メディアが言うところの「W杯狂想曲」が終わりました。
 32年ぶりの南半球、初のアフリカ開催ということでピッチ外に焦点が当たることが多かったように思います。例えば治安、運営、ジャブラニ、など。日本代表の予期せぬ活躍によって日本でも予想外に盛り上がった大会でした。
 ただ、この大会を総括するとなると、次のような言葉が思い浮かびます。

 ジャブラニに振り回された大会
 誤審だらけの大会
 スター選手の不遇
 基本的には見るべきものに乏しい大会

 総ゴールは145。史上最低のゴール率に終わった90年を機に、FIFAは改革を行いました。オフサイドルールの変更、キーパーへのバックパス、勝ち点3制度など。しかし今回のゴール率は90年とほとんど変わりませんでした。グループリーグ終了時点では1試合平均2・1以下。決勝トーナメントでは珍しく得点が量産されたため、なんとか過去最低をまぬがれましたが、やはりジャブラニの影響は大きかったようです。高地開催に関しては、2度のメキシコ大会でもよくゴールが入りましたので、影響度合いは少なかったと思います。

 幻のゴール、明らかなオフサイドと誤審が続いた今大会。決勝戦のジャッジも微妙でした。これ以外でもおかしな判定がところどころに見られたのは残念です。2002年とは異なり、今度は審判そのものの力量が問われる場面も少なくありませんでした。
 原因としては、高速化する試合に主審も線審もついていけないことでしょう。選手に比べ、審判団の平均年齢は10歳くらい上。しかし走る量はそれほど変わらない。広いピッチを3人か4人でみる時代はそろそろ終わりなのかもしれません。といって機械の導入するにはサッカーはあまりにも普及しすぎています。全世界を同じ環境にできるでしょうか?
 ちなみに、明らかな誤審に関しても日本のテレビ放送では「ん?今のは微妙な判定でした」とか「オフサイドのようにも見えましたが」などと曖昧な表現しかしません。ランパードの幻のゴールやテベスのオフサイドのゴールでも同じでした。
 間違ったことをはっきり間違いだと指摘できなければ視聴者には伝わりません。視聴者だって目が肥えてくるわけですから、そのうちテレビ放送は飽きられてしまうと思います。

 この大会の得点王は4人。ゴール数は5。ビジャとフォルランはともかく、ミュラー、スナイデルは予想できませんでした。各リーグの得点王をみると、メッシ無得点、ドログバ1点、ディナターレ無得点でした。また歴代の得点王でももC・ロナウド1点、ルーニー無得点、カカ無得点でした。期待通りだったのはイグアイン、フォルラン、クローゼくらいでしょうか。
 90年以降、W杯優勝や得点王にからむと、例外なくその年のバロンドールを受賞しています。今年は誰?スナイデル?イニエスタ?カシージャスかな?

 ピッチ内では見どころの少ない大会だったと思います。冬の大会ということで後半にだれる試合はあまりなかったものの、インテルの影響なのか守備的な試合が目立ったように思います。驚くほどのスーパーゴールもありませんでした。もしかしたら本田のフリーキックがベストなのでは!?
 でも最後に笑ったのは攻撃的な国。90年大会と同じ構図でしたね。もブラジルとオランダの変貌ぶりにはがっかりしました。アルゼンチンの守備には笑いました。

 最後に、この大会を象徴する出来事を。後に残るのは結果だけ。30年後くらいに振り返ったとき、おそらくこのような大会として記憶されていることでしょう。
 
 ジンクスが破られた大会

 開催国の一次リーグ敗退
 欧州外での欧州勢優勝
 非開催国が初優勝を飾る

 新たな歴史が作られた大会としても記憶に残るでしょう。

 もちろん、日本代表も歴史を作りました。
 この結果を冷静にみつめ、4年後に生かしたほしいと思います。2006年のような失敗はもうナシです。
 4年後はメンバーの7割がヨーロッパ組、Jリーグの若手が虎視眈々とメンバー入りを狙っている、そんな状況だったらいいですね。
 
 次は2014年ブラジル。そのあとのオリンピックもブラジル。これからはブラジルに注目です!


 

 
 悲願達成・・・
 ちょいと違和感がありますが、とうとうスペインがW杯を制覇しました。
 得点8も失点2も過去最少記録でした。失点はいずれも事故みたいなもので、得点は相手を切り崩したほぼ完璧なゴールばかりでした。点差はともかく、圧勝に近いかたちでの優勝ともいえます。決勝も含め、イマイチの内容ながら頂点に立ってしまったわけですから、このチームの強さがうかがえます。
 優勝候補筆頭の国が勝ったためしのないW杯で、一番人気がそのまま優勝。もう一度言いますが、内容がよくないながらの優勝です。フェルナンド・トーレス、セスク・ファブレガスが万全だったらどれだけ強かったんだろうと思います。
 技術がありながらも勝てなかったのは代表チームの結束力と勝者のメンタリティの欠如でした。ユーロ制覇で全てが変わりました。
 今大会でも、いつものスペインらしく、あっさり負けそうになる場面が何度もありました。 カシージャスのセーブがなければベスト4にすらたどり着けず、やっぱりいつものスペインか、で終わってしまったでしょう。キャプテンの奮闘と、終盤で決め切る決定力はこれまでの同国には到底みられない強さだったように思います。カードが飛び交った決勝戦は残念でしたが、大会を振り返ってみればもっとも上手く、美しく、そして力強いチームが勝ったということで妥当な結果だと思います。
 普段の大会はこうはいきませんでした。大会ナンバーワンチームは優勝国ではなく、3位や4位のチームでした。そういう意味でもスペインの優勝には納得です。
 ところで決勝戦の観客席には両国の王室関係者が集まっていました。王室を持つ国家の優勝は66年のイングランしかありませんでしたので、今回はそれ以来。
 オランダ側は誰だったのでしょう?皇太子か、女王のご主人でしょうか?表彰式でファンバルマイク監督を慰めていたのが印象的でした。
 一方のスペインはソフィア王妃。バルセロナオリンピックの時に見て、実に綺麗な王妃だなあと思ったのを覚えています。おそらく60歳を越えているでしょうが、相変わらず気品があって御美しい方ですな。王妃はテニスの全仏オープンでナダルを応援してましたけど、サッカーも勝ちましたね。

 しかし・・・
 心情としてはオランダに勝ってほしかった・・・
 大会前、ブラジル、アルゼンチン、スペイン、ドイツの4つのなかから優勝国が出る(アルゼンチンは保険のようなもので、実質は3カ国)、と言い切ったこともあってスペインの優勝にはほっとしているのですが、ここまで現実的なサッカーで勝ちにきた以上、オランダに優勝してほしかったですね。
 悲願というのはオランダにこそふさわしい言葉です。スペインは4位が一度あるだけで、W杯制覇に近づくことすらできませんでした。オランダは2度の準優勝、準決勝のPK負けなど、あと一歩が何回もあったのです。
 もともとはオランダの応援ながら、今回もダメだろうと思い優勝候補からは外しました。ブラジルに勝つイメージがなかったからです。それがブラジル撃破。オランダらしからぬ勝負強さで。
 こうなると俄然、オランダ応援に熱が入ります。自分の予想が当たるとか当たらないはどうでもよく、オランダに勝ってほしい気持ちになりました。
 結果は妥当とはいいながらも、惜しかった。勝ってもおかしくなかった。ロッベンが外した瞬間、78年のレンセンブリンクを思い出した人も多いでしょう。あれが決まっていれば。イニエスタのゴールにしても二つ前のプレーはオフサイドでもおかしくありませんでした。
 これでオランダは3度目の決勝も勝てず。魅力的なサッカーで称賛されても頂点には立てず、現実的なサッカーで勝ちに来たのにやっぱり勝てず。どうすりゃいいんだ?ということになりました。
 うがった見方をすれば、スタイルを捨ててまで勝ちにこだわったのに勝てなかったことで、やっぱりいつものオランダサッカーがいいのではないか、というところに落ち着けば悪くないと思います。正直なところ、あんなオランダは見たくありませんでした。勝てなかったことで、またクライフ哲学に戻るのでしょうか?

