みなさま

最終回、第100回ローカルデザイン研究会は、1月26日に、日本デザインセンターPOLYLOGUEで、新潟県柏崎市高柳町から春日俊雄さまと小林康生さまをゲストに迎え、

約100人の参加者が熱心に耳を傾ける中で、深い感銘を与えて終わりました。

気持ちが離れると風景が乱れる。

風景といっても便利さにはかなわないが、人生の岐路に立った時、風景に慰められる。

現代人は五感がなくなり、ほんとうの意味での暮らしや美がわからなくなっている。

山の中に暮らし、農業や紙漉きなどで営み、山の暮らしの価値を掘り下げ、村の風景を背景に暮らしている人の美しいこと、最終回にふさわしいお話をありがとうございました。

研究会のさいごに、デザイナーの原研哉さまから励まされるご挨拶をいただき、感謝申し上げます。

ゲストのみなさん、参加者のみなさん、学生のみなさん、ありがとうございました。

おかげさまで、ラストの第100回まで楽しく終えることができました。


かつて研究会の運営を担ってきたゼミ生やさまざまな大学のOB・OGも集まりました。

懇親会では、OGの駄賃場桃子さんやOBの神田太郎さんが司会を務め、第1回のゲストの水戸岡鋭治さまからご挨拶をいただきました。

全国から人が集まり、地域とデザインの関係を学び、さらにネットワークを築けたことへの感謝や研究会の存在価値への評価などいただき、続けてきて良かったなと実感しました。

OB・OGにとって、大学生活で一番いい影響を受けたと、若い人たちのサプライズの演出もあり、ほんとうに楽しい会になりました。

若い人の成長を見て、教育の仕事に着けたこと、良かったとつくづく実感しました。

研究会を一緒になってきました、戸矢晃一さん、中根正義さん、斉藤哲也さん、ありがとうございました。

毎月の例会は終えますが、研究会自体は解散しないと決めています。

これまでの活動を支えていただいたみなさまに、心から感謝申し上げるとともに、今後の活動にも積極的にご参加ください。


ここに、さいごのあいさつを少し長くなりますが、書かせていただきます。
読んでいただければ幸いです。


【第100回ローカルデザイン研究会のあいさつ】

今日、ローカルデザイン研究会が100回を迎えることができたのは、ひとえに、みなさまの支え励まし、ご協力のお蔭です。

まず、気持ちよく講師を受けていただきましたゲスト、そして受付や記録を担ってくれた学生、さらに一緒に担ってくださった仲間や参加者に、心から御礼申し上げます。


会は、2003年、友人、経済産業省地域経済産業政策課長の山本俊一さんから、研究会を起こしましょうと提案され、山本さんと私が研究会発起人となり、みんなで情報を共有しようと、ご案内リストに20人の方にメールしたのがスタートでした。


研究会の趣旨は、このようなものでした。

ローカル(=コミュニティ)は限りなく面白く、興味深いものです。

そこで、地域の現場の生の声を直接知りたいと考えている人が集まり、互いに意識を高めることができるような研究会を創りたいと思います。

(中略)

地域の人にとっては、自分たちの地域への思いや考え方を伝え、発信する場、さらには、地域の活動に対する理解者や協働者と出会えるネットワークの場となるように、官庁、大学や研究機関、マスコミなど様々な仕事をしている人にお声をかけながら、試行錯誤で運営していきたいと思っております。

また、これからの次代を担う若者が地域のことを学び、地域で活動するチャンスの場となるように、学生も参加します。

この研究会が、東京圏で地域を結ぶ、コミュニケーションや対流の場となることを期待しています。


この趣旨は第1回から最終回まで、貫かれたと思います。学生は、法政大学、山梨大学、静岡大学など30もの大学から学生の参加をいただきました。

第1回は、2003年4月25日、ゲストは優れたデザインで話題のJR九州などの車両を手がけています、ドーンデザイン研究所代表取締役のデザイナー水戸岡鋭治さんでした。


