どうやって回避するか・・・


人の持つマイナスのエナジーたるやもの凄く強大だ・・・・


本人が気付いていない間に心身共に蝕まれて行くというもの。


まさしく“サイレントキラー”なのだ。






人が本来持つべき慈愛の心。


しかし、マイナスのオーラをこれでもかと放つ人があまりにも多過ぎる。


私にしてみれば、そのような人を前にすると哀れみに似たような心境になる。





3年前、私はある人物と出会う。


傍目には紳士っぽくもあり、落ち着いて見える。


年の頃は私よりも少なくとも10は年上であるはず。



彼との接点は仕事上のみだったが


いつの日か私にプライベートでのコンタクトを求めて来るようになってきた。




一度目の時は第六感が働いて軽く受け流していたのだが、


仕事上でのやり取りの中でどうしても断り切れなくなり


とうとう最後には誘いを受けることになった。




寒風が吹く新宿。


不穏な心中で彼を待つ。


彼はダークブラウンのウールコートに身を包み、


人ごみの喧騒の中からいつの間にか私の前に現れた。




軽く挨拶をした後、私と彼はとある居酒屋に流れ込んだ。


彼はいつもよりも表情を強張らせ、少々のつまみを食べながら世間話を始めた。


この時から私は“何か言うはずだ”と感じ取った。




他愛もない世間話をしてるはずなのだが、


彼の飲むペースが序々に早まってくる・・・・・


その時分において、世間話などに時間を割く程の余裕が無かった私は・・・


「家内が待っておりますので、そろそろ・・・・」と言い始めた途端に・・・・



彼の目が突然大きく見開き・・・・・


「一緒に躍進しませんか?」


と、突然立ち上がりながら切り出してきた。




「お時間のほうは掛かるものですか?」


と、私は即座に逃げの姿勢を取った。


すると彼は「これがあるんです!」とカバンの中からB5サイズのノートパソコンを取り出した。


それを見た瞬間に私の心は疑心が確信に変わった。




彼は勤務先のサーバーから顧客データベースや取引記録を不正にノートPCに移し取っていた。


「どういう意味ですか!やめましょう!」


と私が大きな声を出した途端に


「この事実を知った貴方も共犯です!!」と彼は安い脅しを掛けてきた。





「キタぜ・・・・・」


私も見くびられたものだ。


そのような安い人間に見られただけでも腹立たしい。


私は即座に伝票を取り上げ、会計を済ませてその場を後にした。


たった数千円の飲み代で人生をブチ壊されてしまってはたまらない。




それから3ヶ月後、彼は会社を辞めたらしい。


どうやらリストラに遭ってしまった様子だ。


データの不正コピーは


退職勧告をされた彼の“最後の反逆行為”だったのであろう。




非常に残念だ。


どうして「会社都合でリストラされますので、お力添えを願えませんか」


と簡単に言えないのだろうか・・・・。




元に戻せば、彼が何故こんな愚行に及んだのかを考えれば、


会社の業績が不振なのが最大の原因なはずだ。


ならばもっと本来やるべき事に心血を注いでいれば彼自身もこんな不幸は起こさなかったはず。




以前、彼の身の上話を少々聞いた記憶があった。


「営業はつらいですよ、私は今まで勤めた会社は全部クビですから・・・・」


「実は愛人がおりまして・・・・」「借金がありまして・・・・」


そのような言葉を聞いた時点から負のオーラに包まれた人なんだと感じ始めた。


負の連鎖が続いているその理由は何よりも本人自身にあるという事を・・・・


どうして気付かないのだろうか。





そういうのって、繰り返してしまうんだよね・・・・・







視点を変えれば、彼は私に助けを求めてきたのかもしれない。


心情的にはそうである確率が高いはずだ。


だが、今までの経験上あまり親しくない人に自分の汚点を明け透けに話してくる人は


結果的にその汚点を相手に共感してもらいたいという大きな甘えが内に隠れている。


そういう意味では私は甘えに関しては非常に厳しく叩き潰すだけの事しか出来ないし、


面倒に巻き込まれない為の自衛策という意味も持ち合わせている。




私はそんな物は一切必要としていないし、くだらないとしか思えない。


甘い汁の陰には、結果的に不幸というもののみが潜んでいるだけから・・・・・。




マイナスのエナジーの恐ろしさを、私は数多くの実体験と共に痛感してきた。


会社員だった頃の自分では到底想像が付かないような修羅場も踏んできた。


そんな中で、何が一番大切なのかと問われたら・・・・


私は間違い無くこう言うだろう。




「自分で自分を信じられる人であって下さい」


「その為の少々の努力を忘れないで下さい」




常に自分に厳しく、かつ自分らしくある事が結果的には一番ラクなんですよね。


少なくとも私はそう思ってます。


酒や女や金で一時は紛らわせたとしても、


それって本当の自分の線路に乗っかってる事にはならないしね。




温情な面もあれば非情な面も持ち合わせている世の中。


最終的にどちらの生き方を選択するのかは各個の判断に委ねるしかないんですよね。


一度マイナスのエナジーに巻き込まれてしまったら


そこから脱却するのは至難の業に等しいということを、


若輩者の私でさえこの目を持っていくつも見てきた。




最後に、


私と係わった人が全て幸せになれますように。


心からお祈り申し上げます。






夜にこだまする太鼓の音が聞こえる
彼女がかすかに囁きかける声が聞こえるみたいだ
彼女は12時半の便でやってくる
月に照らされた翼に映る星が僕を導いてくれる
僕は道で逢った老人に話しかけた
長い間忘れ去られた太古の調べを見つけたくて・・・
振り向いた彼の顔はこう言ってるようだった
「急げ、若者よ、それは向こうでお前を待っている」

君から僕を簡単に引き離すことなどできるものか
たとえ100人以上の男が掛かってもできはしない
僕はアフリカに降る雨をたたえよう
君のために、僕らが新しいことをやるには
まだしばらくかかる

夜に吠える犬の声
彼らも休みなく孤独な仲間を探し続けているのか
僕は正しいと思う事をやらなきゃならない
悲しきケニアの空に一人立つキリマンジャロのように
心の奥底の傷をいやしたいのさ
自分がどう変わったかをおそれながら