一部上場企業と直接取引が始まるかもしれない・・・・



ま、その事によってウチの信用度や行く末が大きく左右される・・・






一睡も出来ない日々が2日続く。





朝、カーテン越しの窓が、


小鳥のさえずりと共にうっすらと明るくなる。




隣ではおよめたまとおちびたまがまだ寝息をたてている。







大企業の重役クラスを前に、どんな言葉が出るのだろうか・・・




心の中で何度も念じる。







「信じろ、大丈夫だ・・・・・。」







その言葉とは裏腹に、高鳴る鼓動。


額には汗が滲む。





予定の3時間前には車のキーをひねっていた。







眠れなかった夜が続いた為、朝日が目の奥にズーンと眩しい。





6時。




やっと「玉砕でも構わん!やるだけやったれ!」


という諦め混じりの決心が付く。





重い。


責任が重い。



決して今までのようなライトな金額の商談ではない。







何故、ウチに白羽の矢が立ったのか。


その意味は当時の自分には全く理解が出来なかった。


もしかしたらこれは「毒饅頭」かもしれない。




そんな疑念に押し潰されそうになりながらも、


必死で冷静を装う。




どんなに小さくとも、


一国一城の主としてしかるべき言動を取らなければならない。







心なしか、いつもより低い声で丁重に挨拶をしている・・・・



「俺ってホントに役者だよな・・・フッ」



自分で自分が可笑しくなった。







気付けば、しっかり重役の目を見据えてる・・・・・


いつの間にか手振りまで混じり、坦々と商談をしてる自分・・・・











何時間経ったのだろうか・・・・


話の合間に時計に目を移す・・・・




まだ15分しか経っていない・・・・









「では、○○さんのところにお願いします。」




・・・・・・・・








終わった・・・・・・・・。







契約成立。









来客用の地下駐車場まで降り・・・・・・




某企業の敷地を車で出た瞬間・・・・・




「うっへっへぇぇぇ~!取~れちゃったもんね~!!!」


「YEAAAAA!!!!」








と一人で車内で叫んでいた今年の夏・・・・・





もっと心の汗を。