ここだけのはなし

 2歳男児のお世話に行ったとき、申し送りがとても多いお客様がいらっしゃいました。


 まず、お伺いすると仕事開始時と終了時に、子供用品が揃っているか、チェック表にレ印を入れて欲しいと言う要望でした。

 お客様手作りの在庫管理チェック表には、30項目ほど品名があります。

 例えばお出かけセット(帽子、児童館カード、鍵、着替え、スタイ、ガーゼ、上着、水筒、オムツ、お尻拭き、ビニール袋、タオル、日焼け止め、虫除け、ブランケット、靴、などなど)

 他のシッターの話だと、以前お子様の帽子が所在不明になり、ベビーシッターが落としたのではないかと思い、責任の所在を明らかにするためチェック表を作ったようです。


 通常ベビーシッターは5分前にお伺いするため、(新規お客様は15分前)チェック表での在庫確認だけで15分はかかり、お子様の申し送りがなおざりになります。

 また、午前午後と別のスタッフが来る場合には、5分前に到着の次のスタッフに、自身の就労時間が終わってからも在庫管理チェックをすることになります。

 給料の出ない仕事ですし、このような状況では、在庫管理だけで疲弊してお子様と楽しく過ごす気がなくなります。


 また、こちらのお客様は他のご要望もあり、オムツの使用はお昼寝時だけで、起床時はトレパンを使用して欲しいそうです。

 お母様によると、お子様はオシッコやウンチを認識しているそうです。

 しかし、ベビーシッターからすればトイレトレーニングの時期が来てないのに、お子様の能力を過大評価してベビーシッターにトイトレを丸投げしている感じがします。もちろんそんなこと思っても言えませんが…

 実際そのお子様は尿便をしてからも全く教えてくれず、全てパンツにもらしてしまい、床などにもれた排泄物を雑巾で水と消毒液で拭きます。そして、パンツやズボン等の汚れ物は水洗いして消毒液を浸したバケツに入れるそうです。

 トイトレを始める時期はお子様の成長状況によって違います。また、排尿排便を感じるようになっても、お母様以外にはそれを伝えられないお子様もいます。

 これでは、ベビーシッターがお子様の排泄物処理に疲弊して、余裕を持ったお世話が出来ません。

 たくさん水を飲ませたら、またオシッコが漏れてしまうのでは… 外出すれば、また在庫確認チェックをしなくてはならない… と考えてしまいます。


 また、周辺に幹線道路があると言う理由で、外出時はベビーカー移動で徒歩移動は禁止です。

 外に出ると、お子様が歩きたいと言う意思表示をして泣き叫びましたが、歩かせて良いのは公園の中か児童館だけでした。

 毎回歩きたくて泣くのでベビーカーが揺れて危険ですし、虐待を疑われるし、気分転換させるも一苦労です。

 これではさすがにお子様が気の毒になりますし、ベビーシッターお子様両方とも大変でした。


 こちらのお客様は、申し送りや要望が多いため、ベビーシッターのリピート率が低く2回目には来ない人が多く、半数以上は新しいベビーシッターでした。

 そのため、お母様は新しいベビーシッターさん用に詳細な申し送りノートを準備されていましたが、そんな事よりオシッコが漏れないか心配でゆっくりノートを読む時間がありません。

 アルバイトや個人契約のベビーシッターはお客様を断る事ができます。

 自費利用の病児保育や習い事など個人契約のお客様はベビーシッターを選ぶことが出来ますが、待機児童対策など自治体の支援で利用されるお客様は基本的にベビーシッターを選べません。

 ですので、後者の場合、ベビーシッターがこの申し送りノートを全て読んでも次はここには来ないからと考え真剣に読まず、勤務時間が早く終わる事だけを考えてしまいます。

 

 お母様からしても、毎回新しいベビーシッターが来て最初からお子様の申し送りと子供用品チェック表の説明に時間がかかるので、大変なのではないかと思います。

 ただ、最初のお子様ですし、心配して神経質になっているのでしょう。