

 でもこのブラームスの意見はロトの演奏には当てはまります。

 

 明るくて、クリア。

 私は好きです。

 

 

 

 

 
Francois-Xavier Roth指揮

Gurzenich-Orchester Koln

Scumann Symphonies 1&4

myrios classics  2020