稲実キャプテン福井は言う。
「稲実は僕の憧れのチームなんだ」
「憧れのチーム」って…。
それは、本当は、自分がそのチームに所属していない場合に、言えるセリフだよ。
ああ〜福井。君は部外者か。
野球の実力がチーム最下層の福井にとって、
稲実レギュラー陣は、自分とは違う世界の人たち。
福井は、稲実でどんなに努力しても越えられない壁があることに入部後に気づいて、スター選手たちのファンに徹することにしたのかもしれない。悲しい。
そんな福井がキャプテンに選ばれた。
今やチームをまとめる立場だ。
なのにチームの中に「壁」や「区別」があることを、レギュラー選手に意識させる言葉を口に出していいのか。
「ファン」という、立場の違いをはっきりさせる言葉。
「僕はあなた達とは違いますから〜」と、
言ってるってことだ。
稲実レギュラー選手の中でもバカな奴らは、
そう言われて自分はスターって、いい気分になった。
でも、それ以外の選手は?
キャプテンが「ファン」を自称する。
それはチームの分断を深めるだけ。
レギュラー選手を「自分の仲間」とは考えないファンにとって、
チームの勝敗は、ハッキリ言って、人ごと。
だから、
今みたいに、あっという間に逆転されても、焦らない。
たぶん負けてもそんなには悔しくない。
ファンとして、それなりに泣くだろうけど。
逆転されたというのに、福井がこんなに明るく元気でいられるのは、この試合が自分ごとではなく、人ごとだから。
チームに一体感のない、稲実。それは青道と比べると、まったく明らか。
それが稲実の大きな弱点の1つだというのに。キャプテンが率先して悪化させてるよ。
それに
肩書はキャプテンでも「ファン」を自認している人に、試合中に言葉をかけてもらって、レギュラー陣はどれくらい勇気付けられるんだろうか?
福井には、決まりきった、ごく当たり前の言葉がけしか出来ない。
さっきも(前回ブログ)、伝令福井の言葉に対して
成宮は、そんなこと「知ってるし」とそっぽ向いたまま言い返したよね。
福井は「間を取っただけ」と応じて「僕はみんなのファンだから」と持ち上げるしかなかった・・・。
悲しいことに、「ファン」という言葉は、福井の応援の切り札だ。
持ち上げられた成宮とその取り巻き選手らは、スターとしての自信と自覚を取り戻した。(バカ)
これまで、稲実のスター選手たちが、自チームを応援している姿は、全く描かれていない。
成宮も応援などしない。
点が入って喜ぶことはあるけどね。
そんな今の稲実チームには、ピンチになっても動揺せず(ただのファンなんだからね)、いつも明るく応援をしてくれ、ジャンケンで勝って勝運をもたらしてくれる福井キャプテンは、とてもありがたい存在なのだろう。
実際、伝令福井の声掛けで、稲実ナインは息を吹き返した。
ただし、福井のキャップテン起用は、チームにとっても、福井自身にとっても、重大な副作用が潜む「麻薬」のようなものだと思うよ。
以前、青道の片岡監督が、
選手を辞めてマネージャーになるという自分達の考えを相談してきた3年生達に、
選手を続けるよう説得したのは、
こういう可能性があるからなのか、と思った。
今まで選手だった人が、選手ではなくなって、
それでもチームと密に関わり続ける…
それって難しいのかな。





では、違う方向から。^_^
現実の高校野球の報道を見て、気づいたことがある。
データ班
の活躍だ。
もしかすると福井は、データ方面で貢献することもできたかもしれない。
偵察として相手チームのデータを取るだけではなく、自チームや個人のデータも取って強化に生かすようにすると、データ班の仕事量は無限に増えていく。
稲実の100人を超すような大世帯であることがアドバンテージになるかもしれない。
文化系部活のIT部や科学部とのコラボもいいかもしれない。美術部と一緒に画像化とか。
若くて柔らかい頭から新しい何かが生まれるかもしれない。
今はデータの時代。これからさらにそうなっていく。興味があって意欲的に取り組めるなら、データ班はやりがいのある役割だろう。グラウンド整備に懸けるよりずっと将来に繋がる可能性がある。外注ではなく同じチームの選手同士だからこその、気付きもあるはず。
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ところで、「ファン」という言葉、前にも出てきて、ずっと引っかかっていました。
準決勝で、市大三高が青道に敗れた時。
落胆する三高ピッチャー天久に、三高OBの真中が、自分は、天久の「ファン」として応援すると言った。
なぜ真中は「ファン」と言ったのだろうと、私はずっと気になっていた。
福井と比べてみて、分かった気がする。
真中には、違う意図がある。
真中は高校卒業後、大学に進学した。
一方、天久はプロ注目の選手。
真中が天久に強く伝えたかったのは、
天久がそういう格別な選手なのだ、ということ。
「ファン」という言葉を使って
「お前は俺とは違う。プロに行ける能力がある」と、はっきり区別した。
そうやって、天久の背中を、プロ入りに向けて押したのだと思う。
いい先輩。
31巻、これで読み終わりました。
点差はまだ1点。
成宮は勝利に並ならぬ執着を見せるだろうけど、ここらで叩いておくのがいいと思う。