 ちなみに見たくなかったのは決勝のPK戦。2大会も続けて見せられてはたまったものではありません。しかも両チームはPKにめっぽう弱い。
 ユーロ、W杯を合わせると、スペインが1勝3敗、オランダが1勝4敗。PKまで行かなくて幸いでした。


 この大会の総ゴールは145。前回よりも低く、史上最悪だった90年大会に匹敵します。ジャブラニの影響が大きいと思いますが、予選リーグでの消極的な試合も一因でしょう。逆にあまり点が入らない決勝トーナメントでは16試合で44点はいりました。この数大会では最多です。攻撃的なチームが残るにつれて、得点が入るようになってきたのはうれしい限りです。
 様々なジンクスが破られ、12カ国目の決勝進出国と8カ国目の優勝国が誕生した今大会。唯一、無敗で大会を終えたのがニュージーランドだったのが印象的でした。
 
 ついに決勝まできました。
 その前に3位決定戦があり、ドイツが勝ちました。3決は残酷な試合で、すでに夢を断たれた者同士が戦うことを余儀なくされる悲しい試合でもあります。
 幸い、ほぼ毎回のように得点王や開催国がからみ、また試合自体も点が入りやすいため面白いのですが、そろそろ廃止したほうがいいのではないでしょうか?ドイツ関係者がインフルエンザにかかったのも無理なからぬことだと思います。厳しい戦いに敗れ、気が緩んだとて責められることではありません。
 今回は廃止論が展開されることはあまりなかったにせよ、近い将来の廃止を望みます。

 ということで残すは決勝のみ。
 組み合わせが決まった時、漠然とした予想を立てました。それによると決勝はオランダ-スペイン。予想というより希望というか願望というか欲望でしょうか。現実的な予想はブラジル-ドイツ、ブラジル-スペインでした。
 オランダが準々決勝のブラジル戦を越えられるとは思えなかったし、スペインも苦手のイタリア、ドイツに敗れるのではないかと悲観していました。
 まあ、見事に決勝まできたのですから、世界中のフットボールファンも大喜びでしょう。これでオランダがいつものオランダだったら言うことなしなのですが・・・それはもう触れないことにしましょう。初めて勝利だけを目的にやってきたオランダが、実際にはどのくらい強いのか見てみたい気がします。
 巷ではバルサ決戦とか、本家対分家とか、クライフ杯とか言われている決勝。ミケルスやクライフを知る世代にとっては隔世の感があるでしょう。バスセロナ市民にはオランダにクライフの影を見ているでしょう。
 W杯でもユーロでもなかったカード。2002年にブラジル-ドイツが実現した以上、これほど待ち望まれた対戦はないでしょう。それがW杯決勝で会いまみえる。
 多くは語りません。予想もしません。素晴らしい決勝になってほしい。それだけです。

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 史上最低を記録するだとうと思われた得点も、珍しく決勝トーナメントでよく入り、なんとか前回並みの水準にまで上がってきました。決勝ではどちらも得点 しての決着を期待したいところ。
 もうすぐ宴の終わり・・・あっと言う間の一カ月でした。

 
 タコのパウルくんが茹でダコのされるとかサラダになってしまうとか、スペインに亡命するとかなんとか騒がれています。でも、ドイツ人がタコを食べるのは想像できませんが、スペイン人なら食べてしまうでしょう。亡命先として都合がいいのか、どうなのか・・・
 それはともかく、パウルくんの予言通りスペインが勝ったことで、最後まで残っていたジンクスが崩れることになりました。
 くどいようですが、今大会で葬られた歴史をみてみたいと思います。

開催国のグループリーグ突破
 過去、アメリカ、日本、韓国などの弱小国ですら突破し続けてきたグループリーグ。ついに開催国が予選リーグで敗れてしまいました。過去の開催国をみると、幸運に恵まれたのもずいぶんありました。アメリカはグループ3位でも突破できた時代で、ギリギリの3位で通過。82年のスペインは、ホンジュラス戦の終了直前で追い付き、ユーゴスラビア戦では失敗したPKをやり直させてもらうというあからさまな贔屓で突破、2002年の韓国は9人のポルトガルが相手でした。
 とまあ、危なっかしい大会もあったわけで、そうした幸運も南アフリカの地には届かなかったのでしょう。厳しい組み合わせにも泣きました。しかしユーロでは開催国が軒並み敗退しているので、W杯でもやっとか、という印象です。南アフリカも得失点差でしたのでよくやったと思います。

欧州外での南米勢優勝=欧州勢は欧州でのみ優勝
 ウルグアイが散ったことで決勝が欧州決戦になりました。その時点でジンクス崩壊です。アルゼンチンがあの監督でしたので、実質的な期待はブラジルだけだったんですけどね。そのブラジルは次回の開催国。今回も勝って次も勝つのはちょっと難しい。ならば優勝は地元開催までとっておこう、ということでジンクスが崩れる可能性は大いにありました。
 そもそも欧州勢は欧州外の大会でも決勝までは進んでいるのです。進めなかったのは1930年の第一回大会のみ。一方の南米勢は欧州の大会で決勝に進んだのは3回しかありません。

開催国以外での初優勝
 オランダ、スペインいずれが勝っても初優勝。フランス以来8カ国目の優勝国誕生です。非優勝経験国同士の決勝は78年以来。開催国に関係しないのは54年以来。初優勝を地元以外で飾るのは58年のブラジル以来になります。
 オランダは負けると3度目の準優勝・・・ありがたくない記録です。

4大国の崩壊
 W杯の歴史はビッグ4と呼ばれるブラジル、ドイツ、イタリア、アルゼンチンによって築かれてきました。W杯のあらゆる記録のほとんどがこの4カ国に関係しています。
 そんな4大国がいずれも決勝に進めない。これは19回の歴史で初めてのこと。

前回優勝、準優勝国の予選リーグ敗退
 これはまあジンクスというほどのものではありませんが、史上初めてのことでした。

ブラジルの敗戦
 これもジンクスとは言えませんが、ブラジルが欧州外の大会で敗戦したのは1950年の地元開催”マラカナンの悲劇”以来60年ぶり。

 強豪国のたらいまわし状態だった優勝が未経験国によって争われる。これほど劇的に歴史が変わった大会はありません。決勝戦はどうなるのでしょうか?
 スペインが優勝するとなると、やはりいくつかのジンクスを打ち破ることになります。例えば・・・
 
