美しく、とても可愛らしい女性だった。


倍以上も歳上の方に可愛らしいなんて言葉は失礼ですが、



それを承知の上で・・・・




高校の頃にバイトしてた宅配のお弁当屋さん。


毎日注文してくれた・・・・・



別居してた娘さんから・・・・・。




いつも「またお願いします」の冷めた一言だけ。





毎晩、僕はチヨさんの家にお弁当を届けた。




ピンポンしてから解錠してくれるまで2~3分は掛かる。



だって、やっと歩けるくらいのお婆ちゃんだったからさ・・・・


「今日は何かしら?」


「今日は地鶏の照り焼きと茄子チーズとゴボウの煮物と・・・・・です!」


「まぁ、美味しそうだわ!」





あの上品かつ素敵な笑顔が大好きだった。



毎日、チヨさん宅にお邪魔して食卓にお弁当を広げるのが僕の仕事。



昔は今みたいに介護サービスが無かったから、


民間で何とか補ってたんですよね。






そしてある日を境に注文がパッタリ無くなった・・・・




心配になって他の配達がてらチヨさん宅に行ってみたら明かりが付いてない。



ピンポンしてもなしのつぶて・・・・




それから数ヶ月後。



30食程の注文が火葬場から来た・・・・。


日曜日だった。





三輪バイクに満載のお弁当。



何も知らずにいつもの火葬場に着く。



入り口に「神田家」の名前・・・・





膝が震えた・・・・。










素敵な笑顔、ありがとうございました。




お陰様で僕は・・・・・・・