日暮里周辺を歩いてみて

 

江戸川大学社会学部ライフデザイン学科 3年 川島奨平

 

「活気のある商店街」

 平日の昼過ぎに見て回ったにも関わらず、人の通りは絶えず混んでいた。おそらく地域の住民もたくさんいたであろう。揚げ物屋で揚げ物を購入した時に、前に並んでいた中年の女性が親しげに従業員と話しているのを見た。他には主婦らしき女性が二人で買い物をしていたことからも、地域の住民であろう事を察することができた。

 しかし、それだけではないようであった。町を歩いている人の中には、若い女性同士で食べ歩きをしているであろう様子や、物珍しそうに商店街の商品を見ている人なども目立った。揚げ物屋や、甘味所、などもその地域でしか味わえないという「売り」で食べ物を売っている。テレビなどのメディアもよく取材に来るようで、その通りに来た芸能人が食べ歩きをした様子を撮影した写真が、店先に飾ってある店舗が多く見られた。

 メディアの影響が大きいというのもあろうが、観光客が多いというのも推測できた。メディアが如何に売り込もうが、魅力のない場所には人は立ち寄らない。何かしらの魅力があるからであるからであると思った。

 

「狭い小路のある町並み」

 観察しながら歩いていると、車が入れそうもないような狭い道がよく目立つ。とても生活感があり、町並みとして絵に描かれるような雰囲気を持ったとおりであった。車の通れる道を曲がると、すぐそこにアーケードのある小路があり、光が入らないため若干暗いが、家と家の間にアーケードがあるため、人の暮らしている様子がよく伝わってくる。

ある一つの通りでは、中にせんべい屋があった。曲がってみて、漸く気づくような位置にあるのだが、昔ながらのせんべい屋といったような感じで、丸いケースにせんべいが詰めてあり一軒屋の一階を利用した造りであった。

車が通れないからこそ生活感が阻害されずに、表にでてくるものがある。商店街もチェーン店ばかりが集まったような形式のものではなく、個人経営のお店が建ち並ぶ形式の昔ながらといえば雰囲気に合うようなものに人はひかれる。上にも挙げた周辺にあった商店街にも同じで、生活感が見えることによって、人と人との繋がり、それに伴い深く景観にも現れてくるのではないかと思う。

 

「学生がいる地域」

 日暮里周辺の町並みを見て歩いていた中で、学生が行き来するのを見受けられた。商店街にも学生のグループが複数歩いていた。このグループは地元の学生かどうか確認をとっていないため不明だが、東京芸術大学が近くにあることもあり、芸大生らしき集団もいた。

 老若男女それぞれがいることで、多様な活動が見られると思う。その日の夕飯のおかずを購入する主婦がいたり、食べ歩きをする学生もいたり、ただ散歩をするお年寄りがいたり、そうした風景が街に彩りを与え、活気があるように見える。

 

「開けた店」

 商店街や通りを歩いていて感じたのは、店が開けていて、客と交流できるような造りのものが多かった。ショーケースを通りまで出して、そこで接客をする。店の外で買い物ができる構造であった。店の通りまで商品を置いてあり、店の中まで見通せる。何か目ぼしいものが外からでも確認でき、中に入りやすい。買い物しない場合には、やはり冷やかしかと思われるかもしれないと考えてしまい、入りづらいかもしれないが、店の従業員とも会話が生まれやすいと思う。入り口に扉がない店が多かったのもそう感じる要因だった。

 歩きながら商品を見ることができるし、外で品物を買うことも可能。外での買い物ができることで、買い物している様が外でも見られるのが町の雰囲気を作っている。店内での買い物と違い、歩いている人からもやりとりが見えるので安心感もあるとも思う。活気がある様が明らかに見えてくる。こういった開かれた店があることにより、コミュニティも生まれ、活気づいていくのであろう。

 

「昔ながら。が残っている地域」

歩いた道を思い返してみると、やはり全体的に古い建物が並んでいたと思う。年代などはわからないが、少なくとも最近作られたようなものでない事は確かだと言い切れるような古さである。もちろん時代の流れもあるであろうし、古い建物と新しい建物が並列している場面も多かった。しかし、寺や墓地などは、話に聞いたように古くから守られてきたものが、今もなお受け継がれているということが感じ取れた。

商店街の建物も古い建物があった。よく見ていると、古い建物に似せた比較新しい建物も確認できた。町並みの景観を保護するには、とてもいいと思う。古いものを残しつつも、時代は流れてしまう。さらに古いものは維持することが難しくなっていくであろうが、古いものを大切に守っていこうという考えによって、町並みはできあがっているようであった。

 

感想

日暮里から上野まで結構時間をかけて歩いて、“キーワードを見つける”という観点からいろいろ見てまわった。“キーワードを見つける”というのを念頭に置いて歩いたため、普段見ないようなところまで、視点を置くことができたかと思う。町をただ歩くだけでなく、目的意識を持つことによって、ものの見方や考え方も若干変わってみていたようである。

日暮里は意外と近くにあり、何回か訪れたこともあった。しかし、散歩程度に思っていて、深く見て歩くことはなかった。ただ寺が多いだけの何もない町かなと、何も考えずにそういう町とだけしか見ていなかった。

今回歩いてみて、普段何気なく歩いている、通りすがっているところにも目をやることで、新しい気づきもあるかもしれないということを思い知った。