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たんぽぽ~空高く、雲の上まで~Vol.5(6月)

「アップ始めるよ~!!」

女子バスケ部キャプテンの愛美先輩の声が体育館に響く。

私はバッシュの紐を結びなおして
コートの中央に走った。


体育館の窓からは
龍くんのいる野球部が遠くに見える。


入学当時から3ヶ月も隣の席にいるのに
いまだに謎が多い龍くん。

クラスのほかの男子とは
それなりに打ち解けたのに
なぜか龍くんとは壁を感じる、、、。


あたしのこと、まだ「及川さん」って呼ぶし
クール?なのかな??

それとも、
あたし、嫌われてるのかな、、、、、?



そんな事を考えながら
ランニングをしていたら


「美妃!!!しっかり声出して!!!」




愛美先輩に怒られてしまった、、、、。反省。



とにかく今は
県大会も迫ってるし、練習に集中しなくては。



あたしは無理やり
頭の中にちらつく龍くんの顔を振り払い

練習に集中する事にした。






たんぽぽ~空高く、雲の上まで~ Vol.4(5月)


僕の事を「きんえ」と呼んだとは思えないくらい

美妃は頭のいい子だった。



いや、性格には
「本気を出せば頭がいい子」の間違いか。



机の中には教科書よりも
漫画のほうが沢山入っているし

机の上にはさっきの時間の数学の教科書が
出しっぱなしだ。


入学早々そんな事をしていたから
僕は一度美妃に


「何で机の中、漫画ばっかりなんだよ。
教科書ロッカーに取りに行くのめんどいだろ?」と

当たり障りのないように聞いたことがあった。





すると美妃は
「え?漫画は立派な教科書だよ?
学校で教えてくれない、恋愛の教科書!」

そう、はにかみながら答えた。


だからてっきり
本当にこの女は頭が悪いと思っていたのだが
授業中漫画を読んでいるにもかかわらず
当てられるとすらっと答えを言うような
なんとも要領のいい子だった。


「いかにも『勉強してます!』って子、苦手なんだ」

美妃の行動はきっとこの思いからなんだろうが
授業中は漫画を読み、放課後は部活にいそしむ美妃が
いったいいつ勉強をしているのか
疑問は膨らむばかりだった。

「愛情表現」






「君が好きだ」 って言えなくて





いつも君に
ちょっかいばかり出してた。












それが




精一杯の 愛情表現。

「違うんだね」


君が 手を繋いでくれた。


君が 頭をなでてくれた。













2人の気持ちは


同じだと  思っていたのに、、、。

たんぽぽ~空高く、雲の上まで~ Vol.3(4月)

「あたし絶対バスケ部はいるんだ~!」




やかましい女だな。


これが僕の、美妃に対する第一印象。



出席順に座らされた座席の隣で
美妃は同じ中学から来たと思われる女子と
きゃっきゃとはしゃいでいる。

正直、やかましい女は苦手だ。




次の席替えはいつかな



そんな思いを抱えながら
入学式というめんどくさい式典に出る為に
廊下に並ぶよう叫ぶ担任の声に従い
席を立った瞬間だった。


「えっと、、、きんえ?くん???」

「、、、は?」


「名前。近畿の´近´に江戸の´江´。」

「、、、おうみ。近江牛の近江。」



やかましい上にバカなのか。

僕はうんざりした。

「ふ~ん。おうみ君か。」

美妃はちょっと考え込んでいた。






「なんかめんどくさいから、名前で呼んでいい??
あたしのことも、名前でいいから♪
あたし、及川美妃!美しい妃でみき。
名前負けって言わないでね(笑)
隣の席だし、仲良くしてね、龍くん♪」



そう言うと、さっきの友達と共に
廊下にぱっと出て行ってしまった。




「、、、名前でなんて呼べるわけねーだろ、、。」




そうつぶやいた僕の口元が
ちょっとだけ緩んだのは
たぶん、誰も知らない事実。


このときはまさか、

僕が美妃を好きになるなんて
思ってもみなかった。




このときはまさか、


僕と美妃の運命があんなふうになるなんて







思ってもみなかった、、、、、。