初戦を敗戦したチームは優勝できない。
グループリーグで敗戦した国は82年以降、優勝していない。しかし準優勝は82年から5大会連続出ている。

 グループリーグで敗戦を経験した国の優勝は過去3度あるが、54年の西ドイツは第2戦、74年の西ドイツと78年のアルゼンチンは消化試合、しかも開催国だった。

 そして、なかなかレアな記録だと思うのですが、スペインがPK戦に持ち越さずに勝った場合、この大会を無敗で終えたチームがいなくなります。で唯一、予選リーグを3引き分けで終えたニュージーランドのみが一度も負けなかった国ということに。
 過去の大会では、PK戦負けや得失点差など、無敗で去った国はいくつもあります。前回大会ではイタリア、フランス、イングランド、スイス、アルゼンチンの5カ国が最後まで負けませんでした。
 今回は全チームが敗戦を経験。一度も負けなかったのが、もっとも弱いとみられたニュージーランド。不思議な大会です。



 タコにも性別があるんだろうか?あるんだろうなあ。
 一躍、有名になったタコのパウルくんは今回も正しかった。サラダにされなきゃいいけど・・・

 フットボールがいかに相対性を持った性質であることがわかる一戦だった。フットボールの試合は相対的な実力差で展開がきまるからだ。
 決勝トーナメントで相手を圧倒してきたドイツが、この日は何もできなかった。ミュラーの出場停止や疲労といった2次的なものではない。相手のレベルがぐっと上がっただけのこと。それほどガチガチに守るでもないドイツは、スペインにとっては組みしやすい相手だったといえる。
 簡単にいえば実力の差がはっきり出た試合である。チーム力、個の力などどれをとってもスペインのほうが上。それでも勝利は最後までおぼつかなかった。エジルにもう少し経験があれば得点に至っていたかもしれない。さほど身長がないスペインがセットプレーで得点というのも幸運だった。
 しかし、うまくいかないなかでも勝ちきる強さをとうとう手に入れた。ユーロ制覇では半信半疑だったスペインもこれで完全に勝者のメンタリティが備わったといっていいだろう。

スペイン1-0ドイツ
 技術力ではドイツを凌ぐスペインと、歴史の力が侮れないドイツといった構図。終わってみればスペインの完勝でした。フェルナンド・トーレスをあきらめ、ペドロを先発させたのが大きい。来季から加わるビジャを含めフィールドに7人のバルサプレーヤーが並んだ布陣は準々決勝までの停滞した流れを完全に断ち切りました。
 そのわりにはビジャの動きがイマイチ。シャビ、イニエスタの展開力でゴール前まで迫るもなかなか中央を割れませんでした。けれども攻めていれば失点する必要もなく、またスペインはスイス戦のように焦るようなこともありませんでした。ドイツ相手にこの試合です。スペインは本当の強さを手に入れたんだなあ、という印象。苦しい時にセットプレーで勝ちをもぎ取るなんて強豪国にしかできない芸当ですからね。
 ともかく、ここを乗り切ったことでおそらく優勝することになるでしょう。「オランダ」というブランド力を意識しなければ、オランダ戦といえども試合を支配することができると思います。
 一方のドイツは、まあこんなもんでしょう。このレベルまでくると、いかに才能豊かなエジルといえど経験不足を露呈させてしまいました。前半終了直前のチャンスも、普段の落ち着きがあれば反対側にトラップするか、あるいは左サイドにいたポドルスキ-にパスするなどの選択ができたはず。中盤を指揮するシュバインシュタイガーも積極的い上がってけませんでしたね。この辺りは真のリーダー不在、すなわちバラック不在がついに響いたか、というところですが、バラックがいたところで勝てたかどうかは怪しいですが。ただ得意のPKに持ち込むことはできたかもしれませんね。
 とはいえ、直前にレギュラーを5人も失ったチームがよくやったと思います。まだ若いですからね。極端なはなし、クローゼ以外の全員が次回大会も普通に出られます。次回でも平均年齢は28~29歳でしょう。しかも、このメンバーが安泰かといえば、そうとも限りません。それが大国の強みです。
 これを機に、エジル、ケジラ、ミュラー等はビッグクラブでプレーすることになるでしょう。2012年のユーロが早くも楽しみです。このチームは今後かなり強くなるでしょう。珍しくドイツが楽しみです。
 しかし今回もドイツはドイツでしたね。この3大会でベスト4の顔ぶれは全て異なるのですが、ドイツだけは外れませんでした。
 

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準決勝が2試合とも「優勝経験国-未経験国」になった例は過去4度ありました。いずれも優勝経験国が勝っています。今回はどちらも勝ってしまいました。優勝経験国を破って決勝に進むこと自体が58年のスゥエーデン以来。決勝に4大国(ブラジル、ドイツ、イタリア、アルゼンチン)がいないのも史上初。
 ちなみにいうと、欧州勢は1954年以来、ずっと決勝に進んでいます。欧州勢が決勝にいなかったのは第1回だけなんですね(50年は決勝リーグのため決勝戦はなし)、実は。

 さあ、決勝です。
 スペインは12カ国目の決勝進出国。決勝では史上8カ国目の優勝国が誕生します。このような組み合わせになったのは78年のオランダ-アルゼンチン以来。開催国に関係しないとなると54年の西ドイツ-ハンガリー以来56年ぶりのこと。開催国以外で初優勝が生まれるのもこの時以来になります。
 いろいろな意味で歴史を変え、新しい歴史を作ろうとしている両国。世界中のフットボールファンがずっと前から観たかった一戦がついに実現。しかもW杯の決勝戦です。キーワードは言うまでもなく、ヨハン・クライフ。
 「クライフの末裔たち」の決戦。非常に楽しみです。
 できればクライフに審判をやってほしいくらいですな。もちろんダメだしの審判。スペクタクルフットボールの番人としてね。
「おい、シャビ!そこでボールを下げるな。果敢に前に行くんだ。」
「ペドロ!がむしゃらに走るんじゃない!ボールのほうがお前より速いんだ。考えて走れ!」
「ロッベンよ、もっと回りをよく見るんだ、シュートだけが能じゃないぞ」
「ええーい、両チームとももっと激しく攻めんかい!」
なんて・・・・
 
 
 ファン・ボメルの必死な姿にW杯の重みをみた思いがする。
 こう表現すると、「したたか」を連発して不評な解説者と同じになってしまいそうだが、淡白な印象だったオランダ代表のあの姿をみると、やっぱりW杯なんだたあと感じざるをえなかった。
 もともと欧州勢は中南米勢に比べると、代表チームへの意識はさほど高くない。すでに富も名声も得た彼らにとって代表チームは、いわば課外活動のようなものだ。中南米諸国のようにサッカーでアピールするような国でもない。地元の欧州開催ではさすがに本気になるが、それ以外だと真剣度に欠ける。というと言い過ぎかもしれないが、欧州以外ではあまり本気にはならない、と指摘する専門家は多い。逆にユーロなどは試合のレベルが高い。
 そんな今回は欧州外の開催。オランダが本気になってW杯を獲りにきている。オランダに残された最後のビッグタイトル。チャンピオンズリーグ決勝さえ戦ったファン・ボメルが、早く試合を終わらせろと主審に詰め寄ったロスタイム。その形相に4年に一度の重さを実感したのである。
 南米好調と言われ、決勝トーナメントに6チームしか進めなかった欧州勢だが、終わってみれば欧州勢以外には一度も負けなかった(3位決定戦は別)。これでジンクスが破れ、欧州外開催で欧州の国が優勝する。しかも準決勝の第一試合で決定した。南米の大会が一転、欧州の大会となった。

