「飲食店を経営する社長になりたい。」



何も世の中の事を知らない20歳の小坊主がいた・・・・・




ある日突然、悲劇がやって来た。


親会社である経営コンサルティング会社の経営状況が悪化。


FC加盟していた高級仕出し弁当店のロイヤリティーや仕入れ代金、


店舗の家賃、車両のリース料・・・・・・


全てを滞納していた事実がFC本部役員のガサ入れによって発覚。



濃色のスーツを着込んだ3人が、突然店舗に入ってきた。




「支配人いる?」



「いえ、1ヶ月近くお店には来ていませんが・・・・」





ただならぬ雰囲気であることは何となく察した。


そして濃色のスーツを着た1人が失笑しながら話し出した。



「おたくの社長さん、バックレちゃったんだよね・・・・」




多額の債務に追われていた当社の社長は、


全てを投げ出しどこかへ逃亡を図ったというのだ。




信用していた社長が従業員を置き去りにして逃亡・・・・・


その疑いたくなるような事実を前に、


20歳の小坊主には何も成す術がなかったのである。



これほど自分の無知や無能さを悔いた時は無かった。



次の日。


店舗で働く従業員全員に、債権者であるFC本部から召集がかけられた。



「本日を持ちまして、当店舗は規定によりFC本部の管理下におかれます。」


「色々なご意見等あるかと思いますが、今ある在庫がある程度掃けた時点で


 当店舗は閉店とさせていただきます。」


「閉店を持ちまして、従業員の皆様との臨時雇用契約も解除となります。」




店舗が閉店した時点で、


親会社は実質的な経営を維持することが出来なくなり、倒産する。




社会や経営のしくみなど全く知らない従業員達。


小さいお子さんのいる女性パート従業員がすすり泣く声が沈黙の中に響く。


ただのサーフィン馬鹿だった20歳の小坊主も、


何がなんだか分からぬまま、実質的にはクビ切りされたのである。



今になって考えれば、そこからが全ての始まりだったのかもしれない。




その怒りをぶつけるが如く、日々狂ったように勉強した。


政治、社会、経営、文化、歴史・・・・・・


そんなある日、自分は一つの結論とも言える、目標を持つようになっていた。



「飲食店を経営する社長になりたい。」


それは、信頼していた社長に裏切られた、無力で無知な小坊主らしい、


何とも単純な目標なのであった・・・・・・。