月曜は寒い日で、雨だかみぞれだかが降っていた。
午後、外出先からの帰りがけに銀行に入ると、
傘たては傘でいっぱいで、
自分の傘をねじ込むように差し込んだ。
そして、ATMの方を見ると、
月末のせいか長めの列ができていた。
列の後ろへと歩いてゆくと、
通帳を握りしめて、並ぶんだか並ばないんだか
あいまいな態度をしたおばさんがいた。
ちょっと薄汚れたような黒っぽい顔で
頬が赤くて、
中国の田舎の人みたいな顔つきの人だった。
「ならびますか?」と訊いたら、
無言のまま「違います」みたいな感じで
窓口の方へ離れていった。
そのまま列にならんでいると、
さっきのおばさんが、ATMも窓口も諦めたのか、
出口の傘たてのところに歩いていくのが見えた。
だが、傘たてのあたりの行動がなんとなくおかしい。
あれやこれや傘を抜き差ししていて、
「自分の傘を探している」というより、
「傘を物色している」という様子。
大きな黒い傘をひとつ抜き出すと、
出口を出て、外でいったん開いたのだが、
開いたときに気になることがあったのか、
中に戻って、別の傘をふたたび手短に物色。
でも、より良いものはなかったようで、
最初の傘をもって、出口から出て行った。
声をあげたものかどうか、
声をあげるなら、誰になんと言えばいいのか、
逡巡しているうちに
声をあげる機会はたちまち過ぎ去っていった。
……
ATMでの自分の手続きを終えて帰りがけ、
会社の管理職といった様子の太った紳士が、
銀行員に、自分の傘がないことを訴えているのを
見かけた。
傘たてに残された中から、
自分の傘と似た傘を引き出してみたりしていたが、
それは、さっき盗まれたものにちょっと似た
黒い大きな傘だ。
しかし、「さっき盗まれたのを見てました」
なんて申し出ても、まったく無意味なので、
私はそのまま黙って帰ったのだった。
午後、外出先からの帰りがけに銀行に入ると、
傘たては傘でいっぱいで、
自分の傘をねじ込むように差し込んだ。
そして、ATMの方を見ると、
月末のせいか長めの列ができていた。
列の後ろへと歩いてゆくと、
通帳を握りしめて、並ぶんだか並ばないんだか
あいまいな態度をしたおばさんがいた。
ちょっと薄汚れたような黒っぽい顔で
頬が赤くて、
中国の田舎の人みたいな顔つきの人だった。
「ならびますか?」と訊いたら、
無言のまま「違います」みたいな感じで
窓口の方へ離れていった。
そのまま列にならんでいると、
さっきのおばさんが、ATMも窓口も諦めたのか、
出口の傘たてのところに歩いていくのが見えた。
だが、傘たてのあたりの行動がなんとなくおかしい。
あれやこれや傘を抜き差ししていて、
「自分の傘を探している」というより、
「傘を物色している」という様子。
大きな黒い傘をひとつ抜き出すと、
出口を出て、外でいったん開いたのだが、
開いたときに気になることがあったのか、
中に戻って、別の傘をふたたび手短に物色。
でも、より良いものはなかったようで、
最初の傘をもって、出口から出て行った。
声をあげたものかどうか、
声をあげるなら、誰になんと言えばいいのか、
逡巡しているうちに
声をあげる機会はたちまち過ぎ去っていった。
……
ATMでの自分の手続きを終えて帰りがけ、
会社の管理職といった様子の太った紳士が、
銀行員に、自分の傘がないことを訴えているのを
見かけた。
傘たてに残された中から、
自分の傘と似た傘を引き出してみたりしていたが、
それは、さっき盗まれたものにちょっと似た
黒い大きな傘だ。
しかし、「さっき盗まれたのを見てました」
なんて申し出ても、まったく無意味なので、
私はそのまま黙って帰ったのだった。