アクション映画好きな子ども2、爆発が好きなこども3、ノーラン作品ならとりあえず観る私で、You tubeの予告編を見て、「見に行こう!」と映画館へ。
「TENET」
ノーラン作品の魅力は、よくよく考えるとものすごくアレな話を(悪口ではないです)、緻密な設定、大真面目な演出、重厚な撮り方や音楽で、「なんだかすごいものを見た」という映画マジックを体験させてくれるところです。
今回の設定の妙は、時間の逆行。
これが面白い。
本作、相対性理論そのままを映像化した「インター・ステラー」に似ています。
あの映画の設定は、最後のパパ泣かせなシーンに効いていて、当時、一人で見に行った私は、映画館で号泣していました。
今回の映画も、男泣きのシーンに時間逆行設定が効いている。
ノーラン監督、泣かせ上手!
しかし、映像の逆再生は動きが奇妙になるので、われわれ日本人にはドリフのコントでお馴染みの方法ですが(つまり、そのまま映像を流すと笑えるものになってしまう)、それを大真面目に大画面で見せる。
おそらく何テイクも撮影したのではないでしょうか。
逆再生でも人物の動きが自然に見えるように、撮り方や演出もかなり工夫したのだろうと思います。
ノーラン監督、本当にどうかしています(誉め言葉です)。
監督、これを撮りたかったんでしょう?見せたかったんでしょう?という、空港のアクションシーンと最後の戦闘シーン。
これらを、理屈でなく映像として愉しむ。
本作はこれに尽きると思います。
考えるのは後でいいと思います。
劇中の科学者みたいなお姉さんも「Don't try to understand it, feel it」と言っているし。
とにかく大画面で、映画館で楽しむべき映画だと思います。
ノーラン監督もそこにこだわったみたいだし。
しかし、本作の「もう一人の主人公」ニールさんが本当にいい。
最後のセリフ。
互いにわかったこと、わかっていること、わかっていないことが、ずれているのが泣けます。
彼はたぶん若いときにXXXとXXXて、その後、XXX、XXX、XXして、XXのXXXにXXしたんでしょう(自粛します)。
時間軸を10年単位くらいに俯瞰してこの物語を考えると、さらに泣けます。
演じているロバート・パティンソンさん。私は初めて拝見しました。
あの笑顔まで寂しげな雰囲気。
いい俳優さんです。
驚いたのが、音楽がハンス・ジマーかと思ったら違ったことです。
まったく同じテイストでした。
あと主役はデンゼル・ワシントンの息子さん(もう息子さんが主役をはる年齢なのか・・・)。
叫ぶ時のくぐもった声がお父さんにそっくりでした。
翌日、映画館で観ようと思っていたら、はやり病で観なかった「ミッドサマー」をレンタル屋で発見。
さっそく、観劇。
どんな映画かと思えば・・・・・・
相変わらず、どうかしている映画。
「へレディタリ―」とテイストは変わっていません。
関係がまったくうまくいっていない、ぎくしゃくしているのに互いにそれを認めたくない、それをなんとか誤魔化そうとすればするほど、ぎくしゃくしていく・・・・という居たたまれなくなる嫌な感じを演出するのが、この監督、本当にうまい。
怖い映像を見たがる子どもたちに私がよく言っているのが、「一番怖いの幽霊とかじゃない。人間」。
本作は、まさにそんな映画。
人間関係で本当に互いに理解できるているのか、という要素を前面に出ていると思います。
主人公とその家族。
主人公と交際している男性。
主人公と交際している男性の友達。
主人公と交際している男性の友達同士。
そして、主人公たちと北欧の人々。
相手のことを理解しているようで理解していない。
相手のことを理解しようとしない。
相手のことを理解できない。
本作でおやと思ったのが2点。
主人公の両親の寝室の壁紙や娘の写真を入れた額縁の装飾の雰囲気。
主人公がうっかり口ばしるある言葉。
主人公は、あの地に行くことを運命づけられていたのではないでしょうか。
少しだけ思ったのが、キリスト教文化圏外の祭りを不気味に描くのって、極東に住む私からすると、やや不愉快でした。
北欧を舞台にすると分かりにくいですが、アジア人かアフリカの人々の祭りであんな目にあったという映画だったら、どうだろうかと。
設定がカルト集団ということでも、どうかなあ。
アスター監督、潜在的なレイシズムに対しても、自覚的に描いているのだろうかと、少しモヤモヤしました。
クリストファー・ノーラン監督「TENET」 原題:TENET 2020年日米公開
アリ・アスター監督「ミッドサマー」 原題:Midsommer 2019年アメリカ公開、2020年日本公開