リンゴは、種子で繁殖すると親と異なる性質をもった子孫が出てくる可能性があるため、接ぎ木などの栄養繁殖を行います。植物の一部を切り取り、そこから再生させる方法です。リンゴの『ふじ』も栄養繁殖で増やされたもので、いわば遺伝的には同一のクローンといえます。
リンゴの栄養繁殖においては、病害虫に強かったり、増殖が容易で成長がよい台木を活用して接ぎ木をします。リンゴではバラ科ではあるが、リンゴではないマルバカイドウMalus prunifoiaが多く使われてきました。
これは、カイドウの仲間ですが、マルバカイドウではなくツクシカイドウMalus hupehensis です。中国原産ですが、日本では大分県と熊本県の一部にしか見られず、それもほぼ野生絶滅したとみられていました。最近、大分県で一部が残っているという報告があったものです。ただ一部は栽培環境下で維持されてきており、この画像の個体も、秋になって赤い実をつけています。
おいしいリンゴも、一般には知られていないのですが台木となる植物マルバカイドウが必要です。品種改良においても、大きい遺伝子のプールから、有用な遺伝子を探し出す必要があります。今は必要なさそうに思える植物、動物、微生物であっても、もしかしたら、いつか必要になるかもしれません。誰も、この植物は必要ない、この生物は必要ないなんて言い切れないのです。私たち大人も、子どもたちも、どんな生き物であっても大切である、大切な地球の仲間であるという理解ができるようになりたいものです。
