実は、この講座を知ったのもタケダワイナリーからのニュースレターだったんですよね。
岸平さんには、4月にグラースでメーカーズディナーをしていただいたという御縁もあり、
ぜひぜひゆっくりとお話を伺ってみたかったのです。
(メーカーズディナーの最中は、お話を聞くどころではなく走り回っていましたので)
講座の最初は、講師の遠藤先生から日本ワインの概略や歴史などをお話しいただき、
(これがまた興味深かった!遅刻しちゃったけど☆)
そのあとたっぷり50分ほど岸平さんによる講義がありました。
でも、講義といった形のものは、通常絶対しないんだそうです。
お父様の教えで、それは作り手のしごとじゃない、と。
人前でしゃべって、先生なんて呼ばれてしまうと人間ダメになる。現場を離れて「ベロ屋」になるな、と。
うーん、さすがです。
なので、講義などには慣れていない・・・ということでしたが、
始まってしまえば持ち前の岸平節が炸裂!
あっという間の50分で、全然時間がたりませんでした。
あと2時間は欲しかったぐらいです。
心に残る話がたくさんありましたが、
備忘録としていくつか書かせていただきますね。
まず、岸平さんがワイン造りで最も重視しているのは「テロワールを生かす」ということ。
これってなんだか使い古された表現のようですが、実はとても深い。
タケダワイナリーでは、農薬をできるだけ使わず、化学肥料も使わず、手作業で草を刈り、
自然農法を実践して土を守りながらブドウを育てているそうです。
でもそれは「ヴィオディナミストだから」とか「自然派崇拝だから」とかいうことではなく、
そうすることがワインの個性を一番引き出す方法だと思うからだ、といいます。
テロワールというのは、土地であり気候であり、そしてそこに働きかける人でもある。
人が手をかけてやることで、土地の特徴が引き出され、その土地らしいワインができる。
だから、ワインは作られる土地により作る人により、全く違う個性のものができる。
それが当たり前なんだ、と。
グローバルスタンダードに流されず、各地の個性や違いを守り、表現していくことこそが大切。
だから、いろんな土地のワインを一堂に集めて一定の物差しで評価するコンクールのようなものには、少々危険を感じると言っていました。
だから、そういった類のコンクールには出品したことがないそうです。
出品したらやっぱり賞が欲しくなるし、そうしたら本来あるべきワインとは別のものを作ってしまいそうだから…と。
ああ、そのあたりのジレンマは、レストランを経営する身として手に取るようにわかります!!
ヴィニフェラ品種から最高品質のワインを作る一方で、在来品種にもしっかりと力を入れているのもそのためだといいますが、同時にそれは、地元の農家さんたちの負担を減らし、農地復興を支えていかなければならないという責任感の表れでもあります。
お話の後の試飲でも、マスカットベリーAやデラウェアなどから作ったワインが並びましたが、
その完成度の高い味わいが、典子さんの強い信念を物語っているようでした。
過去の歴史の中でも海外原料を一切使わず、
あくまでも地元のブドウでワインを作ることにこだわり続けたお父様。
典子さんとお父様は、ワイン作りのにおいてかなり対立したという話も聞きましたが、
今回の話からは、その頑固なまでの熱い職人魂がしっかりと典子さんの中に受け継がれているのを感じました。
典子さんのお話は、いつも本当に心に沁みます。
芯の強さ、謙虚さ、努力を惜しまない姿勢、そして確実に結果を出していく逞しさ…。
同じ女性として心から尊敬し、憧れる存在です。
ソウイウヒトニ ワタシモナリタイ。