『プロフェッショナル~仕事の流儀』の最後に、

出演者に投げられる質問がこれ。


この一言に、その人の仕事への想いやエスプリが凝縮されている気がして、

大好きなシーンです。


私だったらなんて答えるだろう・・・と無駄な心配をしてみたのですが、


今ならきっと、 「ぶれないこと」 と答えます。


人間だから、体調が悪い時もあり、寝不足の時もあり、機嫌が悪い時もあり、

職場の人間関係が嫌でふてくされている時もあり、

家族や友人のことが心配で落ち着かない時もあり。


でも、それを仕事に反映させてしまうのは「プロ」じゃない。


気分のいい時は最高のものができるけど、機嫌が悪くなると一気に仕事の質が下がる、

なんてのは言語道断。


料理人であれば、たとえそれが見習い中の身であろうと料理長という立場であろうと関係ありません。


その店において、自分の役割がたった付け合わせの野菜一つだけだったとしても、

店のやり方や人間関係に不満があったとしても、


「自分が手がけたものをお客様に食べていただいてお金をもらっている」という意識を持ち続け、

与えられた中で最良の仕事をお客様に提供しようと努められるかどうかが大切なのです。


その日の気分で自分が任された料理ひとつ満足に仕上げられなくなってしまうようでは、

「プロフェッショナル」には程遠いというしかありません。



これって基本じゃないの?と思われるかもしれませんが、

実のところ、若手の料理人にとってはかなりの精神力を要する作業です。


なぜなら、表に立ってお客様と接する料理長ならまだしも、

厨房の中だけで一日中働き続けるスタッフにとって、お客様はとても遠い存在。


日々の仕事に追われるうち、自分の作ったものがお客様の口に入るという感覚は薄れ、

時にはそれが食べ物であるという感覚すら薄れ、

ただただシェフのために作業をこなしているかのような錯覚に陥ってしまうからです。


実際私もそういう時期がありましたから、実感としてよくわかります。


そういった状況でも、常に食材へのリスペクトやお客様への愛情を持ち続けられるかどうか。

自分の精神状態をコントロールし、ぶれない仕事を続けられるかどうか。


年齢や経験に関係なく、その強い精神力が培われてこそ、

初めて「プロフェッショナル」な料理人なのだと、私は思います。



これはサービスマンでも、きっとほかの職業でも同じこと。


機嫌が悪いから、具合が悪いから、寝不足だからといって、お客様の前で暗い顔をしているようではお話になりません。

お客様には、こちらの事情も体調も関係ないのですからね。



「サービスが始まったら、ここは舞台だ。舞台では常に最高の演技をしてお客様を喜ばせなくてはいけない。」




私が尊敬する「シェ・ピエール」のオーナーシェフ、ピエールさんから教えられた一言は、

今でも私の座右の銘です。



いつでも笑顔で突き進む彼らに比べたら、私もまだまだ修行中。

どんな時でもぶれない強さを、 しっかりと身につけていきたいです。