【SEHUN】
宿舎が一緒になって、わかったこと。
チャニョリヒョンやベッキョニヒョンと一緒にいるときには、ちょっと煩いぐらいによく喋りよく騒ぐあなたは、ひとりだと案外もの静かなところがあるということ。
イヤフォンを耳に挿して、リズムをとりながら皿洗いをしているあなたは、ふわりとした膜をまとっているみたいに見えて、声をかけづらいことがある。
負けず嫌いのくせに、タオにはすぐに負けてやるということ。Mのマンネは、ヒョンたちにすごく甘やかされていて少々うらやましい。
何かとひとの世話を焼きたがり、誰のわがままも割とあっさり赦してしまうのに、自分からは、あまりひとに甘えないということ。
あ、でもクリスヒョンに対しては別。
クリスヒョンは、あなたが気をゆるしている、ごく少ない相手の一人だと思う。
たぶん、クリスヒョンはあなたをその場その場ではひどく甘やかすけど、あなたに執着はしないし、何かトラブルがあったときにも、追いかけてきて根掘り葉掘り話を聞き出そうともしないから、あなたにとっては気が楽な相手なんだろう。
「あ、そうだよ、練習生のときとか、気づかなかった?チェンって暗いの。」
タオはあっけらかんと、そう言った。
「暗い?」
「あー、暗いっていうか、人に頼りたがらない。なんか、独りでやりたがるの。」
「ふーん。」
「ひとに甘えるの、下手くそ。せっかくタオが見本見せてあげてるのにー。」
「ふーん。」
「ふーん、ってセフナ、馬鹿にしたでしょ今。」
「いや、馬鹿にはしてないけど。」
「でも、もっと甘えたらいいんだよ、誰も迷惑しないのにね。」
「タオのは結構、ヒョンたちに迷惑かけてんじゃないの。」
「あ、そーゆーこと言う??」
「冗談冗談。」
あなたは愛嬌も多いし、触れたがりなのに、ひとの傍から離れるときには不思議と淡白だ。
まるで、誰かから何かをもらうことなんて期待してないみたいに、名残惜しさも見せずにさらりと離れていく。
そんなあなたが不思議で、たまに背中から抱きしめてみる。
あなたはまるで抵抗せず、僕の腕の中にすっぽりとおさまって、首を捻って振り返り、「せふなかぁ。どした?」と尋ねる。
ううん、なんでも。
ん?
ヒョンにぎゅってしたかっただけ。
ヘンなやつ(笑)
首を傾けて、後頭部から見下ろすあなたの横顔の、いつも上を向いている口角が、またほんの少し持ち上がる。
その首筋に、顔を埋めてみる。
「くっすぐったいってー。」
あなたは身体を捩って僕のほうに向き直り、僕の首に腕を回すと、少し背伸びをして僕の額にキスをする。
それから、トン、と僕の胸を小突くから、僕はあなたの身体にまわした腕を少し持ち上げる。
そうすると、あなたはやっぱり名残惜しさのかけらも見せずにさらりと身を翻して、笑い声だけ残して僕から離れていく。僕の好きな、よく澄んだ笑い声。
あ、でもイシンヒョンに対しては別。
あのひとと離れるときに、少し曇るあなたの瞳が、僕はあんまり好きじゃない。いつだって微笑みを湛えているようなあなたの瞳が、ほんの少しだけ揺らぐから。
イシンヒョンは、あなたが離れがたく思う、ごく少ない相手の一人だと思う。
僕は、そのことを、少し、面白くないと感じている。
宿舎がまた別々になって、わかったこと。
リビングからドア越しに寝室の中まで聞こえる、あなたのとおり過ぎる声に耳をくすぐられて目覚める朝が、僕は好きだったということ。
シャワーのあと、タオルを被ってテレビを見ていると、ほら、風邪ひく、と言って、僕の髪を乾かしてくれる、僕のそれより小さな手。
何かに夢中になると、アヒルみたいにちょっと唇を突き出す癖。
ピアスをいじるとき、少し傾ける首の角度。
リビングのラグに胡坐をかいて雑誌を開き、顎でリズムをとりながら、何か僕の知らない歌を小声で歌っているあなたに、寝転ぶソファから手を伸ばしてちょっかいを出すと、『んー?』と言いながら振り向いて、僕を見上げる上目遣いの瞳。
柔らかそうな、襟足のくせっ毛。
そんなもののすべてが、ひどく懐かしいということ。
上の棚の奥のほうにあるコップをとろうとして、台所で背伸びをするあなたの後ろから手を伸ばし、目当てのものをとってあげる。
「あ。」
あなたはびっくりしたように振り返り、それから半ば悔しそうな表情で、僕を見上げる。
「セフナまた背ぇ伸びた?」
「去年から2センチ。」
「どこまで伸びる気?」
「そんなの、わかんないです。」
「ちぇっ、なんか腹立つ~。」
歌うように言いながら、言葉とは裏腹にくしゃりと微笑う、あなたの目じりの笑い皺。
そんなどうでもいいようなやり取りが、ひどく愛おしかったということ。
あなたを、好きだ、ということ。
「せ~ふなっ。」
事務所の廊下の自動販売機の前で、あなたが後ろから僕に抱きついてくる。
「なんですか?」
「俺たち来週、台湾なんだ。」
「何日?」
「二泊。」
ふうん、と言いながら僕は自動販売機のボタンを押す。
「お土産何がいい?バブルティーは持って帰れないから、俺が代わりに飲んどく。」
「…じゃあ、要らないです。」
「なんだよー、せっかく聞いてやったのにー。」
背中をぽかすか叩かれて、口につけた紙コップの中の炭酸が揺れて泡をたてる。
「んー、じゃあ出発までに考えときますけど、」
僕は振り返り、あなたの顔を見下ろす。
「お土産より、早く帰ってきて。」
「えー、なんで。」
あなたは僕の手から紙コップをとって、一口飲んで、顔をしかめた。
「まずい。コレ何。」
「たぶん、ウーロン茶の炭酸割り。昨日から何かおかしいんですこの販売機。修理がきたらきっと飲めなくなるから、今飲んでる。」
「ヘンなやつ(笑)」
「知ってます。でも、早く帰ってきて。淋しいから。」
そう言うと、あなたは声をあげて笑った。僕の大好きな、その笑い声で。
~FIN~
※FIRST DVDの中で、まったくなんの脈絡もなくセフンとチェンがハグしてるシーンがあって、あれ見てからずーっと、フンチェンってなんなんだ、と思ってたんですけど、今日タイムラインに流れてきた3枚目のポラロイド写真でその私の中でずーっとくすぶっていたものに火がついちゃったので、とりあえず書いてみました。
EXOってデビュー時がMとK別々の宿舎で、xoxoのカムバックのときに合同の宿舎になって、それからまたMとK別々の宿舎になってるんですよね。といったようなところを踏まえて読んでいただければと思います。タイトルは、谷川俊太郎の詩です。
台所で、何か歌いながら皿洗いしてるときのジョンデの顔のイメージって、一枚目みたいな感じ。後ろにかぶってる人影は、髪の色とこの日の服装からして、セフンです。そう気づいて、ひどく萌えてしまいました。


