「名刺代わりみたいなもんや。とっといて。」
と、渡されたのは桂雀々本人の自叙伝だった。
必死のパッチ?耳慣れない言葉である。
小説をめくると、冒頭から言葉の注釈が書いてある。
関西における「一生懸命」の最上級を表す言葉だとか…。
へぇえ。聞いたことがない。
それは、なんですか。その、大阪でも非常に少ない人々が使う言葉ですか?
あるいは、ある一定のエリアだけの言葉とか?
「失礼なこと言うな。少数民族とちゃうで。あんた知らんのかい。阪神タイガーズの
ヒーローインタビューで矢野や関本が、
必死のパッチで頑張りました!って言うとるやろ、あれやねん」
そう聞くと、関西ではメジャーな言葉なんだろうが、それでも
私は師匠以外の関西人からその言葉を聞いたことがない。
ところが今日、五反田駅のコンコースで観てしまった。
コロナ禍の中での応援メッセージが幾つかパネルにして飾られている。
そのうちのひとつ「必死のパッチでがまんできました」と。
なるほど、ものすごく一生懸命我慢したんだなということもわかりました。
どこの誰だかわかりませんが、やっぱり関西ではメジャーな言葉だったのか…。
そう思い、パネルを前に、心の中で「師匠、すみませんでした」と
頭を下げた昼下がり。今日も額に汗する初夏でした。
五反田駅のコンコースにて
「必死のパッチ」 桂雀々

