思い返せば
昔から小さな幸せを見つけるのが得意だった
空でお昼寝中の ぷかぷか綿雲
木陰でのんびりリズムを刻む 名も知らぬ花
信号待ちで並んだ 赤ちゃんの笑顔
目にするだけで幸せになれるものは たくさんあった
幸せになるための ‘プチ努力’ も嫌いじゃなかった
毎朝必ず会う やたらと大きい音を立てるお姉さん
しんどいな・・好きなところ見つからないかな・・と観察し続けてみると
ひょんなことから 動物に優しい人だと分かり
愛情を感じるようになった
悲しみを見つめることも それほど苦にならなかった
小さな誤解が生まれて 悲しみが押し寄せた時
相手が自分に伝えたかったことの方に目を向けてみる
誰もが互いを理解しようと 心が伝わることを願い
向き合っているはずだから
入口が同じに見えても
動機が違えば 誤解はすぐに生じる
自分は本当に相手の言葉の真の意味を理解出来ていただろうか
自分の伝えたいことにばかり気を取られていなかっただろうか
もしかしたら
自分の悲しみよりも 相手の悲しみの方が大きかったかもしれない
そんな風にして
悲しみは 慈しみへと変わっていった
子供の頃から 「素直だね」 と言われることが多かったのは
苦労知らずで 愛情にも恵まれていたからだろうか
何故だろう
幸せなのに
幸せそうにも見えるのに
いつも 生きている気がしなかったのは
ある時
天使に出逢った
その天使は 孤独と戦っているように見えた
懸命に羽根を広げ 人々を救おうとするその姿に
遠い記憶が蘇った
美しくて 儚げで ・・
ふと 気付けば
やさしい表情を浮かべた天使から
「忘れ物ですよ」 と
箱を手渡された
箱の中に
小さなあなたがいた
今 分かった
あなたが天使を連れて来てくれたんだって
長い間
閉じ込めていて ごめんね
苦しかったね
とても
寂しかったね
知らなかった
いつも あなたが 私を守ってくれていたなんて
あなたを置き去りにしたままで
私 本当に生きていなかったんだ
もう
大丈夫
ふたり一緒の時計が 動き始めたから
あなたと私では 歩幅が違うけど
小さなあなたの方が
たくさん歩いている分
きっと 私よりも大人なんだよ
だから
もしも また
幼い私が あなたを忘れそうになった時は
小さなそのぬくもりで
そうっと教えて
‘ 私は いつも ここにいるよ ’ って
さぁ
そろそろ夜が明ける
鼻歌混じりに
ふたり
歩き始めよう
今日は いいお天気だね
