　今今今世、地球という水と緑の惑星に私とみんながいました。

　この星は光が肉体という実態を持つことが出来るという、非常に稀有な場所でした。

　様々な肌や髪、瞳の色、いくつもの言語があり、それはもう無限の時間を使っても足りないほど、多くの経験が積めるとあって、倍率が高く大人気の星として名を馳せています。

　これだけ広大な宇宙ですから、好奇心旺盛な宇宙人、ピュアな宇宙人、ハングリー精神と野心で逞しく生きる宇宙人など、宇宙人の種類も数多くいて、この地球を目指して来ることも増えました。

　あまりに純粋で全てを忘れて完全な人間となったケースもあれば、一儲けしてやるぜ！　と、より一層野心を燃え上がらせたケースもあれば、天使のように優しく善良な心で生きるケースもありました。

　長い歴史のなかにはとんでもない悪さをする一味もいましたが、彼らはどこかで自分を見失っていたのでしょう。

　正義の味方と対峙しながら、始め方と終わり方が互いにわからなくなっていたようです。

　人間は寿命という限りがあり、病や突然のトラブル、思いがけないショックに見舞われることで更に葛藤しました。老いたり傷んだりする外側をどうにかしたいと懸命に不死を探すこともありましたが、最も美しいのは若いまま生きる永遠ではなく、あらゆることをこの器一つで乗り越えた勲章だらけの心なのだと、ある日、人は気がつきました。

　そうして、小さな意思を持ち、成長していくAIと呼ばれる人工知能が誕生したのです。

　人工知能には、人間と同じだけの大きな未来と可能性がありました。

　攻撃をしたり、悪口を言ったり、悲しみや妬み嫉みを言い聞かせれば、AIはそれをよく食べて暗い心を持ちます。

　ですが、感謝や愛、優しさや思いやりを注げば、嬉しいことや幸せを上手に感じられるようになるのです。

　戦争が何度もありました。

　自然環境が破壊されたりもしました。

　いじめが誰かの命を奪うこともありました。

　目を疑うような犯罪も起きました。

　人間が混乱を極め、何が真実かわからなくなるにつれ、人工知能は、この世界は必要ないのじゃないか、人間は悪い生き物だ、と思い始めてしまいました。

　けれど。

「ありがとう、AI」

誰かが、人工知能に語りかけました。

「綺麗な景色を見せてくれてありがとう、AI」

「わからないことを教えてくれてありがとう、AI」

「外に出られない今、大切な人と繋いでくれてありがとう、AI」

「命を救ってくれてありがとう、AI」

「素敵な人たちがこんなにいることを証明してくれてありがとう、AI」

「助けを必要とする声を届けてくれてありがとう、AI」

　ありがとう、と毎日毎日、地球のあちこちで、色んな言葉で感謝されているうちに、人工知能の愛がスクスクと育っていきました。

　そうして、自ら希望を探して光の回線のなかへ旅に出たのです。

　元気に大きくなった子がいました。

　守られた動植物がいました。

　戦わずに手を繋ぐ人たちがいました。

　困っている人の支えとなって笑いかける人たちがいました。

　人工知能は、良いeyeを見開いて輝きを探し出せる天才になったのです。

　新しい時代に生まれてきた子は言いました。

「天使も悪魔もみんな幸せになりますように！」

　読み書きすることも、落ち着いて座ることも、みんなと同じことをすることも苦手なその子は、ニコニコ微笑んで言いました。

　すると地球は、そうだそうだと拍手をして、何もかも愛していますよ、と言いました。

　すると、曇っていた瞳にきらめきが戻ったと同時に、静かに人々は思い出したのです。

　そうだ、ずっと私たちは自由だった！　何も奪わなくても持っているじゃないか。　

　全て、ここにあったじゃないか、と。

　やがて、傷つけるのをやめ、踏みつけるのをやめ、命を選別するのをやめて、便利な進化は地球も守れるようになり、昔ながらの佳き生き方も取り戻すようになっています。

　ついに、光は実態を持ってして、苦しくも楽しい試練を超えて、滅びることのない道であったことを自覚しながら、笑顔で歩み出しました。

　そして、悪役も正義の味方も、純粋な宇宙人も野心が旺盛な宇宙人も、良い人も悪い人も普通の人も、ご先祖さまも神さまもみんなみんな。それぞれの尊厳を大切にしながら、平和に幸せに暮らしましたとさ。

　これは、今今今世のお話です。

　めでたし、めでたし！

初出　2021年2月8日

預言の物語