" 「本当は終わりたくなかったみたいな顔、すんな」「え……」「あんなヤツのことは、もう忘れろよ」
「……」遥希との恋が終わって、傷ついたのは私のはずなのに。どうして、甲斐の方が辛そうなのだろう。こんなに苦しそうな甲斐の表情、初めて見た。「私だって、早く忘れたいよ……でも、そんな簡単に気持ちを切り替えるなんて出来ないの。ついさっきちゃんと別れたばかりなのに、何もなかったような顔なんて私には……!」思い付くままに、言葉を紡いだ。それでも甲斐なら、受け止めてくれると思っていた。親友として、励ましてくれると思っていたのだ。甲斐は掴んだままの私朱古力瘤手術の方へ引き寄せた。その力は想像以上に強く、引き寄せられた私は、甲斐の体にもたれかかるように倒れ込んでしまった。「ちょっと、何するの……」顔を上げると、至近距離に甲斐の顔があった。一瞬、二人の視線が絡み合う。その次の瞬間、私は甲斐に唇を奪われていた。「ん……っ」何が起きているのか、すぐには理解出来なかった。甲斐と唇を重ねているこの状況を、理解したくなかった。"" こんなの、あり得ない。いくら甲斐が酔っているとはいえ、こんなこと友達同士でしてはいけない。それなのに、どうして私はこの唇を拒絶出来ないのだろう。気持ちいいなんて、思ったらいけない相手なのに。「はぁ……っ」
甲斐が私にしたキスは、ただ触れるだけのものではなく、舌を絡めとる情熱的なキスだった。糸を引き、離れる唇。私はその隙に、甲斐に言葉をぶつけた。「甲斐、どうしてこんなこと……!」「七瀬は、俺が相手じゃ嫌?」甲斐に熱い視線を向けられ、私の胸の奥が大きく揺さぶられた。今まで感じたことのない感覚に襲われる。こんな甲斐を、私は知らない。「嫌とか、そういうことを言いたいわけじゃなくて……」「俺は前に言ったよ。後は、お前次第だって。……もう限界なんだよ」甲斐の言葉の意味を理解する前に、甲斐の舌が私の耳を優しくなぞる。それだけで私は快感を感じてしまい、身体を仰け反らせた。「ねぇ、こんなのダメだよ……」「どうして?」「だって私たち……」友達なんだから。そう言おうとしたけれど、言葉にならなかった。「あ……っ、やぁ……」甲斐の手が私の胸元に届き、服の上から揉まれていく。直接肌に触れられていないのに、私の身体は敏感に反応してしまう。感じている場合ではないのに、身体は自分が思っているよりも正直だった。"" 「今は何も考えなくていいから」聞き慣れたはずの甲斐の声が、まるで別人のもののように感じる。甲斐の手が、服の中に潜り込む。肌に触れ、その手で私の下着を外し、胸の膨らみを指で弄ぶ。「や、甲斐……っ」「七瀬……俺だけを見て」いけないことだとわかっている。でも私は、甲斐の優しさに甘えてしまった。遥希にずっと触れてもらえず、自分でも気付かない内に欲求不満になっていたのかもしれない。甲斐に与えられる快感に、飲み込まれてしまっても許されるだろうか。甲斐の熱い舌が、胸の膨らみの先端を転がす。私は必死に声を我慢しようとしたけれど、押し寄せる快感に負け喘いでしまう。「あ……っ、や、甲斐……っ」「本当に嫌なら、俺のこと突き飛ばして」甲斐は力ずくで私を抱こうとしているわけではない。私が彼の身体を押し返せば、きっと本当に止めてくれるだろう。甲斐が、強引にこんなことする人ではないことは、私が一番よく知っている。それなのに私は、甲斐を突き飛ばせなかった。この快感に身を委ねてしまいたかった。何も考えず、求められる悦びに酔いしれたかったのだ。"