タバコの葉に含まれるニコチンには依存性があり、一度、喫煙の習慣がつくと、禁煙は難しいのです。以前は、家庭でも、食事中でも、乗り物の中でも、会議中でも、タバコを吸う人がいて、それが普通だったなどとは、今では信じられませんね。しかし、タバコの健康被害が知られるようになり、喫煙者は減っています。一方、農業としては、かつては畑で栽培する葉タバコは大切な作物の一つでした。そして、神奈川県秦野市は、鹿児島県(国分)や茨城県(水府)などとともに、葉タバコの有名な産地でした。

 

 私たちはインフルエンザウイルスやコロナウイルスなどのウイルスに感染して病気になりますが、最初に検出されたのは、タバコモザイクウイルスというタバコの葉に感染するウイルスでした。私も、ウイルスの研究をしているときは、試験植物としてポットで複数の品種や種のタバコを栽培して利用していました。秦野市にはJTの前身である日本専売公社の秦野たばこ試験場があったので、そこから多様なタバコの品種の種を分譲してもらっていました。また、インドネシアのタバコ生産地でウイルス病の調査をしたこともあります。

 

 秦野市のタバコ栽培は1984年には終わり、現在は作付けされていませんが、歴史を偲ぶ「たばこ祭」、今年は今週末に開催されます。そのため、小田急線秦野駅には、葉タバコが展示されていました。

 花も咲いています。トマトやジャガイモなどと同じくナス科、そして南米原産で、スペインに伝わり、さらに世界に広がった植物です。タバコの害は明らかですが、歴史的な視点から考えると、興味深い植物です。