先日、子どもたちに見せたくて、家族全員で「Fukushima 50」を見てきました。

 

 映画としての出来はどうかと言われれば、具体的な感想は控えます。

 ちょっとだけ書くと、ロジスティクスやコマンドコントロールの問題など、いろんなレイヤーがあるはずですが、あまりその点は突っ込んでいない。

 あと、アメリカ、官邸、東電、現場、家族、地元まで含めて描いており、誰が悪者という単純な話に落とし込んで済む出来事ではないし、見ていてどこに感情移入すればいいかわからなくなることもありました。

 

 私にとって発見だったのが、福島第一原発の現場で働いていた人のほとんどが福島県民だったということです。

 幹部は東京から来るんでしょうけど、原発は地元産業だから、考えてみると当然ですね。

 私たちは福島の方々に助けていただいたのですね。あの時。

 

 本当に感謝にたえません。

 

 

 さて、子どもたちに見せたかったのが「ああいうことがあったのだ」という事実を知らせたかったこと。

 それから「責任をもって仕事をやり遂げた人がいた」ことを教えたかったからでした。

 

 こども3は「面白かったー」と不謹慎なことを申しておりましたが、帰宅してから「もしも爆発しちゃったら、僕たち死んじゃったの?」と尋ねてきたので、何か心に残ったのでしょう。

 クールな子ども2も途中から泣いていました。

 子供1は私の意図を理解しており「パパがいつも言っている<仕事をする>って、ああいうことなんだね」と申しておりました。

 

 考えたこともない状況に陥った時に、まず落ち着けるか。

 その上で、何ができるか、何ができないかを整理し、優先順位をつけられるか。

 できないことがあれば、次善策を思いつくか。

 自分ではできないが他人ができるのであれば、ちゃんと頼れるか。

 誰が行動し、どのような方法にするか。 

 必ず入る邪魔にどう対応するか。

 いかに緊張と疲労を緩和する時間を作るか。

 疲れてくると出てくる怒りなどのマイナス感情をいかにコントロールするか。

 謝るべきときに謝れるか。

 諦めるべき時に諦めらるか。

 「勇気」と「無茶」は違うことを認識できるか。

 

 

 子供たちに伝えたかったのは以上ですが、学んでくれているといいな。

 

 

 

 で、とんでもなく話がとんで「映像研には手を出すな」。

 

 漫画版はピンとこなくて3巻までしか買っていません。

 アニメ版はずっと子供たちと見ていて、みんなでOPの主題歌を歌っています。

 

 アニメを作る作業を描く漫画を「アニメで見せる」という、この心意気!

 

 漫画とアニメでは結構違いがあって、アニメ版は「絵が動く快感」を味わえるような動きに変更していること、絵を動かすとはどういうことかを原作以上に丁寧に説明している点が、私の気がついた差異。

 

 私がもっとも印象に残ったのが、原作では学園祭に出す作品を登場人物たちが独力で作りあげたことになっているのですが、アニメ版では原作に出てこない美術部と「打ち合わせ」、ロボット部と「打ち合わせ」・・・で作り上げることになっている点です。

 考え方、価値観、大事なことと考えているポイントが異なる相手と交渉し、自分たちのやりたいことを完成させなくてはならない。

 他人と会話をするのが苦手な浅草さんが、汗を大量に流しながら、相手を押したり引いたり、押されたり引きずり出されたりしながら、何を相手に求めていて何が不要かを一から説明しなくてはならない様子が、だいたい4-6話あたりで描かれます。

 で、求めていたものと仕上がりが違っていて、交渉にいくと逆に文句言われたり・・・・おお、あるあるだ・・・。

 

 まさに「ザ・仕事」です。

 テレビの前で思わず「がんばれ!浅草氏!プレゼンを成功させろ!」と叫んでしまいます。

 で、隣の子供たちに「これが仕事だからね。やりたいことを自由にやることが仕事でないからね」と説教です(嫌なオヤジ)。

 

 金森氏の浅草氏への説教も、アニメ版はかなり金森氏を動かして重要なシーンにしていたと思います。

 「好きなことだけをやるのではない。自分のこだわりを満足させることではない。そんなことは優先順位は低い。すでに他人を巻き込んで作業が始まった以上、自分の手を半ば離れている。そのためには、最初に声を上げた者は相応の責任を負わなくてはならない。具体的には何かを諦めること、何かを妥協することだ」という主旨(台詞はたぶん違うけど、こういう感じ)のことを金森氏が言う。

 いいセリフでした(うろ覚えだけど)。

 

 水崎さんも「自分だけ」の楽しみだった絵を動かすことが、「他人に自分の存在意義を示すための表現」なのだと自覚する。

 不覚にもちょっと涙が。

 すいません、涙腺が年齢とともに機能不全で。

 

 いい作品に巡り合えてよかったなあと思ってます。

 面白いし、色も独特できれいだし。

 

 

 それにしても浅草氏がかわいらしい。

 自分の子供たちを見ているみたいだし、自身の子供時代も思い出しました。

 

 小学生時代、友達と別れて一人になると、歩きながら「あの電柱は実はミサイルで、空から怪獣がやってくるのを迎撃する。あ、今、来た!(ホントは飛行機)、プシュー、ドカーン」とか妄想していたし、「道路は海。で、ジョーズがいる。ここからそこに落ちたら食われるからね」とか言って、道路におちないように路肩を友達と歩くとか(←ただのバカ)。

 で、きれいな石を見つけると「ああ!宝石だ!(本当はガラス片)」と地面にはいつくばって、この”石”がどうやってここにたどり着いたか妄想するとか。

 男の子あるある(設定では女子高生だけど・・・・)。

 

 コンビニ帰りに下の子供たちと、いまだに似たようなことしてますけど。

 で、お年頃の子供1は、隣で苦笑いしています。

 

 

 

 

若松節朗監督「Fukushima 50」  2020年 劇場公開

 

湯浅政明監督「映像研には手を出すな」 NHK毎週日曜日深夜 2020年~ 放映中

大童澄瞳原作「映像研には手を出すな」 1-5巻 小学館