オランダ3-2ウルグアイ
 オランダの出来がよくありませんでした。それでも3点を奪い逃げ切りました。今大会のオランダをみていると、例えばユーロ2008の予選リーグのような快勝劇はありません。内容にも疑問がつく試合ばかり。オランダ本来の攻撃サッカーを封印していることもあるのでしょう。
 それにしてもこの準決勝はイマイチ。コンディションがよくない。ここまでくれば各チームとも疲労がたまってくるのは事実でしょう。にしてもオランダの動きは重かった。デヨングの出場停止も響きました。
 オランダはすでに決勝に頭がいっていたのではないでしょうか?オランダはよくも悪くも見切りが早いことで知られています。ユーロ92の準決勝では相手が格下デンマークということで甘く見ていました。予選リーグで快勝しているドイツが決勝の対戦相手ということで、もはや優勝が見えた!と決めつけてしまったようです。
 ファンブロンクホルストのロングシュートという予期せぬ先制点で、オランダはゆとりを持ちすぎました。追加点が奪えず、隙を突かれての同点。
 ファンデスファールトを入れて巻き返しに出るも、後半はウルグアイペース。むしろ押し込まれる場面が多くなりました。これがW杯の準決勝なのでしょう。決勝への道のりはあまりにも長いのです。非優勝経験国がなかなか決勝に進めないのも準決勝の準決勝故。
 しかし、この大会のオランダはしぶとい。おそらくオフサイドのゴールで2点目を取ると、すぐに3点目。フォルランが退いてから1点返したウルグアイは見事でしたが、オランダらしからぬしぶとさと粘りはどうしたことでしょうか。
 これまでのオランダは美しく、上手く、強い国でした。けれども勝つために必要な闘争心や執念、粘り、チームワークといったものがありませんでした。特にチームワークです。いつ優勝してもおかしくないのに、いつも内紛や不協和音といったピッチ外の騒動で負けてきました。
 今回のチームは、ゴールを決めた選手を全員で祝福する光景が見られます。以前のオランダは白人選手と黒人選手の対立が頻繁に起こっていたためチームワークがなかなか成立しませんでした。今回は故意に黒人を少なくしているのでしょうか。これまでのような不和がありません。
 欠けていた唯一の要素が加わったことで、執念や粘り、しぶとさも生まれたのだと思います。個々の能力では90年や98年に劣りながらも彼らが達成できなかった決勝までやってきました。同時に88年のユーロ優勝以降、鬼門だった準決勝をようやく突破。3度のユーロと1度のW杯準決勝のうち3回がPK負けという勝負弱さも克服しました。
 一方のウルグアイは大健闘といっていいでしょう。南米5位からの躍進。この大会のトレンドとなった堅守速攻をずっと昔からやってきた国だけに、はまったときの強さは光りました。惜しむらくは2点目のオフサイド。ただし続けて3点目を奪われてしまったのが痛かった。
 次回はスアレスがエースとして君臨するでしょう。1950年に優勝を飾ったブラジルが舞台だけに、2014年も期待できると思います。

 準決勝でこんなに点が入ったのは82年のフランス-西ドイツ以来。優勝経験国や開催国が順当に勝ってしまう準決勝が続いていましたが、今回は最後まで手に汗握る試合でした。
 これで決勝トーナメントでの得点は、3試合を残して37点。近年の大会に比べるとよく入っています。ミドルシュートがバンバン入るようになってきましたね。

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 これで、決勝を待たずして欧州勢の優勝が決定。オランダ、スペイン、ドイツのいずれかがW杯を掲げます。スペインがドイツに勝てばその時点で史上8カ国目の優勝国誕生。新しい歴史が誕生します。
 ここまできたらオランダ-スペインで新しい歴史を作ってほしい気もします。オランダが勝負に徹したサッカーをしている以上、バルセロナとクライフをキーワードにした夢の対決とはいきませんが、過去数大会に渡って退屈な決勝を見せられてきただけに、楽しみな一戦になることは間違いありません。
 もっともオランダはスペインにもドイツにも勝てないと思います。守備に重きを置いているわりに失点が多すぎます。6試合で5失点。ここ4試合での失点です。2点差ついてからの失点が多いのも気になります。守備陣が安定しているとは言えません。しかも全てカウンターのチームとの対戦でこれです。スペインはもちろん、ドイツにもやられるでしょう。過去4大会の優勝国はいずれも3失点以内で優勝していることからも苦しいのではないでしょうか。
 ならば、今夜は事実上の決勝戦になります。ミュラーの出場停止、セスク・ファブレガスが欠場の恐れと、どちらも不安要素を抱えます。スペインが技術力で圧倒しない限り、経験豊富なドイツに屈することになるでしょう。

 
 準決勝まで来ましたね。意外な顔ぶれのウルグアイ-オランダ、順当なドイツ-スペイン。
 ここで願うのはどうかPK戦決着になりませんように、ということ。86年の準々決勝3試合、90年準決勝2試合がいずれもPK戦だったことを思い出します。2度の決勝戦も。当事国じゃなくてもドキドキするのに、当事国として見てしまったPK戦はやっぱり体には悪いものでした。勝っても負けてもPK戦は健康上よくない。
 というわけで準決勝、決勝がちゃんと90分か120分で決まってくれることを望みます。

 さて、データ的なものを少し。
 ウルグアイが勝つと、80年ぶりの決勝戦。なんと第一回以来。欧州以外では南米が優勝するジンクスも守れる可能性が出てきます。過去の準決勝は1勝2敗。54年には優勝未経験のハンガリーに敗れています。
 オランダは3度目の決勝進出を狙うも、準決勝を戦ったのは過去1回(74年、78年は2次リーグ方式で準決勝はなし)。98年のブラジル戦で、PK戦敗退。オランダが勝つとこの時点で欧州勢の制覇が決定します。非優勝経験国が決勝に進むとなると98年のフランス以来。開催国以外では78年のオランダ以来。
 ドイツはこれで11度目の準決勝。過去の準決勝は6勝4敗。34年チェコスロバキア、58年スゥエーデン、70年と2006年はイタリアに敗れています。いずれも欧州勢でした。勝つと8度目の決勝進出。もちろん史上最多です。54年以降、少なくとも3大会に一度は決勝に進む歴史も途切れません。
 スペインは初めての準決勝。勝てばもちろん初の決勝進出。相手は優勝経験国。このような状況で準決勝に臨むのは2006年ポルトガル、2002年の韓国、トルコ、94年のブルガリア、86年のベルギー、フランス、82年のポーランド、フランス、66年のソ連、62年のチリがありますが、全て敗退しています・・・58年のスゥエーデンが西ドイツに、54年のハンガリーがウルグアイに勝った例があるだけ。スペインとしては嫌なデータです。これを撥ね退けて決勝に進むと、フランス以来史上12カ国目の決勝進出国になります。が、非開催国としては74年のオランダ以来達成されていません。準決勝を勝って、となると58年のブラジル以来になります。W杯の決勝戦はかくも遠い道のりなんですね・・・
 次は決勝戦の組み合わせ。
 ウルグアイ-ドイツ
 南米と欧州の優勝経験国同士の決戦。欧州以外の大会で見られるもっとも多い決勝戦のパターン。統計上の確率も圧倒的に高い。両国の決勝戦は初めて。
 ウルグアイ-スペイン
 優勝経験国が非優勝経験国を迎え撃つ。98年ブラジル-フランス以来のパターン。開催国に関係しないとなると、62年のブラジル-チェコ以来だが、決勝進出が初めてとなると38年のイタリア-ハンガリー以来。初のスペイン語圏決戦、初の旧宗主国-旧植民地決戦にもなります。
 オランダ-ドイツ
 史上3度目の同一カード。その他はウルグアイ-スペインと同じパターン。ただし欧州以外での欧州決戦は史上初。隣国同士の対戦は前回イタリア-フランス戦に続き史上4度目。
 オランダ-スペイン
 ともに勝てば初優勝。このような状況での決勝戦は78年以来。開催国に関係しないとなると54年の西ドイツ-ハンガリー以来。

