江戸川大学ライフデザイン学科2年 伊藤華緒里

 

◆ミツバチプロジェクト

今回、お話を伺った田中淳夫さんは、“ミツバチプロジェクト”の副理事長を務めている。

ミツバチプロジェクトは、ビルの屋上45Mの場所でミツバチを飼うというもので、2006年春、銀座の周辺で働く有志たちが集まり、銀座を活性化させたいという考えから始まった。

ボランティア活動は毎週されており、ボランティアに来た人たちは、2~3時間働いて、ハチミツ入りの小瓶を一つ持って帰る。その「小瓶がほしい」と、毎週毎週ボランティアに参加する人が増えているという。テレビ朝日、朝日新聞などの人々も参加し、メディアを通して、多くの人々にこの活動が知れ渡っている。

 

銀座はミツバチにとって最適??

ミツバチは環境指標動物といって、少量の農薬でも死んでしまう生き物である。これはイコール、環境が良くない所ではミツバチは生存できないということを意味する。ミツバチはとてもナイーブな生き物なのだ。つまり、そのナイーブなミツバチたちが元気に飛べる環境は、人間にとっても素晴らしい環境だということに繋がる。

 このようなミツバチたちは、都会のど真ん中“銀座”で果たして生きていけるのか。また、ハチミツを採取することが可能なのだろうか。

そんな悩みは無用であった。ミツバチたちが蜜を運べるのが約4キロ四方と言われており、その範囲の中に浜離宮、皇居、日比谷公園、街路樹などがある銀座は、ミツバチたちにとって、とても住みやすい、良い環境であった。

 

ハチミツの行方

 ミツバチたちが働いて採取することの出来たハチミツは、一体どのように使われているのだろうか。

 銀座でしか手にすることが出来ないという仕組みをとった、銀座のハチミツ。ただ単にハチミツを売るだけでなく、銀座のバーやクラブの人にカクテルを作っていただいたり、洋菓子、和菓子などにハチミツが利用されている。またハチミツのみならず、蜜蝋は銀座教会へ寄付させて、蜀火礼拝で聖壇に灯っている。

 

様々な活動

近年ではハチミツを売ったり、様々な料理で利用してもらうだけでなく、“食の情報発信”を目的とした活動を行っている。“あなたの美味しいが日本の地域と食を元気にします”をスローガンに、人と自然の共生について銀座から様々な地域へメッセージを発信。この活動に花が咲き、職業の違いを超えたコミュニティが実際に作られている。

また、「コミュニティ作りをわが町にも・・・」と、ミツバチプロジェクトを始めたいと声を上げる人がいるという。 そして今年、品川区の中延商店街の屋上、多摩センターの多摩美術館屋上でもミツバチプロジェクトが始まった。この他にもプロジェクトを始めたいという地域は多々あり、これから様々な所でミツバチたちが大活躍していていく予定だ。

 

感想

私の中の“銀座”は、道の両端を高級ブランドで埋め尽くしている大人の町というイメージがとても強かった。また東京ということもあり、頭の中で“地域活性化”という言葉と“銀座”を繋げることが出来なかった。しかし、ショッピングで銀座を訪れる人が大勢いて賑わっている、そのような状況だからこそ、新たな町の悩みが生まれるのだと感じた。それは東京だけに限らず、全国どこの町にも該当するであろう。

そのような銀座は、ミツバチプロジェクトを行うことで新しい魅力、一面を手にしたに違いない。海外ブランドだけでなく、緑にも恵まれているということ。何かを始めるとき、銀座にはそれを活かせる場と人力があるということ。そして何より、様々な人との出会いの場になるということ。これらは、ミツバチプロジェクトに関わっている人々が最も強く感じていることかもしれない。

また、上記のようにボランティアに参加する人々が毎週増えているのは、ただ単にハチミツ入りの小瓶が欲しいからだけでなく、田中さんを始め、ミツバチプロジェクト関係者の方たちの人柄が人々を惹きつけるからではないかと感じる。田中さんがおしゃっていた“遊び”を楽しむことは、他の人をも夢中にさせてしまうほどの影響を与えるのではないだろうか。

これからさらにミツバチプロジェクトは活動の幅を広げていくことだろう。多くの人々がさらに、銀座、またミツバチプロジェクトの良さを感じられたらと思う。