城下町簡裁裁判官の息子は、最近見つけたブログを読んでいた。そこに書かれている登場人物や出来事は他人事とは思えない内容だった。読み進んで、息子は登場人物が架空ではないと確信するようになった。それ以降、息子は父と話すことも会うことも拒絶した。

 

城下町の古参司法書士の息子は、父の3回忌を済ませた。遺産の多くを地方銀行城下町支店の支店長に勧められた金融商品に注ぎ込んだ。その商品は評価額は下がったものの、2年後の期日まで持っていれば元本は支払われる見込みだ。

 

昨年、その支店長は城下町から本部へ異動になったが、暫くして銀行から懲戒処分を受けた。彼が顧客に売った金融商品のリスクを十分に説明していなかったことが金融庁の検査で判明したのがその理由らしい。

 

城下町の新参司法書士は、その地方銀行支店長に紹介された県内でも屈指の名門ゴルフ倶楽部の会員権を銀行借り入れまでして購入したが、名門とは言え、経営が苦しくなり会員権の返済額を3分の2にして欲しいと倶楽部から通知を受けていた。名門でありながら、会員の追加募集を始めていたので、市場では、既存会員権価格が額面の半額以下になっていた。

 

週刊誌記者は、週刊誌との契約は続けていたが、己のブログを始めていた。これまで取材した資料を元に架空の人物、架空の場所を設定して、この国の司法制度の現状を読んでもらおうとした。

 

そうした中で、普段は保守的な判断を下す最高裁判所大法廷が、ある法律の規定が憲法違反であるとの判断を全員一致で下した。

 

一方で、最近に国会議員の補欠選挙が行われたが、その投票率は10%を少し超える程度であった。

 

憲法が保証する国民の権利である選挙権を放棄する国民が多いということは、立法府を構成する議員の質に疑問符を付けざるを得ない。そういう議員によって成立した法律に信頼が寄せられるだろうか?

 

今回は運良く司法がその役割を果たしたと言える。幸運は必ずしも続くとは限らない。世の中のことを知り、それが正しいのか否かを判断し、否であればそれを正すべく動かねば幸運は引き寄せられない。動くのは自らでも良いし、議員に働きかけても良い。投票はその一つの手段である。

 

記者は、改めて広く世に知らせることに意味を見つけた。