 どこが進むんでしょうか?可能性としては下2つですかね。
 では展望です。

 ウルグアイ-オランダ
 波乱が起こらない準決勝。ならばオランダがすんなりくるでしょうか。しかし、ほとんどの大会が優勝経験国同士の決勝戦であることを考えると、むしろオランダが勝つ方が波乱。このようなケースで非優勝経験国が勝った例はほとんどありません。ウルグアイがしっかりジンクスを守ってしまうかもしれません。
 それでもオランダが勝つでしょう。展開によっては苦しむかもしれません。延長、PKもあるでしょう。しかし最後に笑うのはオランダ。ともに出場停止が2名。ウルグアイは他にも2名ほど負傷欠場がささやかれています。層の厚さでいうとオランダの影響度合いはあまりないでしょう。ウルグアイはスアレス不在が響きます。今季のオランダリーグ得点王だけに、この試合で見られないのは残念です。
 守備を基本とした両チームながら、力関係からいってオランダが攻める時間帯が長くなるでしょう。序盤に先制できれば、あとは時間をやり過ごし、決勝に備える展開になりそうです。万が一先制される、あるいは追いつかれても、2点は取れます。ウルグアイのここまでの相手を考えると、本当に堅守なのかどうかは疑問です。韓国戦でも押し込まれる場面が何度もありました。
 ウルグアイは取れても1点でしょうか。フォルラン一人となると無得点の可能性が高い。ウルグアイが勝つには0-0でPKに持ち込むか、偶然奪った1点を必死に守るか。純粋な戦力比較では圧倒的にオランダ優勢とみます。
 しかし、W杯の歴史は侮れません。
W杯での過去の対戦は1試合のみ。74年の1次リーグでトータル・フットボールのオランダが2-0で勝利しています。この時のオランダは2次リーグでブラジルにも2-0で勝っているんですね。
 ちなみに、公式戦での対戦はもう1試合あります。1980年から81年にかけて行われたコパ・デ・オロ(La Copa de Oro)。歴代のW杯優勝国を集めて開催されたミニトーナメントで、オランダはイングランドの代わりに出場しました。開催地は第一回のW杯開催国でもあるウルグアイ。この時はウルグアイが2-0で勝っています。ちょいと不気味なデータですな。

 ドイツ-スペイン
 予測不能。
 これまでの戦績からドイツ優勢の声が聞かれそうですが、それは疑問です。イングランド、アルゼンチンともに大して機能していないチームでした。スペイン相手に同じことができるかどうか分かりません。出場停止のミュラーの穴はトロホウスキが埋めるにしても、守備陣はけっこう隙があると思います。イングランド戦での失点も幻のゴールも含めやや緩慢だった印象があります。スペインはわずかな綻びも見逃してくれません。90分間耐えらるかどうか。
 ただしスペインも完璧に機能はしていません。パスはよく回るのですが、似たような距離とスピードで変化がない。人もさほど動かず、流動性に欠ける場面もあります。確かにボールは人よりも速く動きます。が、一人ひとりがもっと走ってスペースを作らないと苦しいかなと思います。ドイツのプレスはかなり厳しいはずです。
 興味深いのはスペインの布陣。不調のフェルナンド・トーレスを試す余裕はもうありません。手術明けの彼を5試合も使ったのは期待の表れですが、もう見切りはつけたでしょう。なおもトーレスに拘ると攻撃が機能しない恐れがあります。一方でセスク・ファブレガスを最初から使ったら面白そう。PKを外したのが気になるシャビ・アロンソに代えてペドロを入れ「ほぼバルサ」でくるとドイツを圧倒する攻撃が見られるかもしれません。セスクが90分できるのか不安ですが。
 ドイツの攻撃はこれまで通りで問題ないと思います。スペインの最終ラインをみると若いピケに不安があり、プジョルは優秀ですが高さに難ありです。上がりすぎるきらいのあるセルヒオ・ラモスの裏をつき、クローゼの頭でガツン!あり得ます。
 両チームが持てる能力を発揮した場合、わずかながらスペインのほうが上だとみています。しかし、スペインにあるのは技術力だけ。ユーロ優勝で手にした勝者のメンタリティもドイツには遠く及びません。劣勢になったときに発揮される歴史や伝統の力、ゲルマン魂、不屈の闘争心-これを「ドイツ力」と呼びますが-に耐えられるのか。
 スペインはかつてない重圧のなかで闘います。ドイツは慣れています。今大会のドイツはドイツ力を見せるまでもなく勝ち進んできました。これにいつものドイツが放つ見えざる力が出てきたらどうなるでしょう。もしかしたらワンサイドゲームになりかねません。ユーロとW杯では同じドイツでも全くの別人。優勝経験国とそうでない国との差がもっとも出てしまう準決勝。スペインにとっては今大会最大の試練です。

 予想としてはオランダ-ドイツの決勝戦です。さてさて。
 
 
 86年のマラドーナを見たのは小学生のときでした。この世代にしては珍しく私はマラドーナ信者ではありません。が周囲には信者がいます。
 こんなザルみたいな守備で勝てるわけがない、と彼らに言うと、彼らも同意はするのですが、それでもマラドーナが何とかしてくれる、と思っていたようです。もはや盲目の愛ですな。
 準々決勝の2日目は勝者、試合展開とも予想通り。ドイツがあれほど大差で勝つとは思いませんでしたが・・・残念ながらあの守備陣ではしょうがないでしょう。
 PKを献上し、もらったPKを外した時、やっぱりスペインはスペインか、と思ってしまいました。ユーロを制す前のスペインならここで力尽きていたでしょう。どうやら彼らは本当に勝者のメンタリティを手に入れたようです。
 このブロックの準決勝ドイツースペインは予想通り。ただ、本調子ではないスペインとここまで成長したドイツは意外でした。

