Life 線上の僕ら | Pourriture noble


久し振りにきた。
号泣するBL。

初めて表紙を拝見した時、とても好きな感じだったのですが。
受が、いかにも美男子タイプでなかったので。
(何なら、どっちが受かも咄嗟には分からない感じ)
購入せずに暫く静観しておりました笑
が。
今回、何故か吸い込まれるように手に取り。
レジへ向かっていました。

いやでもマジで。
もっと早く読むべきだった。
『俺と上司シリーズ』
『狼は花の馨り』
以来の号泣でした。
(『テンカウント』は。ラブラブになったとは言え、他のBLには無い緊張感がやはりありますので。少々泣けましたが、号泣するような作品ではありません笑)

後半は、羅川 真里茂先生の『ニューヨーク·ニューヨーク』を彷彿とさせるような展開だったので、免疫(?笑)がありましたが。
この展開はホントに確実に泣けるでしょ。
2人が老いて天に召されるまでを描いたBLって言うのは、大変珍しいです。

『結』でカップル成立して、性行為すりゃ腐女子は満足なんでしょ。
みたいな乱暴な終わり方が多い、昨今のBLの中で。
『BLはファンタジー』と言う名言まで生まれる中で。
2人が老いて、それぞれが天に召されるまでを描く作品に巡り会えるとは思いませんでした。

これは、コミック1冊分ではなく。
少なくとも3巻くらいのボリュームを持たせて読みたい作品です。

特に。
一度2人が別れて。
晃が白石さんの告白を受け入れ、結婚するも全く夕希を忘れられなくて。
それを白石さんに告げるまでの経緯とか。
(あれはあれで、スッキリしていて良いと思われる方もいらっしゃるでしょうけど。夕希も言ってますように、晃が傷つけたのは夕希だけではなくて。彼女も大変苦しんだのであろう事も見たかった。)

晃が吸っていたのと同じ銘柄の煙草を喫煙する男性とばかり寝ている(と思われる)夕希の荒れ果てた精神や生活も、もっと細かく見たかった。
(あれはあれで伝わるから良いと思われる方もいらっしゃるでしょうけど。晃が公園でぼんやりしたまま一晩明かしてしまうほどの喪失感を感じている場面があったので。夕希にももう少しエピソードが欲しかったように思います。)

50年以上と言う、長い期間を描いた作品ですから。
常倉 三矢先生の脳内には、私には想像も出来ないような2人の設定やエピソードが溢れんばかりにあるのだと思いますので。
何ならそれを全部見せて欲しいくらいです。

あんなに好きだったのに。
いつでもいつまでも、あまりにまっすぐ眩しいくらいに明るく朗らかに、自分を愛してくれる夕希が愛しい。
けど、怖くなってしまった。
そう思ってしまうのも、やはり同性愛だからこそ。
元々は、同性愛者ではない者同士の恋愛だからこそ。

でも。
同性愛者でもないのに。
こんなにもお互いを求め、愛さずには居られないのは何故か?
そこに気持ちが向かわなかったのは、晃が弱くてズルい人間だったから‥と言うより。
彼があまりにも優しくて、真面目な人柄だったから。
そうとしか思えません。

夕希も。
ホントに晃が大好きで。
晃がたくさん愛してくれるのが嬉しくてならない。
と言う気持ちが全身から溢れていて。

17歳の頃。
晃とすれ違う地点で、いつまでも彼を待っていたりしているところを見ると。
もしかしたら、ちょっと淋しい家庭環境で育った子だったのかな。
人と触れ合う機会の少ない子だったのかな。
とか、色々想像してしまいます。
(そうやって、読者にあれこれ想像させるのも。コミック1冊分の尺しか無かった事による効果でもありますが。)

この2人が17歳の頃の冒頭の引き込み方が、また秀逸ですよね!!!!

て言うか、私も少女時代。
白線ではありませんでしたが。
車の中で、車窓を次々に巡るビルの屋上を落ちないように、脳内で飛んでいたり。
タイル張りの床の継ぎ目を踏まないように歩いたり。
彼らのように勝手に設定して遊んでいましたので笑

凄く懐かしくて。
彼らの『踏み外したらマジで死ぬ』と言う必死さが良く分かりました笑

でも、あの子供の頃のあまりにもつまらない、すぐにでも忘れてしまえるような記憶が。
あんな素晴らしい2人の出会いになるなんて。

持ち込み投稿の時に
「自分の経験とか、身近で起こった事からヒントを得て描いたら?」
と某編集部の方が仰っていたお言葉が、この作品を拝読して身に染みました。

そして。
彼らを結んでいたあの白線が。
年を重ねても、度々登場して。
非常に効果的でしたし✧*。

その効果が最も素晴らしい仕事をしていたのが。
まさしく感動的なラストで。
でした。

曲がり角をウキウキしながら覗く夕希。
長い長い白線を元気よく駆ける。
あの頃と同じように、白線の上に居てくれている晃。
この2人の関係は、こうやって始まったのを急に思い出し、号泣。笑
読み返した時、こんな普通の男の子が今後経験する事を思い出し、また号泣。笑

こちらの編集部さんが求めていた
『その辺に居そうな、ちょっとイケメンな男性同士の恋愛』。
この作品は、特に前半はまさしくそれでした。

美男子が出てこないBLの何が面白いのか?全く解せないでいましたが。
これですか?
これが
『その辺に居そうな男性同士の恋愛』
の魅力ですか?
だとしたら、それも素晴らしいですね!!!!!!✧*。
(絵柄も。表情の描き方なんかは佳門 サエコ先生っぽくて、ペンタッチは夏水 りつ先生っぽいと言う。きっとこちらの編集部さんとしては、理想的な作家先生なんだろうなと言う感じでした。)

その辺に居そうだけど。
何か大きな事件が起こるわけでもないけど。
でも。
非常にドラマチック。

であり。
実際、ドラマチックな場面もちゃんと用意されてました。

離婚して。
自由の身(って言っては、白石さんに失礼ですが笑)となった晃と。
もう晃の事は忘れようと覚悟した夕希が再会したのが。
果たせなかった『未来の約束』の地であるアラスカ。

伏線ありがとよーーーーーーーー!!!!!!(*」´□`)」
と、こんなにも叫びたくなった作品が、今までにあったでしょうか?笑

もう、晃と夕希だから成し得る業としか言いようがない。
何となく分かっていても(笑)感動せずには居られない。
素晴らしい場面でした。

こういう作品であれば。
美男子は出てこなくても大丈夫なんですね(*´`)




こんな風に、長く一緒に居ても想い合えるって。
本当に素晴らしい。