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司SIDE) まっとうな社会人が他人に電話をかけるような時間帯じゃないのは、いくら俺だってもちろんわかっている。 けど、自分の女の部屋で、他の男が堂々と一緒にいて、どこのどいつが平然としてられる? マジで日本に帰るつもりで寺島を呼び出し、ジェットの準備をさせようとした。 が…。 4台あるジェットのうち2台は整備中。 1台は姉ちゃんがLAに乗っていったまま。 残り一台を飛ばそうとしたら、ちょうどフランスに飛ぶところだったババア…もといお袋とバッティングしちまった。 『バカなことをして仕事に穴をあけるつもりなら、今からでも日本支社転勤は取り消しますよ』 釘を刺され、あえなく撃沈。  「…類の奴、マジで牧野に手を出しやがったら許さねぇっ」 負け犬の遠吠え…いや、この俺様にそんなたとえは間違ってもありえねぇ。 とりあえず、地団駄を踏みつつも、いまのところは我慢するしかない現状に腸が煮えくり返る。 …どっち道、俺が速攻ジェットを飛ばしたところで、あちらは一夜明けた後だ。 類が本気で俺を出し抜いて、裏切るなんて思ってるわけでもない。 ガキの頃からの親友を信じではいるんだ。 それでも…。 すったもんだで、もう一眠りするつもりが早9時。 そして気が付けば、昼をすでにすぎていて。 日本は深夜を回ってて、バイトがない日の牧野は基本早寝早起きだ。 今日は朝1に落とせねぇ大学の講義があったからそちらから、本社への移動中のリムジンの中。 疲労と寝不足、溜まりに溜まった鬱憤とが嫉妬に輪をかけ、イライラと床を踏み鳴らす。 ダメだ、マジ、このイラつきをどっかで吐き出さねぇと、仕事になんねぇっ。 さすがにやっと電話に出てくれた牧野を、怒鳴りつけるためだけに電話をかける気にはなれなくって、そうとなれば、このイライラの原因の大半である男で解消するしかないっ。 RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~。 でねぇ。 RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~。 予想してたが、やっぱ、でねぇし。 マジで牧野んちに泊まってんじゃねぇだろうなっ。 血管が切れそうだ。 5度かけて、結局でない類に見切りをつける。 次なる標的は…と、腹いせとばかりにこれまたかけなれた番号をタップする。 RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu、RuRuRuRuRu~。 『…はい、俺』 今度は出た。 「俺だっ。総二郎、てめぇ、出るんならさっさとでろっ!」 『バカ野郎。…3コールで出なかったら察しろよな。こっちは取り込み中だ』 うんざりしたような声の向こうで、甲高い女の甘え声が聞こえてくる。 『…ねぇ、誰から?』 『…ごめん、ちょっとそこで待ってて?』 携帯を持って移動する気配。 バカ女の甘ったるい声以上に、総二郎のニヤけた声が今日は妙にカンに触る。 「くだんねぇ女とジャレあってんじゃねぇよ。お前、真面目に大学行ってんのかっ?」 俺が連絡入れるたびに忙しい、忙しいって、牧野の見舞いにもロクに行けねぇくせに、ちゃっかり女とはいちゃついてやがる。 『……、お前から、真面目に大学、とか言われるとはな。人間変われば変わるもんだよ』 電話の向こうでニヤニヤ、俺を揶揄る総二郎の顔が目に浮かぶ。 「そんなことより、類だよ、類っ。あいつ、どういうつもりだよっ」 『…どういうつもりって、いきなり俺に振られてもな』 「今日、牧野にテレビ電話入れたら、アイツ、牧野の部屋に当たり前みたいな顔して、堂々と出入りしてやがったぞっ」 『あ~。…まあ、そうだな』 驚きもせず、今頃気がついたのか、みたいな声で、面倒くさそうに相槌を打ちやがる。 「類の奴、牧野に手を出してるんじゃねぇだろうな?」 今の牧野はデフォルト状態。 俺がこっちでどんなにがなり立てたって、俺の恋人だという自覚なんて欠片もない。 だから指輪でガッチリ男よけもかねて、羞恥(周知)の事実ってやつで縛っておきたかったのに。 『…正直、以前の牧野ならともかく、今の状態は俺もやべぇんじゃねぇかとは思ってる。もともと牧野の好みのど真ん中が類だ。今のところ、類はいままでのスタンスは崩さねぇで、お前と牧野の間に入ろうとは思っていないと思う』 「…じゃあ、なにがやべぇんだよ」 俺の声が意図せずして脅しつけるように低くなる。 牧野の好みのど真ん中…今さら言われなくったって、俺だってわかってる。 それでも青筋が浮かんでくるのは、仕方がねぇ。 まあ、いくら俺が意図して威圧したって、本当の意味ではこいつらは俺を恐れたりはしない。 『お前、早く日本帰って来い』 「は?いきなり話、変えんなよ」 『それで委細、全部解決ってわけにはいかねぇんだろうけど、どう考えたってお前のことを憶えてない牧野を野放しにしておくってのは得策じゃない。お前もそれがわかってんから、焦ってんだろうけど』 「……」 その通りだ、焦ってイラついて…、情けないことに不安でしょうがない。 転勤の準備のための3か月…それは最低限仕方がないことだとわかってはいたが、それでも昔の俺だったら、何を置いても牧野を優先していたはずだ。 それが大人になるってことだなんだとしても、それでいいのか、本当にそれで牧野を失う結果になるんじゃねぇかと、怖くて仕方がない。 「…できるだけ、早く戻る。お前らにあとは頼むしかねぇ」 『お前が頼む…か。ホント、昔からしたら青天の霹靂ってやつなんだろうけど。わかってると思うけど、お前ほどじゃないにしろ、俺もあきらも昔ほど暇じゃねぇ。それでも俺らの精一杯で牧野のことは気にしてる。それは、あいつがお前の彼女だからじゃなくって、俺らのダチでもあるからだ』 「わかってる」 『類だって同じだ。けど、それだけじゃねぇってのは…。俺らはお前のことも大事だが、類のことも大事なんだよ。男と女のことは当事者にしかわかんねぇし、どうにもできねぇことだと、俺は思ってる』 「…やっぱ、類が手を出してるって言いたいのかよ」 『それは、さっき言ったろ?今のところ、奴は今のスタンスを崩してない。けど、この先、どうなるかはたぶん、あいつにだってわかっちゃいねぇだろ。今の牧野は、やっぱ、以前の牧野とは違う。どこが違うっつーたら、まあ、記憶のありなしが一番の原因なんだろうが、歴史ってもんがねぇんだよ」 総二郎の言いたいことがよくわからない。 「歴史?」 『そう、雑草女の歴史。戦って、踏ん張って、お前に宣戦布告するような女になった歴史。…当たり前っちゃあ、当たり前だが、牧野、今の自分の状態や環境が不安なんだと思うぜ」◇交流・意見交換 『こ茶子の部屋』へ◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ↓ランキングの協力もよろしくです♪  ...