ドイツ4-0アルゼンチン
 格下相手では露呈しなかった守備のお粗末さがやはり出てしまいました。ドイツはそこを突いての先制。その後の攻勢でクローゼが決定機を外すと、試合を落ち着かせます。
 アルゼンチンは前半の終盤から前がかりになり、シュートを繰り出します。が、ドイツほどの決定的な場面はなく、放つシュートも打たされていたように思います。アルゼンチンは個人技で前線まで行き、そこで中央を突破できず、サイドに開く展開。しかし高さがないため、有効ではありません。攻撃が個人頼みの単発で厚みもありませんでした。
 ドイツは後半20分前後までの猛攻を耐えます。イングランド戦もそうでしたが、敢えて攻めさせたのでしょうか?自陣に引いて跳ね返すに終始します。ただし、ただ跳ね返すのではなく繋いで攻撃に移そうと姿勢が見られました。そこをカットされて再び守勢に転じるのもイングランド戦と同じ。そしてその後もイングランド戦のコピーのように鮮やかな速攻を繰り出し、3点も追加。センターバック4人を並べたディフェンスではスピードに突いていけず、次々と突破を許してしまいました。
 ドイツの速攻は美しく鮮やかでした。同じカウンターといってもイタリアのように縦パス一本で得点を奪うのではなく、エジルやミュラーの展開力で完全に相手を崩してからの得点ですので面白いのですね。決める人がいるというのも心強いところ。まあ、クローゼは危なっかしいファールもしましたがね。
 一方のアルゼンチンはこんなもんでしょう。最終的な勝負の分かれ目は個人能力の差だとしても、結局サッカーは守備と組織がしっかりしていないと戦えないということ。個人能力だけで準々決勝に来ることはできても、大国が本気になる準々決勝以降は戦術なしに勝てるほど甘くはありません。メッシを生かすとか生かさない以前にアルゼンチンの負けです。
 敗因は監督に尽きます。守備組織を構築できなかったこと、メッシを生かすシステムを最後まで見つけられなかったことが決定的。そもそも見つけようとしたかも怪しいもの。メッシに自由を与えただけに過ぎませんでした。この試合でもメッシが引いてボールをもらう場面が多く、イグアインはともかく、足元でボールをもらいたいテベスも下がってきてしまい、メッシとダブってしまったように見受けられました。パサータイプを並べてメッシを前線に残すバルセロナ様式でやれば、とも思いますが、どっちにしてもマラドーナでは無理だったでしょう。
 それでも5試合で30本ものシュートを打ったメッシはさすがです。しかし無得点で終わったのは、バルセロナのように味方がスペースを作ってくれたりディフェンスを引きつけてくれたりといった動きがなかったとともに、自身の不調もあったでしょう。バルサではポンポン決まっていたシュートも少し精度に欠けたように思います。
 得点はないがメッシは好調、とか言ってる解説者は考えを改めてほしいですね。フットボールはゴールが全て。その役割を期待されている選手が無得点でどうして好調なんでしょう?そう見えるかもしれませんがゴールが全てなんです、この競技は。
 ともかく、これでアルゼンチンは16年続けて準決勝に進めず。ブラジルとともに早々と大会をさることになりました。
 両者の敗戦は対照的で、ブラジルは規律に縛られ過ぎて修正能力と柔軟性を失くし、アルゼンチンは規律がなさ過ぎて修正力も柔軟性も持てなかった、といったところでしょう。ドゥンガらしさ、マラドーナらしさがでましたな。

スペイン1-0パラグアイ
 98年の予選リーグのようにパラグアイが耐えて無失点で切り抜ける展開。ただ、パラグアイも前に出る展開があったために前線のスペースは意外に空いていました。そこを突けないスペインは未だ本調子とは言えないでしょう。フェルナンド・トーレスの不調ばかりが原因ではなく、ボールが動くわりに人の動きがないように思います。あまりに完璧すぎて型にはまった感じです。まあ、それでも勝つんですから本当の強さを手に入れたということなんでしょうか。
 パラグアイは大健闘。5試合で得点3、失点2ですからよくやったでしょう。もしかして決勝がウルグアイーパラグアイなんていう冗談みたいな組み合わせになるのでは?なんて想像してしまいました。惜しむらくは、決定力とPKか。フォルラン並みのフォワードがいれば番狂わせも起こせたかもしれません。
 さて、スペインはついにセスク・ファブレガス登場。バルセロナベースのスペイン代表でメッシ的な役割ができる選手です。メッシとは同い年で同じカンテラ育ちなのも似ています。もちろん故障明けですので万全とはいえません。しかしセスクが入って攻撃に躍動感が出てくるようになったのも確かです。もともとスペインは中盤を厚くしてワントップというスタイルで勝ってきましたので、この形がいいでしょう。
 それにしても最後にはペドロまで投入。カンテラ出身のセスクと来季から加入するビジャも含めバルサ関係者が8人もピッチにいました。メッシがスペイン国籍を取っておけばねえ・・・
 いまのところスペインの不安はピケの守備とビジャの独りよがりか。ピケはまだ若いこともあってなんとなく不安定感が漂うんですね。ビジャは、ストライカーには必要な要素ではあるものの、自分一人でやってしまいたいプレーが目立ちます。得点したいんでしょうね。引きつけておいて見方に決定的なパスを出す作業も必要です。
 これでスペインは60年ぶりのベスト4。準々決勝を突破したのは初めてだそうです(50年は1次リーグ後に決勝リーグ)。


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 南米と欧州のバランスが逆転してしまいました。
 準決勝の勝ち上がり予想は、3つ当たりました。外れた一つがブラジル。個人的には勝ってほしいオランダが来たのはちょっと複雑です。
 ドイツ-スペインの準決勝は当初の予想通り。反対側はセルビア-ブラジルを予想していました。決勝トーナメントが始まった時点ではウルグアイ-ブラジルになりました。なのにブラジルがこけた。でもオランダうれしい、でもあのサッカーではちょっと嫌だ・・・・

 これでW杯はひとつのジンクスを破り歴史の転換を迎えます。
 つまり欧州以外の開催では南米が勝つという伝統を覆し、欧州勢が欧州以外で優勝することになります。可能性としてはドイツが4度目の戴冠。準決勝は事実上の決勝になります。
 スペインが勝った場合、8カ国目の優勝国が誕生することになります。地元開催以外で初優勝国が誕生となると、これは新しい歴史です。いずれしても当初挙げた候補4つ(ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、スペイン)から優勝国が出ます。
 オランダはアルゼンチンが来た場合のみチャンスだと思いましたが、ドイツ、スペインには勝てないでしょう。従来の攻撃的フットボールなら分かりませんでしたが、現実的サッカーでブラジルに勝ったので言っても仕方がありません。
 申し訳ありませんがウルグアイはここまででしょう。スアレスもいませんし、オランダに勝てるとは思いません。それにW杯の準決勝には波乱というものはありません。波乱は準々決勝までなのです。それ故、決勝にはいつもブラジル、ドイツのいずれかがいる。両国がいない場合にはイタリアかアルゼンチンがいる。この4大国のいずれも決勝に上がれなかったことは一度もありません。今回ドイツがスペインに負けると、このジンクスも崩れることになります。
 それでも万が一ウルグアイが80年ぶりに決勝に進み、60年ぶりに優勝してジンクスを守ってしまったら・・・モンテビデオのセンテナリオスタジアムで懺悔でもしましょう。
 
 準決勝の予想は、オランダとドイツ(スペイン)。 
 過去、準決勝の予想が難しかったことはありません。90年のイタリア-アルゼンチンだけが例外です。アルゼンチンの勝利はほとんど奇跡でしたけど。
 唯一、難解だったのが98年のオランダ-ブラジル。PKまでもつれこみました。今回のドイツ-スペインはそれ以上に難しい予想です。
 簡単に結論を言うと、戦力はスペインがやや有利、W杯での歴史や精神力、勝者のメンタリティではドイツが遥かに上。ドイツはこれが11回目の準決勝。スペインは準決勝を戦うこと自体が初めて。ということでドイツが勝つか!?分かりません。
 スペインは不調のトーレスにこだわると危ない。セスク、ペドロを先発させ「ほぼバルサ」で来たら面白い。ドイツはミュラー欠場がどう響くか?いや、このポジションはもともとトロホウスキでしたので影響度合いはあまりないか。
 2008ユーロ決勝の再戦。スペインはあの時ほど完璧ではなく、若い力が成長したドイツもあの時とは違います。そもそもユーロのドイツとW杯のドイツでは全く違います。楽しみな準決勝です。
 
