EUエリートの求心力低下と国際秩序の再編成

南米アマゾンの火災を巡ってはブラジルのボルソナロ大統領を非難する報道が目立つが、実際にはブラジルがEUからの「紐付き支援金」を断ったということで、EUエリート層の求心力低下を露呈している。
今まで子分扱いしてきた旧植民地国家に反旗を翻されたというわけだ。

代わってコロンビアとペルーの両国大統領が主導し、9月6日にコロンビア南部のレティシアで当事者国間によるアマゾン保護のための会議が行われ、ブラジルも合意した協定が結ばれた。
ロイターの報道によると、ブラジル国民の間では外国勢力によるアマゾン資源の搾取への警戒感が非常に強く、ボルソナロ大統領の対EU強硬姿勢の背景にもこうした国民の支持があるという。
今回、南米の当事者各国が自治の動きを強める方向性を打ち出したことは、地域の歴史にとって画期的な転換点になるかもしれない。

アマゾンの資源といえば、先のサミットでボルソナロ大統領が日本の安倍首相に共同開発を提案したというニュースも記憶に新しい。外国勢力の関与が警戒されている中、日本は信頼されているというのだから、このチャンスを両国の発展のために活かすべきだろう。EUエリート層やその別働隊の「環境保護団体」に何を言われても気にすることはない。

ボルソナロ大統領は火災への対応として、アメリカとイスラエルからの支援は受け入れている。トランプ大統領はフランスの大統領のような内政干渉をしてこないのだろう。先進国としての綺麗事を建て前に新興国へあれこれ文句をつけるのはオバマ前大統領の時代には行われていたが、トランプ大統領になって変わったようだ。アメリカはフィリピンの対麻薬戦争についても口を出さなくなった。

アメリカ・ファースト時代では南米の親米国家、イギリス、イスラエル、そして日本が実質的なアメリカの同盟諸国として機能しているように見える。
世界はアメリカ、EU、ロシア、中国をそれぞれの基軸にしたブロック経済の時代を迎えているのかもしれない。


牛肉を巡る二つの陰謀論の終焉

日本がIWCを脱退して商業捕鯨を再開しても、トランプ大統領は激怒したりしなかった。捕鯨が批判されてきた背景には「アメリカやオーストラリアが日本に牛肉を売りたいからだ」という陰謀論があったが、日本の捕鯨再開は意外にあっさり行われたし、逆に日本人の牛肉離れも起きていない。

牛肉を巡るもう一つの陰謀論は、「日本が過去に起きた口蹄疫を理由に南米産牛肉の輸入を許可しないのは、自国産牛肉のシェア低下をおそれるアメリカからの圧力によるものだ」というものだ。ところが、2018年にはアルゼンチン産牛肉の一部が輸入解禁され、今年はウルグアイ産が後に続いた。
6月のサミットで来日したボルソナロ大統領も「ブラジル産牛肉でシュラスコが食べたい」と堂々とツイートし、8月にサンパウロで行われた日本ブラジル農相会談でブラジル産牛肉の輸入解禁が話し合われ、早ければ年内にも日本の消費者がブラジリアン・ビーフを味わえることになるようだ。

真実はわからないが、トランプ政権で世界の流れが大きくかわっていることは、悪いことばかりじゃないということは確かだろう。