「文明とは病気である。しかもかなり伝染性の強い病気である。」


「文明は、人類が生物学的に畸形的な進化の方向にはまりこみ、本来の自然的現実を見失ったことにはじまる。人類は、見失った自然的現実の代用品として人工的な疑似現実を築き上げた。この疑似現実が文明である。しかしながら、それはあくまで疑似的なものであるから、どうしても人類と文明との間にはしっくりしない咀嚼があり、…この居心地の悪さを解消しようとして、人類はまた新たな疑似現実を築き上げる。ここに悪循環が起こる。・・・この悪循環は、一般に文明の進歩と呼ばれている。」


年末から再読中の、岸田秀著「続 ものぐさ精神分析」冒頭からの一文です。


人間は進化の頂点なんかではなく、自然という現実から脱落し、幻想の世界でしか生きられなくなった落ちこぼれの生き物に過ぎない、というのが彼の根本的な考え方。


自分たちが最も優れた生物だ!っていう、人類の思い上がりを覆すところから始まるわけです。


「唯幻論」ともいわれるこの理論は、独特だけど意外とどのテーマにもうま~く整合性が取れているところがおもしろい。


人はなぜ死を恐れるのか、流行とは何か、感情とは何か、性とは何か―

重く複雑なテーマを、独自の論理展開で緻密に解明していく書き口には、思わずニヤリとさせられます。


改めて読むと、性に関する部分なんかはかなり赤裸々にがっつり書かれてるけど、高校生で読んだときはいまいち理解できてなかったわー(笑)


テンポがいいから読んでるとのめりこんじゃうけど、よく考えたら、こんなこと冷静に考えて文章にできる人って、やっぱりある意味キチガイなんだろうな( ̄▽ ̄)


同意するしないはともかく、考え方の一つとして知っておくのは面白いかも。


「人生とは何かを考えるのは、人生最大の暇つぶしだ」なんてCMもありましたが、
根本からひねくれた精神分析論にニヤリとしたい方、暇つぶしにおススメですよ♪