 
 
 
 
 


 優勝候補筆頭に挙げていたブラジルが負けました。候補からは外しましたが、でも実は優勝してほしかったのがオランダ。なんだか矛盾するようですが、予想と希望は違いますからね。
 両国の対戦としては凡戦といっていいでしょう。時おり個人が光りましたが、チームとして、試合としては、レベルは高かったけれども、見るべきものはあまりなかったように思います。
 このサッカーでは、結果にかかわらずクライフやブラジル国民は納得しないだろう、と書きました。御大はたぶん今度も批判するでしょう。
 しかしクライフのためにサッカーをしているわけではありません。オランダはこれで決勝に行くでしょう。準決勝の出場停止者が2名ながら、ウルグアイ相手では大した影響もなさそうです。スアレスも出られませんし。
 一方のブラジルは大変なことになりました。94年や2002年、最強と言われた2006年よりも理論的には強かったと思います。ただ、規律や堅実と引き換えに、柔軟性や修正力が失われていたようです。
 それでもブラジルが負ける要素はほとんどなかった。自滅以外の何物でもありません。・・・あとは、次回大会は優勝が絶対使命で、連覇は厳しいだろうから今回はこの辺でお暇しようか、なんて心理が働いたのかな?それにしても前回のフランス戦に続き、セットプレーからの失点が響いて敗戦・・・悔やまれます。
 
 アフリカ最後の砦ガーナは惜しい試合でした。ギャンがPKを外しました。しかし予選リーグでは10人相手にPKを決めたのみ、しかも得失点差で勝ち上がってきた幸運に恵まれたのも確かです。強運尽きた・・・というPKだったように思えました。
 40年ぶりに準決勝に進むウルグアイ。古豪復活ですな。もともとタレント集団。代表チームが本腰を入れればこのくらいはできるんだ、というのを証明できたのではないでしょうか。対戦相手には恵まれたかもしれませんが、開催国のいるグループは想像以上に厳しい重圧がかかったはずです。この結果には選手も国民も満足でしょう。

オランダ2-1ブラジル
 直前のメンバー変更だったとはいえ、オランダの最終ラインは終始不安定だったように思います。スロヴァキア戦の時からさほどの変化も見られません。そのオランダから1点しか取れなかった時点でブラジルの命運が尽きたといえます。
 今回のブラジルはカウンターのチーム。オランダ戦でも前線まではスムーズにボールを運べました。ただし、出てこない相手だとカウンターにはならず、スピードに乗った展開にもなりません。普段のブラジルでしたら前線やサイドバックの連携や個人技で切り裂いていくところですが、今回の攻撃陣には創造力が欠落しているのは明らか。カカやロビーニョの単発に頼らざるをえませんでした。
 そのカカが不調、もしくは抑えられたら万事休す、とは各方面から指摘されていた通りです。ニウマールの投入も遅きに逸しました。
 理論的には最強ともいえた今回のセレソン。しかし、あまりに完璧な強さで勝ってきたため、このような状況を経験できなかったのも事実。連携ミスから失点すると、決して慌てる必要もないのに平常心を保つことができませんでした。規律を徹底し、組織力を高めたまではよかったが、想定外の場面に対する柔軟性、バランスが崩れたときの修正力に欠けたのは否めません。こんなことがあるからロナウジーニョを入れとけと言ったのに。国民は怒り嘆くでしょう。
 とはいえ、勝利が義務づけられているとなると、このような戦術をを取るのも致し方ないところ。オランダもそうですし。しかし、あまりにもブラジルらしさを殺しすぎましたね。決勝に上がったとしても、ドイツが相手だったら勝てなかったでしょう。それほど今回のブラジルには規律に縛られた故の柔軟性の欠如を感じました。
 さあ、大変ですドゥンガさん。
 94年がそうだったように「最低でも」優勝することでしか納得させることができない今回の戦い方。94年がそうだったように優勝しても批判を食らったでしょう。なのにベスト8で敗退。前回同様、セットプレーから一瞬の隙を突かれた上での敗戦。屈辱以外にどういったらいいのか?
 守備的に戦って優勝に届かなかったのは90年以来。マラドーナの一発に沈んだそのときも猛反発をくらいました。その中心にいたのがドゥンガ。以来、国民やメディアと対立しているというドゥンガ。優勝のはるか手前で敗れたドゥンガ。ブラジルに帰れるのかな?批判の嵐は90年どころじゃないでしょう。
 ちなみに、ブラジルが欧州開催以外で敗れる(PK負けや得失点差でのリーグ戦敗退を除く)を喫すのは1950年以来60年ぶり。あの「マラカナンの悲劇」以来の敗戦でした。
 さて、オランダ。とうとうきましたね。こちらはブラジル以上に攻撃のアイデンティティを守ってきた国。クライフはじめ国民やメディアも反発したその守備重視の戦術。オランダにはオランダらしく戦ってほしい、と思うのはクライフだけではないでしょう。その割には守備が安定しているとは言い難いのですが・・・
 試合巧者ぶり、代表では淡白だった選手たちが勝利への執着をみせた点で従来のオランダとは異なります。なにより、得点シーンでほぼ全員が祝福に訪れた場面など、これまでのオランダにはなかなか見られないことでした。白人と黒人の対立や内紛、不協和音などが付きまとったチームでしたからね。日本同様勝つことでチームが結束していくのでしょうか。
 しかし、ロッベンもスナイデルも頑なに自分のスタイルを守りました。2点も取れたのは幸運でした。1点で抑えたのは勝負強さをうかがわせます。交代カードを2枚残しながら時間稼ぎの選手交代ができないほどベンチは興奮していたようで、ベンチワークの拙さが露呈しなかったのも幸い。
 これで32年ぶりの決勝は間違いなしでしょう。ドイツかアルゼンチンならリベンジになります。スペインなら夢の対決。8カ国めの優勝国を争うことになります。
 が、この不安定な守備ではドイツ、スペインには勝てないでしょう。攻撃のバリエーションがブラジルとは違います。アルゼンチンなら勝てるでしょう。
 日程的にも先に準決勝を戦うので有利。もっとも準決勝まで5戦続けて低地で、決勝で高地に上がるのはどう影響するのかわかりませんが。ここまできたら予想を覆して優勝してほしい!!

