江戸川大学社会学部ライフデザイン学科2年 伊藤華緒里

 

◆バッタクラブのはじまり

今回、お話を伺った川端輝子さんは、栄養士の資格を取るものの、その職に就くことはなく、歯科助手として働いていた。歯医者で働いているとお子さん連れのお母さんに接することが多く、虫歯や歯並びについての質問を受けることが多々あるそうだ。

例えば、「甘いものを食べさせていないのになぜ虫歯になるの?」という質問。これは、せんべいをおやつとして食べさせていても、お腹に入ると砂糖になり、甘いと感じないとはいっても砂糖を食べているのと変わらないということが原因になる。また、歯並びの問題は、「朝ごはんを食べる、食べない」の違いが、あごの発達に影響するのだという。

このように歯に関する様々な質問に受け答えしていたものの、「食べさせなきゃ虫歯にならないよね?」という悲しい質問も歯医者に来ていた子供のお母さんに言われたことがあるという。確かに、食べさせなきゃ虫歯になる確率は確実に減るであろう。しかし、それでは私たち人間に歯が存在する意味がない。

私たちは食事中、お茶を飲む。お茶を飲む頻度の高い子どもほど、栄養バランスが良いと言われている。しかしそれはなぜなのだろう。それは、お茶は人と人とを繋ぐ働きをしているからと言われている。そんなお茶のような働きをするものになりたいと、川端さんは言う。

“食べることで喜びや幸せを感じてもらいたい”と感じたそうだ。

職業面では全くと言っていいほど内容が違う、歯科と栄養士。しかし、上記からも把握出来るようにこの2つの職業は「食べる」ということに共通面がある。歯科と栄養士の繋がりを経て活動が出来るのではないか、食べることの素晴らしさを人々に感じてほしいと思い立って「バッタクラブ」の活動が始まった。

 

◆様々な連携

バッタクラブは様々なところで活動を行っている。牧場で体験を行った時は、生きている牛と子供たちとの触れ合いの場を設けたそうだ。

そこで牛と触れ合った時、子どもたちは牛が「温かい」といって驚いた。また、乳しぼりをすると乳が「温かい」ということにも驚いたという。驚いた原因は、牛乳は冷蔵庫で冷たく冷えているもの、というイメージが強く植えつけられていたせいである。

また、牛は年をとると乳が出なくなり、いつの日か殺される。それは肉になって私たちのお腹の中へ入っていくということだが、肉になった後の牛の皮はランドセルを作るのに利用される。それを子供たちが知ると、「これからはランドセルを大切にする」と言い始めたそうだ。

牛は温かいという、予想外の出来事に驚きはしたものの、生きている物に触れたことによって、命の大切さを学ぶことが出来た。

田んぼでの体験では、お米を子供たちと一緒に育てた。お米を育てるので重要なのがカモである。カモは害虫を食べる役割を果たし、また最終的には食用にもなり一石二鳥なのだ。しかし、お米を作るにあたって、触れ合ってきたカモを殺して、食べるということは子供たちにとっては残酷に映ることであろう。しかし、これらの行為は生きるために仕方のない行為であり、この行為を行う以外生きる術がない。このようにある意味残酷な食育教育をすることも必要であると川端さんは語る。

 このような体験を経て、“食べる”ということは自分一人ではどうにもならないということを子供たちは感じるであろう。生産者がいるおかげで、私たちは食材を得ることができ、また家族がいるからこそ、楽しい食事をとることが出来る。

 

◆感じたこと

日本は食べることに関して、何不自由することがない生活を送ることが出来ている。しかし実態は、輸入ばかりに頼り、さらに、食材を廃棄する割合が世界一高い国といわれている。日本の未来、また全世界の未来は食糧難に悩まされるかもしれない。しかし、私たち人間は、生きるために“食べる”という行為を欠かすことは出来ない。

このような時代の中で、バッタクラブのような活動は子どもたちだけに関わらず、大人たちにとっても重要なものに違いない。限りある食糧がどれだけ大切なのかに気づき、また、農産物生産者たちの苦労を知るきっかけとなる。そして子供たちにとっては、どのようなルートを経て食材を作るのか・・・ということも、実際に目にしながら学ぶことが出来る。学校でいくら学ぶことが出来るとはいってもそれは教科書の中だけであり、現実味が湧かず、印象に残ることはないだろう。実際に見てさわることで、子どもたちの記憶に残るのではないだろうか。

 そして世界では、貧困に苦しむ子どもたちが大勢いる。今、毎日3食食べられているのが当たり前だとは思っていけない。子供たちにとっては信じがたいものかもしれないが、現実に起こっていることだということを伝えていくことが必要であると感じた。

 また、エチオピアの人々は日本人に対して「誰がさばいたか分からない肉をよく食べられますね」と、言ったというお話を川端さんに伺った。言われてみないと気がつかなかったが、確かによく考えてみれば恐ろしいことなのかもしれない。スーパーで売られている物は自分が全く知らない人がさばいて売られているものだ。食材に関する様々な問題が起きている今だからこそ、このような当たり前だったことにも目を向けなくてはいけないのかもしれない。

 子どもたちにとって大きな収穫を得るであろう、バッタクラブのような活動が様々なところで広がれば良いなと思う。