只今、世界一周旅行中の日記のなかから、キリマンジャロ登頂期間(全13回。の予定)のものに加筆して、掲載中です。

みなさま、手に汗握っていただいてますでしょうか?
第10話までお読みいただいて本当にありがとうございます。
そして、長らく前置きしてすみません。
今日がクライマックスですパー 
ハンカチかティッシュのご用意を・・・。






2002年11月15日

サミットに立つ!

 そうしてその後も、10歩進んではゼイゼイしながらそこらじゅうの空気を吸おうと立ち止まり、マタタに叱咤されると、また10歩進んでは「チクショー、息ができないよー、何でこんなに辛いんだよー、チクチョー、たすけてー」と嗚咽し、まるで這うような状態で歩きに歩き続けて1時間後、ついにウフルピーク(5895m)が肉眼で見えるところまできた。もうあと20mくらいか・・・。

 そういえば・・・。南米で知り合った"新婚旅行がキリマンジャロ登山”だったという山屋夫婦パッカーのダンナさんが、この地点で感極まってピークまで猛ダッシュしたら、登頂したとたんに気分が悪くなりゲーゲー吐いちゃったから気をつけてね、と教えてくれたことを思い出した。ハハ・・・私は・・・全然大丈夫だ。そんな余力も気力も、カケラも残ってなーい。

 一歩一歩、ただ足を前に出すだけ。そうすれば、いつかサミットに着く。辛さも苦しみも、そこで取り除かれるんだ。そう信じること以外、余計なことは考えない!乗り越えるのは自分だけ・・・
 




フハーーーーっと深く息を吸った。





私はついに、キリマンジャロのサミットに立った・・・




 
こんなところ、私が来るような所じゃないと直感した。だーれもいない、アフリカの最高地点にいるという、空恐ろしい自分の存在。ビビリながら周りを見渡そうとすると、太陽が祝福してくれるかのように深くどんよりした雲を取り去り、一瞬だけ青い空が開けた。サンサンと陽が身体にふりそそぐと、すべてが幸せに思えた。





「ぐわあ 死んだー」





 かすれ声が出た。私はピークの看板前でへたり込んで笑った。マタタはそんな私をカメラに収めたあと、少し離れたところで岩に腰掛けながら気持ち良さそうに一服していた。奴は、人間か・・・・?この酸素の激薄(地上の50%ほど)なところで一体どういう肺をしているんだ?わけがわからなくなってボーッとしてる私にマタタは、「一緒に 写真を撮ろう」、と言ってくれた。岩場にカメラを置き、タイマーをセットし慌ててサミットまで駆け上がって撮った一枚は、みごとに、駆け上がる途中の2人の姿を残していた。そう、空気が薄くて、タイマーのわずか10秒ほどの間に振り返ってポーズをとる余裕などないのだ。このマタタでさえ・・・。




お稽古の極み

私とマタタの唯一のツーショット。
現像してあとから夫に大爆笑されました。




 もう一枚撮り直そうとしたとたんに、嘘のように晴天が吹雪に変わった。すぐに下山しなければ危険だと、マタタは言った。達成感も余韻もじっくり味わうことなく、これからの下山の不安がよぎった。マタタは今までにもまして厳しい口調で「もう ゆっくり歩くな。止まるな」と繰り返し言った。ついさっき倒れそうになりながら登ってきた道を一心不乱に駆け下りる。なんとギルマンズまでたった30分で戻っ た。足全体の感覚が無くなった。足がもつれるのでマタタに抱えられ、半分引きづられながら下る。ちょっとでも休むと、ゲキが飛ぶ。アラレのような硬い雪が顔にバシバシ当たる。ブーツが何度もゴツッと岩に当たると腿の付け根までズキーンと激痛が走る。我ながらこの試練に心から泣き叫びそうだった。



助けて~~あせる



た、助けて~~あせる



ほんとに、助けて~~あせる




 死にもの狂いで戻ったキボハットでは夫とアシスタントガイドが待っていた。夫は、私とマタタが長時間戻ってこないので、登頂できたか、というより私の生存ドクロ自体を半分諦めて覚悟していたようだった。だから驚きようは尋常じゃなかったけれど、私は何よりまず出されたスープとパンを夢中で流し込んだ。食べ終わるとすぐ出発。ホロンボハットまで今日のうちに4人で下山しなければ高山病の症状が悪化する危険にさらされる。疲れ、眠気、空腹に耐え、真っ暗闇のなか約2000mの下り道を何時間も歩き続けやっとの思いで二日目に宿泊したホロンボハットに到着。もう21:30pmになっていた。ハットは静まり返って誰もが就寝していた。
 
 そぉっとハットに入るとミンが眠っていた。でも気配に気づいたのかミンが声をかけてくれた。昼ごろから次々と下山してくる一団のなかについぞ私たちの姿が現れず、ミンはとっても心配してくれていた。感動の再会ドキドキあせる 「行ったよ!二人ともピークまで行ったよ!」「おめでとう!おめでとう!大変だったの?こんなに時間がかかって。」そう、死ぬ思いだったよ。22時間の死闘の末、よく生きていたなーと、自分でも思った。


さらにウレシイ音譜ことが。


遅い時間なのにクッカーが夕食を用意してくれた。
その美味しかったこと!!!
特にスイカスイカいっぱい
水分が身体中に染み渡るってこんなに気持ちいいのか・・・。一度スルメになった人だけが味わえる至福ですな。



空腹が満たされて、空気も吸えて、何より温かく眠れる~ラブラブ!とハットに戻ったあとの記憶は無く、泥睡した模様。キリマンジャロを征した喜びを、夢のなかでやっと味わったんじゃないだろうか。






(日本を出発してから508日目)


つづく・・・




cf.映像でみると雰囲気がわかるYouTube-イッテQ!イモト キリマンジャロ登頂プロジェクトはコチラからどうぞ→