ウルグアイ1-1(PK4-2)ガーナ
 予想通りウルグアイの勝ち。退場者を出す代償を払いました。倍近いシュートを放たれての守り勝ち。エシアン不在、頼みのムンタリも監督と対立して出場できず。そのムンタリが先制点を挙げながら、フォルランのフリーキックにやられました。
 経験や伝統といってしまえばそれまでですが、ガーナが運に恵まれてきたのも確か。ギャンのPKで勝っていたらなんとなく味気なかったと思います。
 しかし、あのスアレスのプレーは退場どころで済ませていいとは思いません。残り2試合の出場停止はもちろん、なんらかの制裁を科すべきでしょう。次回の予選は勝ち点マイナス3からスタートとか。さもなくば、あのような場面でのハンドは暫定ゴールとみなす、とかね。いちいちPKをやらなくてもゴールにしてしまうべき。
 けれども、勝つためには手段を選ばないのもサッカーでありW杯。フェアプレーや正々堂々といった姿勢よりも勝利が優先されるスポーツであることも事実です。
 アフリカの威信を背負ったガーナはよくやったと思います。アフリカ初のベスト4目前でしたからね。そこは若いとはいえ、老獪なスアレスにやられました。ただ、アフリカでもっとも強かったのはコートジボアールでした。
 これでウルグアイは5度目のベスト4。決勝進出となると1930年の自国開催以来80年ぶりとなります(1950年は決勝リーグなので決勝戦はなかった)。スアレスがいないため、ますます守備的に戦うことが予想される準決勝。オランダ相手では苦しいでしょう。一瞬の隙をついてひたすら守るか!?
 それにしてもPK戦の最後がパネンカ・・・前回大会のジダンといい土壇場でのこの余裕。サッカーの楽しさをちょっと思い出させてくれました。


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 こうなると南米好調の大会で、決勝が欧州決戦になる可能性があります。スペインがパラグアイに不覚を取ることはないでしょう。アルゼンチンもドイツ相手では苦しいと思います。
 オランダの決勝進出はほぼ確実。アルゼンチンが負けた時点で欧州対決も決定でしょう。ドイツ、スペインの両方を突破するのは厳しいと言わざるをえません。メッシがバルセロナでのレベル並みに覚醒しない限り両国を崩すのは至難。
 スペインに初戴冠の可能性と、ドイツにも大いにチャンスあり。歴史通りアルゼンチンになるのか、歴史が変わるのか。
 
 どっかのサッカーライターが言っていた。サッカー好きは旅好きであると。いや、どこぞの紀行ライターが言っていたのかもしれない。旅好きはサッカー好きであると。
 たしか南米を旅していて聞いた言葉だ。南米といえばサッカー、そして旅行者があこがれる大陸。
 旅をしているとサッカー-フットボールと呼ぼう-に触れる機会が多い。それはヨーロッパや南米に限らず、アジアの片隅でもアフリカでも、南太平洋の島々でさえそうだ。
 北アフリカのカフェでは夜になると男どもが小さなテレビに映る試合に熱中している。ヨーロッパに行くと、バーには液晶テレビ。やっているのはもちろんフットボール。ちょっと洒落たレストランでさえ、いくつかのテレビが置いてある。全てフットボールの試合を流している。
 ポルトガルのレストランでは、あっちのテレビで国内リーグ、こっちでチャンピオンズリーグ、そっちでヨーロッパリーグの試合を同時に流していた。目移りしてしょうがない。ビールもワインも進む進む。
 
 旅をしていると様々な国の人々と出会う。ヨーロッパ人はもちろん、オーストラリア、カナダ、イスラエルの面々。一頃に比べるとアルゼンチンやブラジル、東欧からの旅行者も珍しくなくなった。反面、日本人を見かける機会はぐっと減った。
 話題はフットボールに発展することが多い。特に男どもとの会話はしばしばフットボールにいきつく。
 こんな時、自分が日本人であることを意識せざるをえない。例えばフランスやイタリア、イングランドなどはごく自然にフットボールと結び付くが、日本となるとそうはいかない。
選手について語るのに、彼らは自国の選手を挙げることができるが、私はそうはいかない。
誰も日本人選手など知らないからだ。
 イタリア人なら中田、フランス人なら松井、オランダ人なら小野を知っているかもしれない。だが、それだけだ。国境を越えて名が知れている日本人選手など誰一人として存在しない。
 でも私、がんばる。
 ポルトガルのバーで会ったドイツ人。そいつはシュツットガルトのコアなサポーターだった。
「いや、今年の俺らはチャンピオンズリーグに出てるんだぜ。でも先週セビリアで負けちまった。しかもホームでさ。
「へえ。ときにドイツで日本人がいるんだ。知ってるかな。ハセベって?」
「うーん、知らないなあ。どこにいるんだ?」
「ウォルスブルグ。去年の優勝チーム。」
「ああ、車のチームね。」
 マレーシアのインド料理やで隣あったフランス人。小さなテレビに映るチャンピオンズリーグの試合を見ていた。あまりに興奮した様子だった。試合はリヨンとどこかだった。
「フランス人なの?」
「ああ、おれはリヨン出身だからな。君はどっから来た?」
「日本。」
「そうか。2002年のフランスは悔しい思いをしたもんだ。でもあの時の日本はけっこうがんばったんじゃないか?」
「まあね。ヨーロッパでプレーする日本人も増えたしね。そういやフランスにも一人、日本人がいるよ。」
「おお知ってるよ、たしかマツ、マツ、マツイだ!」
 これは、だが稀な例。
 シンガポールで一緒に飲んだイタリア人は生粋のインテルファン。
「サンシーロってなあそりゃあ素晴らしいスタジアムなんだぜ。でもよお、この前負けちまって・・・ローマの野郎どもに追いつかれそうなんだ。」
「チャンピオンズリーグは好調じゃないか。」
「まあな。今年はひょっとするとって期待してるんだ。」
 この時、準々決勝目前。インテルはCSKAモスクワと対戦することになっていた。私、ちょっとがんばる。
「インテル、次はモスクワだな。実は日本人でいいのがいるんだ。サンシーロで観ることがあったら注目してくれよ。」
「なんていう名前だ?」
「ホンダ。」
「車か?」
「あ、いや・・・」
 ドイツ人もイタリア人も車かよ・・・
 デンマーク人やオランダ人は、その人口からすると驚くほどよく見かける。冬の時期に東南アジアに行けば放っておいても遭遇する。
 まだ組み合わせが決まる前だが、彼らともフットボールを語り合った。タイで会ったオランダのおっさんとはファンバステンとクライフについて熱い議論を交わしたもんだ。
 その度にわが母国をさりげなくアピールしておく。サポーターの端くれとしてわずかでも貢献したいのである。世界のホンダとか、世界を驚愕させたナカムラとか、そういうのがいかに井の中の蛙的な表現であるか、痛いほど知る。
 でも、がんばる。日本をアピールしておくのだ、来る日のために。
 
 W杯はベスト8が出揃った。準々決勝を前にしばしの休息。一息つくとふと思い出す。
 シュツットガルトはセビリアに敗れ、そのセビリアはモスクワの前に沈んだ。撃沈させたのはホンダの一振りだ。
 そのホンダはサンシーロで何もできなかった。ドイツとイタリアのあいつ等は、そういえばハセベとかホンダとか話していた日本人がいたな、なんて私のことを思い出すだろうか。デンマーク人やオランダ人のあいつ等も、日本と同じ組か、そういや弱いのに日本のことを熱心に語ってた奴がいたな、なんて思い出してくれただろうか。
 2002年のこと。W杯初戦でドイツは8-0の大勝を飾った。その昔メールアドレスを交換したドイツ人から興奮気味のメールがきた。たしかベトナムがどこかで会った旅行者だった。
 
 W杯は時として国と国との代理戦争の様相を見せることがある。ただでさえ仲がよくないイングランド人とドイツ人は今回の誤審騒動でまた複雑な感情を抱くだろう。W杯の借りはウィンブルドン決勝で返せ、なんて声も聞かれた。スペイン人のナダルがスイス人のフフェデラーにテニスでリベンジだ、と。
 一方で、フットボールは世界を繋いでいる。W杯が来る度に地球のあちこちで出会った人々を思い出す。なんとなく。これもW杯の楽しみである。