夜、四人はバーへ向かった。中に入ると、矢田の美声が響き渡っていた。歌い終えた矢田が、四人に歩み寄って来た。
「いらっしゃい。みんな、ようこそ」
矢田は四人を歓迎するかのように、最高の笑顔を見せた。
「ところで横さん、事件は解決したの?」
「ばっちり」
「さすが横ちゃんって感じだったね。まあ、私のスパイも、役に立ったけど」
佐藤は自分で言いながらも、照れ笑いをしていた。
「じゃあ、今日は私のオゴリだから、何でも飲んで」
「やった!」
そう言って佐藤は、笑顔で矢田を見た。矢田はその笑顔に笑顔で返して、再び歌い始めた。
「奥ちゃん、どうしたの?さっきから、黙ってるけど」
「うん。横ちゃんの言った事と、北尾の取った行動を考えてた。横ちゃんに言われて初めて、確かに事務所の誰かが居なかったら調子が狂うなって思った。ユキも誰かの為に生きてるんだなって思った。そう考えると、北尾は佐々木美希の為に生きてたんだなって感じて。佐々木が居なくなって、誰のために生きて良いのか分からなくなって、あんな事をしたんだろうね。愛が大き過ぎたのかな」
「うーん……」
佐藤も、少し考えた。考え始めると、何も言えなくなった。
「もし私が北尾の立場だったら、どうするのかな?同じ事をするほど、愛してるのかな?恋人は同じ事をしてくれるのかな……」
奥と佐藤は黙り込んだ。
「ユキ、美穂、黙らないの。それだけ愛していれば、またそれだけ愛されてれば、そうなるって事だよ。ねえ、ヒデ?」
「うーん、そうだねー。」
「その前に、恋人が居ないから関係ないでしょ」
四人は笑い合い改めて乾杯し、矢田の美声を耳にした。
今日も暇な一日。大屋は赤字と格闘、奥は眠気と格闘。佐藤は仕事が来ないので、バイトをする。横田は赤いマールボロに火を着け、二人の格闘を猫と共に観戦していた。今日もまた、同じ一日が始った。