案内を振り返って見ますと、自分も10年、みなさまも10年、みんな10年若かった。

10年の意味や重み、時間は止まらないし、戻ってこない貴重な時間や出会い。

記録や感想文を読むと、多くの学生がこの研究会から巣立っていったことを、その学生時代の顔が浮かんできます。

若者は、研究会で心を開き、意識しない中で広い社会観や世界観を身につけ、いまではそれを基礎に社会で活躍しています。


振り返ってみますと、ゲストに来ていただいて、亡くなられた方もいらっしゃいます。思い出したいと思います。

第10回小田孝治さま、第26回小俣寛さま、第33回の市川美季さまに、心からお礼とご冥福を申し上げたいと思います。


研究会の会場は、電力中央研究所、日本政策投資銀行、毎日新聞社毎日ホール、法政大学市谷キャンパス、東京しごと財団、ちよだ中小企業センター、女性と仕事の未来館、東京都中小企業振興公社、そして今日の日本デザインセンターなど、お貸しいただいた会場関係者にお礼を申し上げます。

コンサートもおこないました。

第64回の波木克己さまは、相田みつを美術館で、第85回の大嶋義実さまのフルートと斎藤明子さまのギターの演奏は楽しかったですね。


東京での研究会だけでなく、宮城県気仙沼市の畠山重篤さま、岩手県一関市の世嬉の一の佐藤さんご一家、遠野市の多田克彦さまを訪ねる、2009年第70回の東北ツアーや、長野県駒ケ根市中沢地区、山梨県甲州市勝沼町での調査合宿も社会人と学生が一緒になって行いました。

迫田司さんや梅原真さんの出版記念の講演とパーティなど、多彩な活動も行いました。


2011年3月11日の東日本大震災は、ローカルデザイン研究会としても、東北とはかかわりがあり、心を痛めました。

何かできないかと考え、現地から情報を集め、みなさまに発信しました。

ネットワークから約200万円もの義捐金が集まり、ドイツからおもちゃも届きました。

さまざまな支援のひとつとして、笑顔をデザインした「はがき商品券」を作り、いい支援だと話題になり、約600枚(300万円)を販売できました。

さまざまなつながりから、我々のできることをしてきたつもりです。


研究会の懐かしい思い出が次々と浮かんできます。

学生が感想文に書いていますが、人が生きる上で、大切なものは故郷、家族、思い出を起こさせるものと、受付をしながら、一生懸命メモを取っていた学生がいました。

その日の夜中に記録や感想をまとめて送ってきた学生、他大学の学生と社会人と楽しく過ごした懇親会、などなど。

懐かしいという感情は人間だけにしかないといいます。


みなさん、この研究会は、これまで述べ約8000人を超える参加者がありました。

100回の節目を迎え、寂しくなりますが、この研究会の幕を閉じたいと思います。

改めまして、これまでお話しいただいたゲストのみなさま、参加者のみなさま、歴代学生諸君、友情や励ましを得て、楽しく充実した研究会を続けることができました。

ほんとうにありがとうございました。心からお礼を申し上げます。


東日本大震災の被災地支援のために、会に寄せられた義捐金もまだ残っています。

過日、東北の被災地を訪ねました折、仮設住宅に住まいし、新しい地場産業に取り組む方からのお話も聞かせていただきました。

被災から2年がたち、これまでの経験や現在取り組みなど、生の声を多くの人に直接届けたい、場を作ってほしいとの声もありました。

義捐金を活用し、東京で被災者の直接の声を聞くことができる場を設け、体験の記憶や新しい挑戦などのお話をしていただき、少し東京で気分転換をしていただこうとも考えています。

また、若いデザイナー3人が、地域の人と一緒になり、モノだけでなく地域の志や自然、風景、営みなどすべてにわたって、デザインの持つ可能性を可能な限り展開し、地域再創造に取り組んでいる北海道清里町の例も生まれつつあります。

こうした若い人たちの挑戦を発表できる場を設けたらどうか。

希望のある未来を創造していく若者に、心から期待しています。

若いということだけで、われわれよりも時間や可能性は限りなくあり、素晴らしいこと。


みなさまからいただいた持続希望の声にも、耳を傾けていきたいと思います。

少し模索状態が続きますが、忌憚のないご意見などぜひいただきたいです。


以上が、お礼のあいさつでした。

長くなり、申し訳ありませんでした。


研究会以後、メールで、「終わりは始まり」、「第101回はいつでしょうか」、「いつまでも続けてほしかった」など、温かいお言葉をいただき、心より感謝しています。

今後、みなさまからのご意見を聞かせていただき、ローカルデザイン研究会をどのように活動させてしていくのか、ともに考えたいと思います。


さいごに、みなさまのご健勝と幸せ、ますますのご活躍を願い、ローカルデザイン力から日本が明るく楽しい、尊敬される国になることを願っています。

ほんとうに、ほんとうに、みなさま、ありがとうございました。


2013年2月吉日

鈴木輝隆